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学部長と第五王子に直談判するエマ

「そうだね、アカデメイアの住民の健康状態は日に日に悪くなって行っているのは、私も気付いているよ」


「アカデメイアは大学の街で農業の町ではないので、家庭菜園程度では文句は言われないけれど、アカデメイアの景観を保つために耕作は禁止されている。これは法律で定められているので、変えられるのは国王だけ」


「ウンザリですね。街の景観よりも住民の生命だと思います」


「エマの言うことが正論だけど、残念ながら正論が通らないんだよ」


「国王陛下も祖法ということで実は国王陛下自身が廃止、変更したくてもできないという事情もあるしね」


「人の生命より祖法ですか?」


「王家も王族もそれを取り巻く貴族もみんな、ご先祖様たちの栄光に憧れているから、それを変えることができないでいる」


「エマにはこの時期に自称国王に攻め込む行為は、馬鹿な行動だと思うだろけど、自称国王の存在は、祖法を守る人たちには絶対許せない存在。だから倒さないといけない」


「ホーエル・バッハもバイエルンも君の国も当然倒せる算段がつけば、攻め込むつもりさ」


「その祖法を守る人たちには庶民はどう見えているのですか?」


「税金を支払う者たちかな、税金を支払わなければゴミだろうね」




「学部長、私王宮に行ってきます」


「王宮の連中は、突然君が行ったら攻めてきたと思う。そうだね。第五王子に招かれたことにする方が良い」


「私が第五王子に連絡しておく」


「学部長、お願いします。私、このままだと王家に叛旗はんきひるがえすしかありません」


「それは、私の立場では困るけど、一市民としては有り難い」


「できるだけ早く第五王子とエマとの面会を設定するよ」



 数日後、第五王子から会いたいと私のところに命令がきた。


「第五王子様、面会していただきありがとうございます」


「僕としては会いたくなかったよ。この面談で大聖女国がどうするのか決めるのだろう? できればこの面談だけで決めるのではなく、次回があってほしいと思う」


 第五王子には未来が見えているのになぜだ。


「王子様、私は来年も再来年も旱魃かんばつになると言い続けています。それなのにどうして、今、討伐しているのでしょう? そんな余裕はありません。このままだと王家が統治する地域の民の多くが餓死します」


「だろうね、ただ、王族や貴族の間ではエマ殿の予言を信じている者はいない」


「なぜですか? 今年は私の言った通り旱魃になったではありませんか」


「エマ殿の言う通りになったけれど、来年は旱魃にはならないと言う学者もいるのでね」


「私よりその学者様を信じるわけですか? その学者様は今年どうなると言っていたのでしょう」


「例年通りだと言っていたね。どうして今年は突然旱魃になったのか? その原因を今研究中だそうだ」


「自称国王たちの討伐はこれからも続くのですか? 自称国王を討伐した後の代官がその領内の現状を無視して、旧来通りの税金を取ろうとしている。なぜですか?」


「すべて旧来の状態に戻すと国王陛下がおっしゃったからね。そうするしかない」


「王子様はそれについてどうお考えでしょうか?」


「それを言うと不敬になるのだけど。現実問題として無謀だね」


「王子様にはそれを止めることはできないのでしょうか?」


「今、僕に味方するのは近衛師団長のクランツしかいないからね。そのクランツは討伐に行かされて、二人で話し合うことができない」



「エマ殿は、おそらく今の王家のやっていることは民を苦しめることしかやっていない。王家を早く倒した方が民のためだと思っている。それは正しいけれども、王家が倒れるとさらなる騒乱をもたらすことになる」


「そこも見た方が良いと思う」


「では、私にどうしてほしいと王子様はお考えでしょうか?」


「エマ殿には政治に関わらないでほしいと言ったのは同じです。厚かましいのはわかっているけれども、来年、エマ殿の予言通り旱魃になった場合は王家に食料及び水の支援をお願いしたい」


「来年も旱魃になれば王家はもはや何もできなくなる。放っておいても倒れるだろうね。今、王家を支持している貴族たちもホーエル・バッハかバイエルンの傘下に入るだろうし」


「王子様はどうされるのですか?」


「王家がこのままで良いと思っている者は僕たちだけではないので、建て直したいとは思っている。そのためにも大聖女国の支援は不可欠だと思っている」


「大聖女国の庇護下にあるサーウエストは討伐対象からは外してある」


「それはありがとうございます。サーウエストが討伐されれば大聖女国はサーウエストに援軍を送ります」


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