エミル君からの呼び出し
イアソーさんが私のところに飛んできた。エミル君の執筆がひと段落ついたので、私の舞のお稽古を再開するから呼びにきたと。私は何かと忙しいのだけど、イアソーさんが言うには、断ると、将来良くないことが起こるらしい。それって脅迫だと思うのだけれど、訴えるところがないのが悔しい。
イアソーさんの後について旧魔王城に向かった。相変わらず魔王城の雰囲気のまま。
「イアソーさん、相変わらず魔王城のままなんですけど、神殿に改装するとかの予定はないのですか?」
「今のところ、不都合はないし魔族の子たちは寛いでいるしね」
「あちこち談話室になってるし、喫茶コーナーもできてますね」
「武具とか展示されているのは何のコーナー何ですか?」
「魔王城に攻め込んで討死した歴代勇者の部具を展示しているけど、人気がないね」
「聖剣とかも展示してあるのだけど、誰も見てくれない」
「エマの魔王の魂を分けた鎌とかだと興味を持つかなあ」
「あの鎌、見た目が普通なので誰も見ないと思います」
「あそこも展示物を撤去して喫茶コーナーにでもする方が良いかもしれないね」
「エミル様がここは芸術性に欠けると言うので、色々展示しているのだけれども、魔族の人には観てもらえないし、エミル様からは芸術性が不足と言われて、困っているのだが、エマ、良い考えはないか?」
「エミル君の肖像画でも飾ったらどうでしょうか?」
「誰がエミル様の肖像画を描いてくれるのかな?何百年かかっても採用されないと思う」
「そうだね、寿命を考えると注文を出すとしたらエルフの肖像画家しかいないでしょう」
「エミル君、お久しぶりです」
「エマも元気そうで何よりだ。エマの周りに水の精霊が舞っているけど、水の精霊の舞は覚えたかな」
「ごめんなさい。私は自分のパートしか覚えていません」
水の精霊さんたちの舞は三種類の舞で構成されているから、一の舞から覚えた方が良いのかなあ? どうだろう」
「水の精霊さん、その順番でどうかなそれとも先に三の舞の方が覚えやすいかな」
「エミル様が最初におっしゃられたように一の舞、二の舞、三の舞と覚えた方が繋がりが理解できると思います。今のエマ様なら一の舞は舞えると思います」
一の舞を舞うたびに、私は肩で息をしている。早い。
「はい、休憩です」
「エマ、お茶の時間だよ」
「エマ様、お茶が入りました。少し癖がございますのでお砂糖が必要かもしれません。疲れた時にはこのお茶がお勧めです」
「エミル様はこちらのお茶をどうぞ、イアソーは適当に飲んでおくと良い」
イアソーさんは色々茶葉を吟味してブレンドしている。とても楽しそうだ。
「エマはテンポが早くなるとどうして中心が少しブレるのかな」
「エマ、最近走り込みをしていないのでは?」
「そうですね。最近は走る暇がないのでやってないです」
「これからは一時間早く起きて走り込みをしてね。僕からの命令です。サボると神罰が落ちるから注意してね」
なんで早朝から走り込みやねんと西の国の言葉でツッコミを入れた。ただでさえ忙しいのに、時間をどう作ったら、睡眠時間を削る、食事時間を削る、お風呂はお湯を浴びるだけで、バスタブにはつからない。衣装替えもやめて毎日同じ服で過ごすのはどうだろうか?
「エマから邪悪な気配が出ているけどどうしたの?」
「そうですか? 最近ストレスが溜まってまして、もう何もかも投げ出したいです」
「そうだろうね。エマには死に戻りしかスキルがないから、良かったらまた五歳のエマに死に戻ってみる?」
「また、暴走して競技場で爆死しそうなので遠慮します」
「はい、お茶の時間は終了です。お稽古再開。エマちゃんと立って。用意して」
「エミル君は芸術に対しては容赦がない。イアソーさんがこっそり私に癒しを与えてくれた。イアソーさん素敵です。
ディアブロさん、なんでここにまだいるの? で、どうしてイアソーさんを睨んでいるの?
「エマ、現在三十点です。頑張って百二十点まで上げてください。今日はここまでです」
「お茶ください」ディアブロさんがお茶を淹れてくれた。ディアブロさん最高に素敵です。ディアブロさんが微笑んだかな。
「エマ様、ご結婚の話が進展中です。おめでとうございます」
私はむせた。
「ディアブロさん、私は第三王子様との結婚はお断りしてます」
「第三王子は教会にこもって出てきません」
「ディアブロさん、私と結婚する王子はいませんけど」
「まだ、国王がいます」
私は絶句してしまった。公文書改竄で私は今十五歳らしいが、実際は十歳。そんな娘を妻にする国王って変態なのか?
「国王から求婚されたら、私は大聖女国の全軍を率いて王都に乗り込みます!」
「エマが国王の妻になることに僕は賛成だよ」
「エマが王妃になれば、バイエルンもホーエル・バッハも王家に従うので餓死者はかなり減るし、もっとも平和的な解決方法だから」
「エミル君、つまり、私が犠牲になればすべて丸く収まるということですか?」
「そういうこと」




