大聖女国の女王エマ
私は、今庭師ではなく女王をやっている。もうすぐ医学部の受験申請をしないとだけど、それと王立魔法学校の卒業式もあるのだけれど。私って王立魔法学校中退になったかもなので、受験資格も卒業式もないのかなぁ。
肩に乗ってる青い小鳥さんが「王都に行って国王陛下と交渉すれば良い」と言ってくれたので、私は全身青い精霊の姿で王都に向かった。
門番の兵士さんに国王陛下に会いたいと告げるとポカーンとしていた。肩書きがないと取り次いでもらえないのか。
「大聖女国の女王エマが国王陛下にご挨拶したい」と告げたら一人の兵士が王城に走り込んだ。しばらくすると数百人の騎士と兵士が私を取り囲んだ。戦いに来たのではないのに。
「反乱軍の首謀者が自ら国王陛下の裁きを受けに来たのか」
「バイエルン家を追放されたので仕方なく自立しただけで、王家に歯向かうつもりはありません」
「問答無用、この痴れ者を捕縛せよ!」
魔王すら私を捕まえられないのに無理だよ。ほら誰も手を出してこないでしょう。
偉そうな人の腕を掴んだ。
「国王陛下の所まで案内をお願いします」
「そんなことができるか!」
「私と長く触れているとですね、どんどん寿命が減って行くので早くしたほうが良いですよ」
「そうだったら別の方にお願いするわ」悪役令嬢の本領を発揮してしまった。反省しよう。
偉そうな人はどんどん老いて行く。すると「私が案内するので宰相を離してほしい」と言う人が出てきた。
「第一王子様、この者は危険です。この者は悪魔に違いありません」
「宰相殿、今の王家は悪魔の力も借りたいのはわかっているだろう」
第一王子様でしたか。残念でした私の好きなタイプではなかった。見た目ではなくて雰囲気がもっとフワッとした感じで、父上みたいな人が良い。いかにも優秀ですって感じの方は苦手です。
「私は第一王子のバルスと言う。私の婚約者殿」
「初めまして、大聖女国のエマと申します。婚約者ですか? 私、バイエルン家を追放されましたので、そのお話はなくなったと思います」
「今はそうだが」
「そこが落とし所みたいだな」と青い小鳥さんが囁いた。
王宮内は私が突然やって来たのでけっこう騒がしい。面会予約がどう考えても取れないと思ったので、アポなし突撃をしました。お騒がせして申し訳ありません。
国王陛下はかなりお疲れの様子だ。
「元バイエルン家の二女が予に何のようか? バイエルン家に戻してほしいとの嘆願なら無理だ。バイエルン家当主よりその方を勘当した旨の正式文書が受理された」
「国王陛下、私はただ王立魔法学校の復学を希望するだけでございます」
「その方は混乱しているフス領に勝手に軍を率いて占領し、予の国を奪っておいてどの口がそのような言えるのか」
「フス領の貴族に私は招かれただけでございます」
「それなら、フス領を予に返せ」
「私の復学が叶うのであればお返しいたします」
「良かろう、そんなたの王立魔法学校への復学を許可する」
「それと、第一王子との結婚のことだが」
「私はまだ八歳でございます。婚約ならお受けできるかと思います」
「それで良い、エマ、その方をフス領主に任ずる。励むようにな」
「国王陛下有り難き幸せです、ご命令謹んで拝命いたしました」
国王陛下は急に元気になったように見える。
この国では結婚は十五歳になってからだし、時間は稼げた。やっと魔法学校に戻れる。卒業式に出席できる。受験も王子の婚約者を弾くことはできない。
みんなちゃんと三日でドワーフ王国を出国しただろうか? ともかく学校に戻ろう。
魔法学校に戻るとローレンスさんが出迎えてくれた。
「エマ、バイエルン家から追放されたそうだね。やっと念願が叶っておめでとう」
「世の中そうは上手く行きませんでした。私、フス領主に任命された上に第一王子の婚約者になってしまいました」
「エマの嫌いな貴族社会にドップリじゃないか」
「結婚するまでに世の中は変わると思います。思いたいです」
「みんなは戻って来てますか?」
「全員戻って来ている」
「誰もエマのことは心配していないので安心して良い」
少しは心配してほしい。百パーセントの信頼感なんていらないから。
「エマ、バイエルン家と縁が切れたので今持っているドレスはすべて着ることができない、バイエルン家の紋章があちこちに刺繍されているから」
大変な物入りだ。正装のドレスは最低三着は必要だし、普段に着るドレスも数着は絶対にいる。
「私のドレス職人ってみんなバイエルンの職人さんだった。誰に依頼したら良いのだろう?
「みんな、ただいま帰りました」
「ああ、お帰り、お疲れ様」




