魔道具回路研究部に新入部員その2
ヴィクターは魔道具回路の天才かもしれない。ヴィクターに私が描いた回路図を見せたら、「エマの描いた回路図を見て思うのは、ここはこう別系統の回路を足すと魔力効率が良くなるし、着火具に掛かる負担も大幅に減るので壊れ難い」
「ヴィクターありがとう、気付かなかったよ」
ヴィクター自身は、ファイアボルトの代用となる相手の魔力を感知してその方向に飛ばす魔道具を研究をしている。
私は閃いめいた。魔力を感知してドアが自動で開くとか応用が出来るかもしれない。魔法を持っていない人の場合はどうすれ良いのかと今は考えている。ヴィクターがいると私も色々アイデアが湧いてくる。
ヴィクターと回路図について話すのは楽しい。ただヴィクターを褒めるとエマ研の人がヴィクターを睨むのと、私がヴィクターに近づくとお姉様方がインターセプトしてくるので、はっきり言って邪魔。しかもボーディガードはこれまでは二人体制だったのが、ヴィクターが入部して以来四人体制になってる。椅子が足りないので4脚追加申請するはめになった。部員は二名しかいないのに、椅子だけ8脚っておかしくないですか。
ミカサが部室にやって来た。エマ研の人もヴィクターも一言、「破壊の魔女」と言う声が聞こえた。ミカサの二つ名らしい。「破壊の魔女、ミカサ」なんかカッコいい響きだ。
「ここが魔道具回路研究部の部室か。意外に片付いているじゃないか」
「ミカサお姉様、確か学校対抗戦の選手に選ばれたっておしゃっていましたよね、練習はよろしいのでしょうか?」
「私の場合、特別選手枠だから、下手に優勝は出来ないのよ。気にしなくて良い」
とっても気になるのですが、特別選手枠だと優勝とかすると何かマズいのでしょうか?今は尋ねないけど。
ボディーガードの皆さんがかなり怯えている様に見えるのですが、ミカサって怖い人何でしょうか?
「あなたがヴィクターなの、私はミカサ、ミカサ先輩って呼ばせてあげるわ」
「ヴィクターです。よろしくお願いします。ミカサ先輩」
「エマ、良い子じゃない。ぶっ殺すのはやめたわ。でも、このボディーガードさんたちって、あなたのお母様の臭いがするわね」
ミカサのその一言で、エマ研の人が三人、部室を飛び出して行った。残されたエマ研の人はどうしたものかと悩んで、「失礼します」と言って部屋を出て行った。
「エマ研究部について少し調べたら、あなたのお母様の部下と言っても良い様な人の娘がけっこういたからね。観察ではなく監視されていた」
「暗殺とかは歴史上親衛隊とか近衛隊に所属する人間がするわ。いつでもあなたを殺す用意はしていたってことだよね」
さすが母上です。不要と思えば子どもでも始末する。それがバイエルン家の裏の顔だったりする。
これはバイエルン家がそもそも、王族から依頼されて、王族にとって邪魔な有力貴族を始末するのが家業と言うか、そう言う成り立ちの家だったわけで。王家の番犬と陰では呼ばれている。
何代か前のバイエルン家の人間が、演習中に、火力バカ全開で特大のファイアボールをぶっ放したら、敵、味方関係なく、王族も巻き込んで吹き飛ばした。王族の番犬が王族に怪我を負わせたので、お家取り潰しものだった。でも、過去の闇の仕事のお陰で公爵位からワンラクダウンの侯爵に落とされただけで済んだ。それを元の公爵位に戻そうと母上は必死に我が子を一流の人間に育てている。それを妨げる者、傷を付ける者は自分の子どもでも容赦はしない。それが私の母上だ。私は、母上に似ているからその気持ちはよく分かる。
「これでエマ研究部は解散する。エマ、すっきりしたでしょう」
「はい、邪魔な人たちがいなくなりました」
「でも、男の子と二人でいつも部活するのは、淑女としてはどうかと思うので、私のお付きを入部させるわね。明日にでも連れて来るから。今日の部活は終了です。エマもヴィクターもさっさと部屋を出て、そしてエマが部室をロックする魔法の詠唱ね」
「ミカサお姉様大好き」
「とっても心地よい」
ヴィクターは一体全体どうなったのかまったくついていけていない。
「エマ、ミカサ先輩お疲れ様でした」
「ヴィクター、エマって呼び捨ては良くないわ」
「エマさんと呼ぶように、わかった」
「はい、承知しました。ミカサ先輩」
ヴィクターは駆け足で去って行った。ミカサの圧力は凄いわ。でも、ミカサはどうやって、エマ研究部の人たちについて調べたのだろう。相変わらず謎の美少女だ。




