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エマの旱魃対策・医学部に入学

 龍神から今年と来年が旱魃かんばつだと教えられた私は大聖女国に帰国するとすぐに宰相のミーアさんに相談した。


 ミーアさんも半信半疑ではあったけれども、真剣に対策を考えてくれた。今のうちにため池を掘って水を溜めておく。ギリギリ間に合うかどうか。井戸を掘る。風車で地下水を汲み上げる設備を作る。


 節水を呼びかける。食糧を備蓄しておく。ヒエ、アワなど旱魃に強い作物を「今の小麦の値段」で買い上げることを宣言する。


 水争いが起こるのは必至なので今のうちに法整備を進めておくことになった。ミーアさんはとっても優秀で助かる。


 バイエルンにも今年と来年は旱魃になると言う情報を流した。さすが農業が専門の父上は旱魃に強い小麦をこっそり栽培していた。領内各地にその小麦の種を配布していた。私の所にも届けてくれた。


 ホーエル・バッハにも伝えた。大聖女信仰の強いホーエル・バッハ系の貴族も真剣に取り組んでくれた。


 ダメ元で王家と中間派貴族にも情報は伝えたが、信じる領主は極めて少数派だった。王家の直轄領に至っては完全に無視だった。


 雨季になればすぐにわかることなのだけれども。



 私はゆきちゃんを伴ってアカデメイアの下宿にいる。


「エマさん、ここが私のお部屋ですか? とっても可愛いお部屋ですね」とゆきちゃんはとっても嬉しそうにしている。


 熊のお世話係から私付きのメイドになったわけだけど、ゆきちゃんって貴族のメイドの仕事をしたことがなかった。どうしようか? 力仕事なら問題なくこなせるのだけど。大家さんにお願いしてお庭に畑を作らせてもらおうか。ゆきちゃんは畑仕事は専門家だし。


 畑の件は大家さんから許可をもらった。交換条件としてゆきちゃんには大家さんではできない力仕事をしてもらうことになった。これで私も安心して大学に行ける。


 大学に初めて通学したら、入口で門番さんに、子どもが来る所ではないと怒られた。わかるよその気持ち。私の見た目は九歳だもの。中身は十九歳だけど。


 門番さんにお話が通っていたら、門番さんは学部長のハンスさんにエマが来たことを伝える段取りになっていた。


 止められたので、門番さんに入学許可証とハンス学部長からの手紙を門番さんに見てもらった。門番さんは入学の係の人に連絡して確認を取っていた。


「エマさん、入学おめでとう」と若い男性がやって来た。


「ありがとうございます、ハンス様に直接学部長室に来るように言われているのですが」


「これは失礼した。私がハンスだ」


 学部長と言うからおじいちゃんだと思い込んでいた。失敗した。


「こちらこそ失礼いたしました。私、エマ・フォン・バイエルンと申します。でもバイエルン家は勘当されましたが」


「では改めまして、私はハンス・フォン・ミューゼルです。よろしくエマさん」


「ハンス学部長、私のことはエマとお呼びください」


「では、エマ、学内を案内するので私について来るように」


 広い。これは移動時間を考えないと大変だと思う。私の場合はヴァッサで移動ができるけど、悪目立ちしそうなので、対策を考えないといけない。姿を消す魔法があったはず。図書館で調べて見よう。


「ここが研究棟でたいていの教授がここで暮らしている、ただし不用意に訪問するのはエマの場合は不可です。九歳の神童をこころよく思っていない教授が少なからずいる。私の許可を取ってから訪問してください」


 九歳児でしかも女の子が医学部生なんだから、相当風当たりが強いだろうなあ。


「エマ、お付きの人はどうした?」


「下宿でお掃除とかしていますけど」


「君は貴族なのだから、必ず一人はお付きを伴ってほしい。雑務はお付きがすることにここではなっている」


「学部長、お付きの雑務と言うのは具体的に言うとなんでしょう?


「講義ノートを取ったり、実験器具の洗浄をしたり、主従一体で医療業務にあたる」


「たとえば人体解剖は誰がするのでしょうか?」


「当然、従者がする。主人は指示をするだけ」


 主人は口だけってこと。医学部に入学したけど、前途多難だ。


「学部長、私はその雑務を含めてやりたいと思っています。供の者は連れては来ますが医術に関することは私がやりとうございます」


「エマの場合、普通にしても嫌がらせがあるから、特例で認めるよ」


「ありがとうございます」


 私は口先だけの医術を学ぶつもりはない、



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