畑仕事、自動水やり魔道具
ゆきちゃんと私は畑仕事をしている。やはり私は人間より植物が大好きだ。水不足でほとんどの植物は枯れていた。でもそのすべてを私は復活させた。これって植物のリザレクションをしたことになる。
下宿先の水不足について、その解消の目処が立っている。ただし二十メートルほど地面に穴を掘って地下水を汲み上げないといけないので、私とゆきちゃんはせっせと穴を掘っている。
「エマちゃん、ゆきちゃん大丈夫なの? 出て来られるの?」
「大家さん大丈夫です。それとお願いがあります。大家さんの家の中あるいは外から見えない場所に水汲み魔道具を置かせてください」
「言っている意味はわかるけど、どうするの?」
「大家さんの水汲みを楽にしたいので」
「よくわからないけど、エマちゃんたちに任せるわ」
「ありがとうございます」
私の足元が濡れてきた。ゆきちゃんに、私が久しぶりに開発した自動水やり魔道具を取ってきてもらった。ゆきちゃんは、助走なしで垂直な穴を十五メートルも駆け上がる。ゆきちゃんの身体能力は凄い。
魔道具を設置して穴を埋めて簡易結界を張った。これで普通の人には魔道具が見えないようにした。
地面から出ている筒状の管に接合部を取付けさらに幾つかの筒状の魔道具と濾過する魔道具とを組み合わせた筒状の管を、大家さんの台所に小さな穴を開けて通してその先に栓をつけて水道魔道具の設置が完了した。外の見える部分には簡易結界を張って外からは魔道具が見えないようにした。
畑には一定量の水が流れるように調整して、大家さんの台所は栓を開けるにすると水が流れる。閉めるにすると水が止まるようにした。
私の長年の夢が叶った瞬間だ。もう少しで自動洗濯魔道具ができる。大家さんにはこの魔道具は人には見せないようにとお願いした。
「みなさんが困っているのにうちだけこんなに便利だと気が咎めるわ」
「家の中で喧嘩が起きたり、下手をすると王家にこの家を没収されかねないので我慢してください、大家さん」と理由を説明しておいた。
アカデメイアにはよく雨が降る。最近の私の評判だけど極悪非道守銭奴悪魔と呼ばれている。自己中といえば私のことを意味する。その通りです。私の畑のためだけに雨乞いの舞を舞っている。
とっても気楽だ。
大学に行くとなぜか学部長に呼び出された。
「エマ、王家からの命令を伝えます。トリアステに行って雨を降らしてこいだそうです」
「報酬は金貨百枚で後払いだそうです」
「その間の講義はすべて公欠扱いだそうです」
「公欠は良いのですが試験はどうするのですか?」
「試験は今ここでします。エマなら楽勝でしょう」
突然試験って言われても妖精さんがどんな悪さをするのかとかはノートを見ないと思い出せないよ。
試験問題が渡された。
各臓器の役割についてエマが知っていることを述べよ。妖精についての記載は不要って。私は何のために講義ノートを作ったのか、わけがわからない。
脳の役割、胃の役割、腸の役割等々書いてみた。
「エマも脳の役割はあまり知識がないようだね」
「そうです。脳を見ても目と繋がっている。各臓器と繋がっているので何かしら役割があるとは思うのですが」
「生きているサルとか解剖してみたいとか思わないの」
「私は動物よりも植物の病気に興味があるので、そこまではしたくないです」
「サルがね、実験に失敗して死んでも生き返らせれば問題ないと思わないのかね」
その辺に彷徨っていた魂がサルに宿っても本当に生き返ったことにはならないと思います」
「君も頭の堅いエルフと同じことを言うね」
「僕はね、昨日の僕と今日の僕は違うと思っているのさ」
「寝ている間に昨日のぼくの魂は出て行って、今日の僕の魂が宿ったって」
「記憶は脳の中にあるので、僕は僕のままだとね」
「私には学部長がおっしゃっているお話が理解できません」
「魂とは何かってことがわからないと、理解は難しいと僕も思っている。その内説明するつもり」
私には難し過ぎるので勘弁してほしい。私は動物ではなく植物はを専門にしたいから。魂とかどうとかは考えたくない。
ミーアさんからトリアステから雨乞いに来てほしいと連絡があった。前金で金貨二百枚、雨が降ればさらに二百枚支払うと言って来たという。
私は、トリアステが王家に出している依頼を取り下げるよう言ってほしいと、王家への依頼が正式になかったことになれば、私はトリアステに行くと返事をしてほしいとミーアさんにお願いした。
また、学部長から呼び出された。トリアステから雨乞いは不要になったのでエマは学行に励むようにと言われた。
トリアステと王家との間で、違約金だの慰謝料だのと王家がゴネタらしい。最悪だ。




