フィンヤさん目を回す
サーウエストに行ってファイアさんに多数の難民をサーウエストに向かわせたことを話したら、フィンヤさんは目を回して倒れた。
大聖女国から応援というか実質差配している行政官の人が、「やっと大聖女国からやって来た開拓者たちの生活が順調に回り出して、フィンヤ男爵がホッと一息ついた途端、また多数の難民がって言われたら、それは倒れて当然です。私たちも倒れそうです」って文句を言われた。文句はアホな王家に言ってほしい。
「フィンヤさん、ごめんなさい。サーウエストには荒地が多いのでまだまだ開拓の余地があります」
「そうですね。それはわかりますが、私もここにいるみなさんも限界だったりします」
「フィンヤさんの代わりになりそうな男の子がいたと思うのだけど」
「俺ですか。無理です。フィンヤの代わりなんて無理です。俺にはフィンヤみたいに人をまとめる才能はゼロです。魔物退治の才能はあるので冒険者になるつもりです」
「あなた、困っているフィンヤさんを見捨てて冒険者になるわけ?
「ええと、今でなくて良いけど」
「あなたの名前を教えてほしいのだけど」
「俺の名前って変わっているから言いたくないんだけど、クンペルだよ」
「クンペル君か、今日からクンペル準男爵って名乗ってください、家名は自分で勝手につけて良いから」
「クンペル準男爵さん、難民が多数押し寄せてくるので、後はよろしくお願いします」
クンペル準男爵君は真っ青になってフィンヤさんを見た。フィンヤさんが諦めろという表情で微笑んだ。
「やれるだけやるけど、それが終わったら貴族は廃業して、俺は冒険者になりますからね」
「クンペル準男爵、頑張ってくださいませ」
「私も雨は無料で降らせるし、食料援助もするし、行政官の人数も増やします」
「誰それに来てほしいという希望も聞きますから」と言ったら行政官の人たちが拍手をしてくれた。
私はさっそく雨乞いの舞を三日おきに舞った。水の精霊さんがドヤ顔するくらい雨がよく降った。赤土が黒土に変わった。でも、これから難民さたちが開墾する土地はタダだけれども本当の荒地で岩がゴロゴロしている一からの開墾になる。なんとか頑張ってほしい。一応仮設の家は大聖女国から送ったけど、足りないかもしれない。
クンペル準男爵頑張れです。私の頭で考えられることはこの程度なんだよ。
サーウエストに着いた難民さんはその出身地ごとに村を作って荒地の開墾を始めたようだ。数人では絶対無理な開墾でもみんなで協力し合うとなんとかなって畑が徐々に増えてきた。その度に私は雨を降らしに行っている。私もキツいけど、サーウエストを穀倉地帯にしないと来年は餓死者多数は確定しているので、弱音は吐けない。
父上にお願いして熟練した農政の専門家をサーウエストに寄越してほしいとお願いしてみよう。父上がきてくれると安心なんだけど。一応父上も領主? バイエルンは王家から自立しても父上は相変わらずバイエルン家公爵として各種命令書を出している。政治のことはよくわからない。
ウエルテルにも手伝ってほしい。ウエルテルのリーダーシップを生かさない手はないと思うのだけど、魔道具の大量生産、大量販売の組織を作るウエルテルの夢も大事にしたい。期間限定で助けてもらえないか尋ねても良いかな。ウエルテルに手伝ってもらうとしたら、やはりヴィクターとニコラにも声を掛けないとだよね。マリアはどうしようかな。
もしかしたら誰もきてくれないかもしれないし。マリアは保留にしておこう。
聖女様が突然来られた。私には嫌な予感しかしない。「多数の難民がサーウエストに殺到します」と聖女様が言った瞬間私の目の前が暗くなった。
大聖女国からやって来た開拓者の人たちとサーウエストに元々住んでいた人たちのトラブルがやっと峠を越してほっとしたのが一昨日のことだった。サーウエスト側のまとめ役のコルトさんが私に協力してくれるとやっと言ってくれた。
私はコルトさんに会いに行ったら、病気療養中と言われた。もうダメだと思ったらコルトさんの腹心のベレッタさんが会うと言ってくれたので、ベレッタさんのところに行ったら、コルトさんも同席していた。私はすぐに平伏して協力してくださいとお願いしたら、コルトさんが大慌てで「バカ、お貴族様が平民に平伏してどうする」って叫んでいた。
誰にお願いしてもコルトさんが許可しないと動けないというし、コルトさんのところにお願いに行くと病気療養中で会ってもらえないから。ここで協力してもらえないとサーウエストは新しい住人と昔からの住人が対立して完全に動けなくなってしまう。




