魔道具回路研究部に新入部員
材料も届いた。道具も届いた。これで魔道具が作れる。喜びの舞を舞う。エマ研の人たちが不思議そうに見ていた。部室には観察兼ボディーガードとして二名の人が座って私を見ている。
魔道具回路に興味を持ってくれてエマ研とウチの部と掛け持ちしてくれると嬉しいのだけど。部員番号1番のミカサは運動系なので、100パーセント文化系のウチの部には来ない。だったらなぜ入部したのか? 単にパスワード、唱えるたびに恥ずかしさを覚えるあのパスワードを設定するためだったのか。
事件は突然起こった。男の子がウチの部に入って来たのだ。ボディーガードの二人はすぐに攻撃魔法を放とうとしたので、私が制止した。
エマ研のお姉様方の射殺す様な視線にもめげず、それだけでも凄いと思う。
「僕、魔道具回路にとても興味があるので、入部を希望します」
「男はダメ」とエマ研の人が言った。オイオイ、ここは私の部だぞ勝手なことは言わないで。
「私はエマ、あなたの名前を教えて」
「失礼しました。僕はヴィクトルです。ヴィクトル・フォン・クライゼンです。ヴィクトルでもヴィクターって呼んでもらっても良いです。昔からみんなヴィクトルとは呼ばずにヴィクターって呼ぶので」
「失礼しました、改めて、エマ・フォン・バイエルンです。よろしくヴィクター」
「エマ」
「はい、お姉様何か」
「男は危険です」
「お姉様たちがいらっしゃるから大丈夫だと思います」
「それはそうだが」
このエマ研の人たちって全員、男の子が嫌いだよね。恋話の一つでも聞いてみたいのに。見た目は6歳中身は16歳なので恋に憧れるお年頃だったりする。
「ヴィクターはどう言う魔道具に興味があるの?」
「僕は魔法量が少ないので、攻撃系の魔道具に興味があります」
前の私に似ているかも。私は魔法量はそこそこあったけど、致命的な弱点を持っていた。攻撃魔法を放っても目標に当たらない。攻撃魔法って相手に当たってこそ威力が発揮出来る。当たらなければ魔法の無駄遣い。それもあって爆発魔道具作りに私は走ったのだけど。
「私は攻撃系の魔道具も興味があるけど、今は生活系の魔道具に関心があるの、それでも良いのかなぁ」
「ダメです」エマ研の人黙っててほしい。
「生活系の魔道具にも興味がありますし、その知識を攻撃系の魔道具に応用したいです」
入部を許可するので、入部届けにサインして」
「これであなたも、魔道具回路研究部、部員2番です。」
「2番ですか? 1番の方はどちらですか」
「こちらの方々はエマ研究部の方です。1番の方はその内来ると思います」
マア、来ることはないと思うけど。
ヴィクターに材料の分類と配置と道具の配置をしてもらった。本当に助かる。男手は絶対必要。
部の今後の活動とかをヴィクターと相談してみた。ヴィクターは研究報告書はそんなに手間な仕事ではないし、仮に内容が薄くてもそこそこの予算がつくので提出した方が良いと言うので、ヴィクターに報告書は任せるわって丸投げをした。私は医学部を目指しているので、時間が惜しい。私が医学部を目指しているのは極秘にしている。私は弟たちと違って平凡な少女でしかないことを自覚しているので、大ボラは吹きたくない。
部屋に戻って新入部員が入ったことをミカサに話したら、最初は良かったねだったのが、新入部員が男の子って分かると、「ぶっ殺す」と言い出したので、ミカサに魔道具を作るのには男手が必要と力説したら、ミカサは「明日から部室に行く」と言い出した。これはヴィクターの身が危ないと思ったので、ヴィクターに手を出したら、部室のパスワードは「ミカサお姉様嫌い」に変える宣言したら、ミカサはしょげて、「エマに誓ってヴィクターには手を出さない」って誓ってくれた。
お姉様の皆さんはどうして男の子を嫌悪しているのか理由が分からない。前の私の取り巻きたちは誰それ子爵の息子が良いとか、伯爵の息子だけど三男だし、顔は私のタイプなんだけど残念。でも、結婚後に付き合いたいとかよく言っていた。結婚と恋愛は別なのよって、取り巻きの皆さん全員が問題なしと言う。貴族社会ってかなりドロドロなのかもしれない。当時の私でもかなり引いた。
前の私でも好きでもない男性とは結婚したくはなかった。でも母上の命令だったら、好きでもない人と結婚をして、好きな男性と恋に落ちたかも。今は母上の命令など聞かないので、私が選んだ人と結婚するの。まだ6歳だけど。