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エマ、急患を診る

「聖女様がそう思うのでしたら、王子様とお姫様のその後を自分でお書きになれば良いのです」


「そんなことをしても良いのかしら?」


「私も聖女様と同じで結末が納得できないので、その物語が終わった後を自分で書いて楽しんでいます」


「メリンダも納得できないんだ」


「コゼットに読ませたら、とても怒ってしばらく口をきいてくれなくなりました。子育ての考え方が王子とお姫様では大きく違っていて、離婚した話にしたら、私の夢を返せて言われました」


「離婚させるのではなくて、お互いが協力して仲良くするお話にしておけば良かったのに」


「そうですね、今思うとハッピーエンドにしておくべきでした」


「あっメリンダいつの間に来ていたの?」


「あなたの雇い主さんは、やめるなって止めた?」


「ううん、仕事がまったくないから、次の奉公先が決まって良かったねって言われた」


「聖女様、メリンダは合格ですか?」


「合格だよ。大学でのお付きもしてくれるって」


「良かった。じゃあメリンダさっそくだけど手伝ってお願い」


「コゼットの頼みは断れないな」


 私は聖書はかなり理不尽なので好きだったりする。とっても良い人が悪い人に騙されて死んだり平気でするから。吟遊詩人さんたちの物語は色々大変なことはあるけれども、最後はみんな幸せになりましたってあり得ないだろうといつも私はツッコミを入れていた。最後はヒロインが死ぬとか、大事な仲間が死んで主人公はウツになりましとかあっても良いのではと思ったりする。私以外は喜ばないだろうけど。


 人に読ませたら怒る内容でも、自分一人で読む分には怒られないし。日記がわりに物語を書いてみようかな。でも、物語を書いたら人に見てもらいたいかも。その誘惑に私は勝てるかどうかが問題だ。やはり物語ではなく日記にその物語の後半を書くとか工夫しないとまずいかもしれないな。


「聖女様!」


「はい、何か?」

「お薬お願いします」


「はい、はいすぐに用意します」ボーっとしてる場合ではなかった。私は今お仕事中だった。




「メリンダがお針子やめたの! この町一番のお針子なのに王家の服はすべてメリンダが縫った服なのに」とダン君がびっくりしていた。


「仕方ないわよ、王家から注文がまったく来ないのだから」とコゼットさんが説明していた。


 王家は軍事費に予算のすべてを注ぎ混んでいる。来年をどう乗り切るのかをまったく考えていない。バイエルンも自立した今、王家が頼れるのは大聖女国だけ。うちだってこんなアホな王家を助けたくはないけど。ある程度援助しないと餓死者多数ではなく全員餓死ってことになる。バイエルンの父上にもなんとかならないか極秘でお願いしてみよう。ハンニバルは王家の力の低下を望んでいるから、絶対に援助はあり得ないもの。


 聡明な第五王子は何をしているのか? もう一度会ってその意思を確かめたい。王家の滅亡と運命をともにするつもりなら、母上とエリザベートは絶対に救出するのだから。王家を建て直すつもりなら力を貸す。私はお人好しで十分満足なのだ。ハンニバルみたいに王家に成り代わるつもりはまったくない。


 来年は王家の統治している場所には多数の餓死者が出るのは確定した未来だと第五王子に訴えてみよう。その反応次第では私も覚悟を決めないといけない。


「クルト先生、急患です」と誰かが下宿屋の前で叫んでいる。クルトさんは今日は大学で泊まり込みなので不在なんだけど。どうしようかとゆきちゃんを見ると薬草セットのカバンを肩に下げていた。


「クルト先生は今日は大学で泊まりですけど、私でよければ行きますけど」


「聖女様が来てくださるのは嬉しいですが、クルト先生に支払うお代しか用意できません」


「料金のお話は後で良いので急患のところに案内してください」



 急患の人のを見た。クルト先生ご指名だけあって小さな子どもだった。


「いつから発熱してますか? この足の包帯はどうしたの」


「発熱は昨日からで急に上がり出したのさっきから、足をケガをしてかなりうみが出たので近所のお医者様に切ってもらって膿を出してもらいました。毎日通院するようにと言われたのですが、その後は行ってません」


 包帯は汚れているし、これは傷口から毒素が入ったのは確かだと思う。熱が高過ぎる。


「ゆきちゃん、解熱の薬草をお願い」


「分量はどれくらいにしますか?」


「大人の人の半分にします」


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