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卒業式のドレス

 扱いが雑じゃないのか? おい、私はとっても頑張ったんだよ。世界を救ったかもしれないのに。でも、優先順位一番は卒業式のドレスを用意しないと。


「みんなさん、教えてください。私の卒業式のドレスなんですけど新調したいので、お勧めのお店があれば教えてください」


「エマ、この街だとドレスを仕立てる店って一件しかないし、入学式も近いからおそらく予約できないと思うよ」とニコラが教えてくれた。


 ヴィクターは適当なのを選んで着たらといつも通り適当。ウエルテルは紳士服ならわかるけどと一応は考えてくれた。マリアは国に戻らないと紹介できないと言う。これは最悪、マリアを無理矢理ヴァッサに乗せて、マリアの国に行かないとダメかもしれない。



「エマさん、バイエルン家を追放されたって噂が流れているけど本当なの?」


「本当よヴィクター、私は現在フス領主にして第一王子様の婚約者に成りました」とドヤ顔をしてみた。みんな、ああスルーですか。


「良かった生活の心配はないんだ」とウエルテルが言う。


「生活の心配はないのって言うよりも、何というかエマ本当なのっていう反応がほしい」


「エマさんのことでいちいち驚いていたら体がもたないよ」ヴィクター、私に喧嘩を売るなら買おうじゃないか!


「エマさん、申し訳ありませんでした。顔が怖いので機嫌を直して、僕がドレスを仕立てるお店に案内するから」


 私はヴィクターと一緒にドレスのお店に来ている。内乱の影響で予約はほとんど入っていない。ただ卒業式まで時間がないので特急料金で通常の三倍の料金になると言われた。


 足元を見られたけど、仕方がない。それでお願いをした。


 ドレスの色は青色がベースになった。肩に乗っている青い小鳥さんが強硬に主張したので。問題になったのは紋章。私はフスの領主なのでフス家の紋章が使えるけど、却下だ。ライオンに蔦が絡まる紋章ってマニアック過ぎる。


「紋章の刺繍はどうしましょうか?」


「薔薇の花で」と言いかけたら「青い小鳥の組み合わせで」と青い小鳥さんが決めた。自己主張の強い小鳥だ。そうだ。名前を付けないといけないかも。


 学校に戻ったらユング君が私を呼びに来た。「校長室まで来てください」って。


「エマ、久しぶり! 会いたかったよう」とミカサが私を抱きしめた。苦しいのでミカサの肩をタップしたら、さらに絞められた。意識が飛ぶ。


 カオリさんが、ミカサを私から剥がしてくれた。カオリさんを私の生命の恩人と言う扱いに変えようと思う。


「ミカサ姫が来賓として卒業式に出席されます。ミカサ姫のご要望でエマが答辞を読むことになりました、ちなみに送辞は不要ということで省略されました」


「ローレンス校長、答辞の原稿はどうしましょう?」


「ウエルテルに書いてもらうと良いと思う」さすがローレンスさん、よく私のことをわかっている。


「エマ、医学部の受験のことだけど合格だから」


「ローレンス校長、私、受験もしてませんし、まだ申請もしてません!」


「今年は大学の受験自体がなくなったので、受験したくても受験できないのだよ」


「特例で各校の学校長推薦で上位十位の生徒は希望する学部に進学することになった」


「浪人してる子にはキツい話だね。これも王家の決定なので逆らえないし文句も言えない」


「それとエマの場合は内々に医学部の学部長から即戦力として期待すると言われている」


 私には基礎医学の知識が欠けているのでそこは教えてほしい。人体解剖は何度かしたので別にしなくても良いけど。


「エマ、ウチの医学部と言うか医科に来ない? 巫女としてウチに頻繁に来ないといけないし」


「ミカサお姉様、私には領主としてのお役目もありまして、ずっとヒノモトにいるわけにもいきません」


 今の私ならヴァッサを使えばヒノモト程度の距離は日帰りの範囲だけど、それを知ったらヒノモトからフス領まで毎日通えって言われるので黙っておいた。


「エマ、領主になったの?」


「はい、領主になった上に第一王子と婚約しました」


「エマが婚約ねえ、そうなんだ」とミカサの顔が狩人の顔に変わったように見えた。第一王子が危ない。


「ミカサお姉様、結婚は六年後ですから全然問題ないです」


「そう六年以内になんとかすれば良いのね」とミカサは微笑んだ。


 第一王子、バルス様の生命はすぐには取られないはず。まあ、ご自身の身はご自身で守ってほしい。

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