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エマの囮捜査

 私の宿舎はトリアステ国立病棟の特別室。健康診断が終われば、司法官に警護されて病室に戻される。外出が自由にできない。ゆきちゃんは看護師さんの制服を着てとってもテンションが高い。ちなみにゆきちゃんは自由に外出ができる。


 ゆきちゃんは私専属なので、他の患者さんとの交流してはいけないと禁じた。ゆきちゃんも私と一緒にいることが多いので、医療知識は豊富だし、手先も器用なのでついうっかり、医療行為をするかもしれないから。


 ゆきちゃんは無免許なので面倒なことになるから手伝ってもいけないと何度も繰り返し説明した。


 ゆきちゃんは「看護学校で免許を取りたい」と前向きに考えている。いざという時にはどうしても手伝いたいと言う。ゆきちゃんの母国、ヒノモトで試験を受けて看護師免許を取得するのが良いかどうか、一度ミカサに相談しようと思っている。


 ゆきちゃんには言葉がよくわからない振りをしてもらうことにした。


 設定は、雨乞いの舞の舞手なので万全の体制で雨乞いをしてもらうための入院ってかなり無理がある。


 司法官の人から捜査資料を読まされた。殺されたのは二人とも二十歳代の貴族の令嬢で接点はない。死因は二人とも心不全による突然死。毒物は体内にはなかったが、二人とも筋弛緩剤を投与されていたことが判明したので殺人事件として捜査することになった。


 医師から筋弛緩剤投与の指示書が出たので、担当看護師が投与した。入院中の他の貴族の令嬢数名にも同様の指示書が出ていたが、その令嬢をたちを担当していた看護師たちが、おかしいと思い医師に確認したところ偽の指示書だと発覚したため未遂に終わった。


 医師の指示書を何通も出した? 令嬢連続殺人なんだろうか? 特定の令嬢に恨みを持っている者の犯行の可能性は?


 司法省も同じ見立てのようで、それと貴族関係の捜査なので本腰を入れている。被害者が、庶民ならそのまま迷宮入りだったかも。


 一回筋弛緩剤を投与したくらいで心不全は起こらないと思うのだけれど。


 指示書を見てコリャ看護師が怠慢だと思う。通常投与の五十倍の量を投与なんだから気付けよ。司法官はこの看護師を容疑者として取り調べ中ってことは、この看護師さんはこの病院にはいない。


 私に何を調べさせたいのか相変わらずわからないリヒャルト弁護士だ。本当に私は本当におとりだったりして。


 雨乞いの舞を舞うたびに点滴するのはやめてほしい。私は食事は食べられるから不要だと言っても費用に含まれているからという謎の理由で今日も点滴をされている。


 ゆきちゃんは点滴中は暇なのでウインドショップに出かけた。

 護衛の人は病室の入口で警備中。


 点滴されると二時間は動けない。暇だ。看護師さんが病室に入ってきた。見たことのない看護師さん。あれ点滴の袋に注射器で薬剤を入れている。私は急いで口に解毒剤を含んで飲んだ。


「看護師さん、どうして筋弛緩剤を点滴に投与しているの?」


 看護師さんはナイフを取り出し私を刺した。凄いシールド四枚抜きだ。このナイフ欲しいかも。ナイフがシールドから抜けないので、ナイフから手を離してナイフの柄に横蹴り、靴の中に鉄板が仕込んであるみたいで金属音がした。


 残念、私にはナイフが届かない。看護師さんは逃げる体制に入ったけれども、床から垂直に水が吹き出した。無理矢理出ようとした看護師さんの足の甲を水が貫いた。


「看護師さん、動くと水流で体がバラバラになってしまうよ」


「雨を降らせる魔術師とは聞いていたが、イカサマ手品師だと思った俺がバカだった」


「看護師さんは男性なの?」


「看護師には男性も女性もいる。もっとも俺が着ている服は女性看護師の服だがな」


「あなたが連続貴族の令嬢殺人事件の犯人さんで良いのかなあ」


「この状況で否定しても仕方がない。答えはイエスだ」


「連続殺人の動機が知りたいのだけど話してもらえますか? これは私の単なる興味なので答えない自由はあなたにはあります」


「失恋だよ」


「すみません。亡くなった令嬢たちに失恋したので殺害したってことですか」


「失恋相手はその令嬢たちではない。令嬢なら誰でも良かった」


「貴族の令嬢にあなたは恋をして、その令嬢に振られたので、その腹いせで別の令嬢たちを殺害したということですか」


「簡単に言えばその通りだ。俺はここの元医師だった。俺が担当した貴族の令嬢に恋文を渡したら、その令嬢は親にその恋文を見せた。俺は病院をクビになった上に医師免許を剥奪された」


「医師免許の剥奪はさすがにやり過ぎだと私は思います」

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