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エマ、王妃になる

「エマさん、目を覚ましてください」とゆきちゃんの声が聴こえる。良かった夢だったんだ。ここはアカデメイアだ。目を開けるとそこは王宮だった。


「エマさん、おめでとうございます。王妃様に成られたそうで」

「ゆきちゃん、どうして王宮にいるの?」


「学部長が、エマさんが王宮で倒れたのですぐに行くように言われました」


「マズいよ、マズい! 私、エリザベートの婚約者を奪ってしまった。また母上に襲われる」


「エマさん、母上様は現在行方不明ではありませんか」


「私、アカデメイアに戻ります」


「王妃様、勝手に行かれては困ります」


「あなたはどなた様でしょうか?」


「私は侍女長に任ぜられました、プラオダーと申します」


「プラオダー様」

「プラオダーでございます」

「プラオダー、私はアカデメイアに戻ります」

「陛下の許可が必要ですので私が伺ってきます」

「私も一緒に行きます。これは命令です」


「承知しました」


「ウイル国王陛下、私はアカデメイアに戻ります」


「エマ殿は勝手自由にすれば良いですよ、どの道私の言うことは無視でしょうから」


「国王陛下、ちゃんと王妃様教育を」

「プラオダー、このエマ殿は王妃みたいな小さな器じゃ役不足だから」

「うんまあ、国王陛下、何ということを、不肖このプラオダーがこの娘を立派な王妃にしてみせます」


 私は精霊の衣装に着替えてゆきちゃんを連れて窓から飛び出した。


「うんまあ、王妃様が窓から飛び出した」と言いつつプラオダーさんは後ろに倒れていった。


「ゆきちゃん、私、王妃になったよ」


「これまでの中で一番ショボい称号ですね。勇者、大聖女ときて王妃様。 残念賞ですか」


「世の中、想定外のことが起こりますね」

「エマさんの場合、何かすればたいてい大事になりますから。想定外はありません」



 父上が下宿で大家さんとガーデニングの話で盛り上がっていた。


「エマちゃん、お帰りなさい」

「エマ、元気そうでなによりだ」


「大家さん、ただ今戻りました」

「父上、よくバイエルンを出られましたね」


「ハンニバルは大反対だったがね、バイエルンが戦線に巻き込まれると言って」


「私が出て来なくても戦争は終結したみたいで結構なことだ」


「私が王妃になった以外は結構なことです」


「エマちゃん、今なんと言ったの?」

「私はウイル国王陛下の王妃に任命されました」


「エマちゃん、私意味がわからないのだけどウイル王子と結婚したのでしょう」


「結婚はしていません。王妃の位に任命されました」


「エマはまだ十歳、もうすぐ十一歳になるのか」

「エマちゃんのお父様、十歳ではエマちゃんは結婚できません。王妃様には成れませんよね」

「こういうことは認められるのですか? エマちゃんのお父様」


「これまでは無理でしたが、ウイル国王陛下がそれで良いというのであればそれで良いことになるのかな」


「エマちゃんのお父様、そんな呑気なことを」


「問題はエリザベートとその姉だね。エマがエリザベートの婚約者を盗ったと思っているだろうし。形式上離婚ということになるから、ウイル国王陛下はバツイチになるしね」


「体面を重んじる方ですからバツイチの方の妻にエリザベートがなるのは許せないでしょうね」


「父上、どうしましょう」

「エマ、兄や姉のようにならないように注意しなさい」


「エマちゃん、どういうことなの既にウイル国王陛下と離婚するのが前提でお父様と話してるみたいだけど」


「はい、私の好きな男性のタイプではウイル国王陛下はないので、将来私は王妃をやめます」


「エマちゃんはこれからどうするの?」

「ウイル国王陛下から勝手自由にして良いと言われたので今まで通りです」


「父上はどうされるのですか?」

「サーウエストで農政のベテランが必要らしいのでそこに赴任するつもりだよ」


「父上、大好きです」と私は父上に抱きついた。


「エマちゃんってお父様っ子なのね」と大家さんが微笑んでいた。


 父上はバイエルンのくびきから解き放された。サーウエストに入ると山のあちこち、荒地を巡って、小麦の野生種を見つけた。野生種はあまり実をつけないけれども、どんな荒地でも、雨が降らなくても、降り過ぎても必ず育つ優れものだった。


 フィンヤさんも本物の領主が助けにきてくれたので大歓迎をしている。父上も植物採集の合間に相談にも乗っているよう。父上がイキイキしているのが嬉しい。


 前国王陛下が山城から降りて来て王宮に戻られたので、挨拶に来るようにと、ウイル国王陛下から手紙がきた。

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