エルフにお願い
「エマ、エルフたちに助けを求めるのはどうか?」
「エルフさんたちも旱魃なのでは」
「ユグドラシル様がいるのに雨が降らないわけがないだろう」
「人種がエルフに助けを乞うても無視されるだろうが、エマなら」
「私なら、助けてくれるでしょうか?」
「最低でも水の精霊がいるところには案内してくれるだろう」
「精霊の王が、水の精霊に雨を降らせるように命令するわけですね」
「成り行きで王に任命された私の命令に誰が従うか! エマが水の精霊に気に入られれば助けてくれる。ただ、水の精霊とエマの風属性は相性が良くない」
「上手くいくかどうかはわからない」
可能性があるのなら、エルフさんたちのところに行くしかない。ダイキチさんの経過観察だけど大丈夫そうだし、善は急げっていうし今から行ってみよう。
エルフさんのところに来た。今回は矢を射掛けられることもなかった。でも、エルフさんたちがみんな平伏しているので困った。
「平伏されるととても話にくいので立つか、座るかしてもらえませんか」
「これは私からのお願いです」
ようやくエルフさん立ち上がってくれた。
「精霊様、私どもからのお願いです。どうか先ぶれをお寄越して下さい。こちらも宴の準備が必要でしてお願い申し上げます」
「宴とか歓迎会とか私にはもったいないです」
「それでは私どもの気が収まりません。この世界を救われた大恩ある精霊様への感謝ができません」
ダメだわ。このままでは話が進まない。
「わかりました。これから訪問する際は必ず先ぶれを行かせます」
「さっそく本題に入りますが私を水の精霊のところに案内してほしいのですが」
「水の精霊様は女神の泉におられますが、水の精霊様に気に入られないと近寄れません」
うう、それじゃあ私は近寄るのも無理かも。
エルフさんと一緒に女神の泉があるという場所には来たけど、泉がない。水の精霊さんに気に入られなかったみたい。
エルフさんたちにはお礼を言って集落に戻ってもらった。
「エマ、気を落とすな」と青い小鳥さんが慰めてくれた。精霊の王が来ても臣下の精霊に無視される王様の気分ってどんな気分なんだろう。私も慰めた方が良いのだろうか? 傷口に塩を塗るだけかもしれない。
ここって気持ち良い。ずっと薄暗い部屋でスライムの観察をしていたので眠い。私はいつの間にか眠ってしまった。
「あらまあ、精霊の王様が何を黄昏ていらっしゃるのですか」
「別に黄昏てはいないさ。予想通りだっただけだ」
「私たちに雨を降らせろって命令しに来たのではないのですか」
「私にそんな力はないのは知っているだろう」
「ユグドラシル様が精霊の王を決めようと考えていた時、たまたまユグドラシル様の肩にとまっただけで、精霊の王に任命されただけですものね」
「精霊の王、そこで気持ち良さそうに寝ている人種なのか精霊なのかよくわからないものは何ですか」
「ユグドラシル様のお友達だ」
「精霊の王、あなたは頭だけは良かったはず、こんなところでユグドラシル様のお友達を寝かせて良いと思っているのですか!」
「本人が気持ち良いと寝ているのだから問題ないだろう」
「これだから殿方はデリカシーがないので困ります。さっさとこの方の肩から下りて」
「ちゃんとした寝所にお運びしますので、王様はここでいつまでもお待ちくださいませね」
「気持ち良いなあ。水の音が心地良い。私は幸せだあ。二度寝しよう」自分の寝言で目が覚めた。水の音ってあそこには小川も滝もなかったのに。ここはどこだろう?
「お目覚めですか。よく眠っておられました。お疲れだったようですね」
「ありがとうございます。こんな素敵なベッドを使わせていただきまして感謝いたします」
「この地を統べるユグドラシル様のご友人を草の上で寝かせるようなことはできませんから」
「ところでここはどこなのでしょう?」
「ここは女神の泉。水の精霊の館でございます」
「私、エマと申します。水の精霊様にお願いがあって参りました」
「私たちに雨を降らしてほしいということであれば、龍との約束がございますのでできません」
「そうですか。お約束があるのなら無理は言えませんね」
「私たちが雨を降らすことはできませんが、他の誰かが雨を降らせるのなら問題はありませんけどね」
「私が雨乞いの舞を舞ったら水の精霊様はお手伝いしてくださるということでしょうか?」
「そうですね。私たちはその舞が気に入って一緒に舞うだけなので、その後の結果は私たちとは関係がございませんから」




