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フィンヤさん目を回すその2

「お前サーウエストの領主なんだから、いつまでも洞窟のまとめ役気分で動くなよ」


「フィンヤの悪い癖だ。体に悪いから。誰かに任せられるところは任せろよ」


「コルトさんが領主になってよ、元々洞窟のリーダーはコルトさんだったんだから」


「俺は味方も多いが敵も同じくらい多いから無理、まとめられない」


「大聖女国から役人がきてるのだから、そいつらに交渉をやってもらえよ」


「大聖女国の人たちって私が指示をしないと誰も動いてくれないから」


「サーウエストの役人さんたちは、動かないし、動くと揉め事を作るだけだし。使えないの」


「俺はフィンヤのすることに反対はしない。新住民たちも、向こうもギリギリまで譲ってきているのはわかっている。俺は反対しろって言ったことはない」


「コルトの兄貴は反対しろとは言っていないけど、賛成しろとも言ってない」とベレッタさんが言って、コルトさんに首を絞められていた。


「今のやり方だとフィンヤの体がもたない。お前が倒れたらサーウエストはどうなるかわからない」


「コルトさん、私にはどうすれば良いのかわからないよ。私は洞窟にいた時と何も変わっていないの。だから、私はただ私が信じていることを話しているだけだもの。それとね。事前に聞いてた話と私が聞く話の食い違いが大きくて」


「フィンヤに話すのと、とりあえず来ましたできた役人と話す内容が変わるのは当然だろう」


「やることは洞窟でやっていたことと同じで良い。みんなに言いたいだけ言わせれば良い。後はお前が決める」


「フィンヤが決める分には誰も文句は言わない」


「そうかなあ」


「俺が言ったら反対する奴もお前が言うと賛成に回る。お前の人徳だと思う」


「コルトの兄貴はフィンヤの姉さんが言うことで反対したことは一度もないですよ。フィンヤの姉さんの意見に文句を言ったらコルトの兄貴から出た殺意で、俺たち何度も死を覚悟しましたから、俺たちは絶対に反対しません」


 ベレッタさんは再度コルトさんから思い切り首を絞められていた。


「ともかく、屋敷に新住民の主だった連中と俺たちや俺たち以外の旧住民の連中を集めて、話をせるだけ話させて、お前が決めろ」


「私が決めるの」

「そう、お前が決める。俺たちが支えるから安心しろ」

「コルトの兄貴はフィンヤさんが大好きですから、そこは信頼してください」


 ベレッタさんがコルトさんに殴られて失神してしまった。



 各地から数多くの難民の人が押し寄せてくる。トラブルが多発する。私の他にクンペル君が突然準男爵に任命されてしまった。クンペル君は度胸はあるけどまだまだ子どもなのにどういうつもりなんだろうか? 私たちは村娘と村の男の子でしかないのに。聖女様の考えがまったくわからない。


「フィンヤさん、サーウエストを来年からこの国の将来を担う穀倉地帯にします」


「聖女様、サーウエストはこれまでこの国でも一番貧しい地域でした。来年から穀倉地帯になるなんて無理です」


「フィンヤさん、無理は承知しています。でも、ここには豊富な地下水があります。旱魃かんばつに強い小麦の種も最優先でサーウエストに譲るので、できるだけ多くの小麦を収穫してください」


「難民に混じって大聖女国から兵士一万人をサーウエストに送り込みます。国境の警備、治安の維持に使ってくださいませ」


「聖女様、その兵士たちをこき使っても文句はないよな」


「クンペル、聖女様に対して失礼ですよ」


「フィンヤさんもクンペル君も私の代理人ですから必要ならばどうぞこき使ってくださいませ」


「これでサーウエストの治安対策はなんとかなります。聖女様」とクンペル君がお礼を言っている。もしかしたら私が一番、ついていけてないのかも。コルトさんもベレッタさんも変わってきているのに、責任者の私だけが洞窟の時と同じなんだ。


「聖女様、私にできるでしょうか?」


「わかりません。とりあえずやってみてくださいませ。必要があれば私を呼んでください。雨もここサーウエストに、最優先で降らせるつもりなので、遠慮はいりません」


「来年の旱魃を乗り切れるどうかはサーウエストにかかっています。私も全力で支援します」


 私以外の人たちは聖女様の言葉で盛り上がっている。「俺たちにこの国の未来がかかっている。旱魃を乗り切れるかどうかは俺たち次第」そんな大変な計画の責任者は誰だろう。私はここから逃げ出したい。


「フィンヤさん、私と一緒にやってくれますね」と聖女様に両手を握られた。もう断れない。


「承知しました。聖女様」と私は言う以外の言葉はなかった。周囲は熱気に包まれていた。




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