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エマ、公開講義を行うその2

 私は青い帽子を被り青い上着を着て、青いズボン姿になっている。これで大気中のエーテルを吸収して、女の子に生命を吹き込む。


 医学部の教授たちが、少女が亡くなっていることを確認している。教授たちの確認が終わると私が少女に生命を吹き込むのだけど、その生命の元はここに集まって来ている参加者の寿命だったりする。学部長はその点については一切説明していない。


 青い小鳥さんも水の精霊さんの協力は得られなかった。私も本当はやりたくはなかったのだけど、学部長の迫力に負けてしまった。とても怖かった。


 少女の真っ白だった顔に赤味がさしてきた。心臓が拍動し始めた。私の役割はここまで。後は学部長と教授たちの役割になっている。


 教授たちが少女の蘇生を確認した。


「今回の死者蘇生は神に祝福されたエマのみができる。我々ができることは二人の死者を一人の死者にすることだけだ。私は次回移植手術によって二人の内一人を蘇生させるとここに宣言する」


 学部長の狙いは自分の実験に反対者が出ないようにすることだった。死者蘇生の驚きで学部長の手術について反対する人が誰もいなかったことで証明された。


 少女が目を覚ましたので、学部長が少女に名前を尋ねた。「アタイの名前? アタイは野良だから飼い猫じゃないので名前なんてないよ!」


 野良猫の魂が少女に宿った。エルフがリザレクションを禁忌にした理由がわかった。リザレクションはやってはいけない。


 少女は記憶を取り戻したものの性格は完全に別人になっていた。学部長はリザレクションの副作用とか言っている。


 私は絶賛後悔中。死者を蘇らせたい人が毎日のように下宿にやって来る。あの少女が蘇生したのは、私の力ではなく亡くなってすぐに、学部長が特殊な術式で少女を死者の国に行かせなかった。その結果であって、学部長はその術式を次回の公開講座で発表するだろうと、口から出まかせを言って蘇生依頼を断り続けた。


 担当医が学部長でなければ死者蘇生は不可能ということにした。現在、学部長の患者になろうと、大勢の患者が押し寄せている。ザマあみろだ。


「エマ君、学部長の秘術というのは僕でもできるかな?」


「おそらくクルトさんには無理だと思います」

「学部長の魔力量は普通ではありませんから」


「エマ君だけでは死者蘇生は無理なんだよね」


「私は神に祈っただけなので、私が生き返らせているわけではありません」


「亡くなって一週間経った遺体が生きてるかのように見えるわけがないしね」


「教えてほしいとお願いしたら氷で冷やせだって、どれだけ多量の氷が必要になるか。氷の費用だけで僕は破産してしまう」


 学部長はエルフの精霊魔法でいくらでも氷が作れるからね。嘘は言っていない。


「エマちゃん、クルトさん急いで来て!」

「大家さんに何かあったのかしら!」


 私とクルトさんは大家さんの声がする所に急いで行った。大家さんはオロオロしていた。大家さんの正面には小さな子どもを抱いた母親が立っていた。


「突然、この子が息をしなくなりました」

「いつ、息をしなくなった」

「およそ三十分前です」


「キツいなあ、エマ、雷をこの子に落とせるか?」

「クルトさんやってみます」


「お母さん、子どもさんを絨毯の上に置いて、離れて」

「エマ、雷」

 私は小さな落雷を子どもの胸に落とした。

「エマ、もう一回」

 都合三度落雷を落とすと、子どもの心臓が動き出した。


 私は子どもの手を握って聖句を唱えながら脳の修復をしてみた。少し手足に麻痺が残るかもしれない。おそらく心臓病だと思う。手術をしないと、内服薬では根本的な治療にならない。


クルトさんが「しばらく大学病院に入院させたいのだけれど」

「お金がありません」


「エマ君、どうする? 見捨てる」


「お母さんで良いのでしょうか?」

「私はこの子の姉です。私たちの親は亡くなりました」


「お姉さんともども、私の部屋に来てください」


「ゆきちゃん。いる?

「なんですか?エマさん」


「この子を私のベッドに運んで、お姉さんも付き添ってください」


 姉が部屋に入ったのを確かめて「クルトさんの見立ては?」

「心臓病で手術が必要な病気だ。開けてみないと診断はつかないけど」


「私も同意見です」


「クルトさん、医療機材と薬草は畑の小屋にありますけど」

「エマ君が執刀するのか?」

「執刀はクルトさんに任せます。私は縫合だけです」


「俺の腕前が見たいのかな?」

「そういうことになりますね」


「あなたたち、自信満々は良いですけど、人一人の生命がかかっているのを忘れないでね」


「大家さん、了解です」

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