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前国王陛下の名前はオット、父上の親友だった

「王妃様、本当に海水から真水が作れるのですね」


「畑に撒くほどの水は無理ですが、飲み水程度の量は作れます」


「そうは言っても今から建設しても間に合うかはわかりません」


「建設するとはどういう事ですか?」


「その魔道装置を入れる建物の大きさはこの城並みの大きさになりますから」


「王妃様、私はこれより領に戻りその建造物を建てますので、真水を作る魔道装置は我が領を一番に設置してくださるようお願いいたします」


「抜け駆けはしないと約束したではないか、伯爵殿ズルイぞ!」


「そんな話は聞いていないが」そううそぶく伯爵だった。


 後は自分のところは、あいつより先にしてほしいとみんな言いたい放題で収拾がつかなくなったので、ウイル国王陛下がおって沙汰を出すことで、謁見は終了した。


「エルヴィンの娘、お前は父親には似ておらんな。あいつは正直者だったがお前は策士だ」


 前国王陛下、私は正直です。嘘は言っていません。多くの貴族が渇水で死ぬ。ただ王宮に入れる身分の貴族とは言ってはいないから。


「そうですね、母親に似たようです」

「確かに顔がエンドラによく似ている」


 母上に似ていると言われたのは初めてだ。とてもショックだったりする。私は父上似だとずっと思っていたから。


「エルヴィンの娘、海水を真水に変える魔導具の仕組みを教えてほしいのだが」


「前国王陛下、塩を体内に取り込んで海水中の塩を取り除くスライムを見つけました。しかしそのスライムは日光に弱いため暗い室内でしか生きられません。それで大きな建物が必要になります」


「ワシのことはオットと呼ぶように、エルヴィンも私的に会った時はオットと呼び捨てにする。で、そのスライムが耐えられる上限の温度と下限の温度は何度なのか?」


「オット様、迂闊うかつでした。調べていませんでした」

「ワシが青蛙の生態調査でエルヴィンに負けたのはそこだった、抜けていたところだ」

「生物は活動が活発になる温度がある。スライムが活発に活動する温度に建物内を維持する必要があると思う。建物を建てるだけではなく室温を一定にする必要があるのではないか」


 そこまで考えてなかった。ダイキチさんに働いてもらわないと、でもこれ以上仕事を振ったら間違いなく、ダイキチさんはまた失踪する。困った。知識があってデータを取るのに慣れている人が早急に必要がだ。


「オット様、大聖女国でスライムの研究をお願いします」

「ウイルに相談しなくても良いのか?」


「時間がありませんので、オット様の準備ができましたら、直ちに出発したいと思います」


「別に今からでもワシは良いぞ」


「では失礼いたします。魔法のロープでヴァッサとオット様を固定します。飛行しますので気分が悪ければ目を閉じられると良いと思います」


「わかった」


 私はオット様と大聖女国に向かって飛んでいる。


「エルヴィンの娘、国中の土の色が赤になっている。ひどいところでは砂地になっている。この冬は野菜不足による病が流行るはずだ。その備えもしておくことが必要だ」


「オット様、冬に野菜を育てる方法はありますか?」

「あるにはあるが、大量のガラスとガラス職人が必要になる」


「オット様、申し訳ございませんが冬野菜の栽培もお願いいたします。費用はなんとかします」


「ガラス細工はバイエルンの特産だがバイエルンがどう動くか?」

「バイエルンがその技術を独占する可能性が高い」


「そこは父上と私で何とかします」


「エルヴィンの娘、あまり抱え込むな」


「ご助言ありがとうございます」



 オット様を皆んなに紹介した。ミーアさんをはじめ皆んなどうすれば良いのかとポカーンとしてしまった。まあ一切の連絡なしで前国王陛下を、見ようによっては拉致してきたのだから。


 ダイキチさんと一緒に実験工場を見学してもらった。

「塩分濃度計はここにはないのか?」

「はい、自分の舌で判断していました」

「先月のこの地域の気温と建物内の気温の記録を見せてほしい」


「地域の気温はすぐにお持ちしますが、建物内の気温の記録はございません」


「観察記録はどうか」

「観察記録は詳細につけました」

「その記録をすぐに読ませてほしい、この地域の毎日の気温。できれば一時間ごとの記録がほしいが」


「エマ、この人、本物の科学者じゃないか。なんで国王なんかをさせていたのか、国家的な損失だと俺は思うぞ」人をあまり褒めないダイキチさんが褒めている。


 私は子供の日記に至るまでこの地域の気温の変化がわかる資料を探すようにミーアさんにお願いした。それとまったく時間的に猶予がないので、ウエルテルとヴィクターとニコラに至急大聖女国に来てほしいと手紙を書いた。


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