エマ、人外になったので自己嫌悪に陥いる
私は人間だよ。私の力はエミル君やユグドラシル君から預けられたもの。それを返せば絶対に元に戻れる。絶対に元に戻れるはず。
私は精霊なんかに成りたくないよ。グリムリーパーってヤダよ。
「ユグドラシル君いますか? エマです天界から戻って来ました」
「エマ、お疲れ様。天界の人たちはどう言っていたの?」
「閣議をするとか熱核爆のスイッチを押すとかって言っていました。ご自由にって言っておきました」
「エマ、熱核爆のスイッチを押すとどうなるか知っている?」
「知りませんけど、ロクデモナイ事が起こるのはわかります」
「ですがそれを私には止められないですし」
「エマ、熱核爆のスイッチを押すと僕とエミル以外はこの世から消滅したのに、ご自由にって言えるんだ。知らないってことは最強かもしれない」
「肩にとまっている小鳥君はどう思ったのかな?」
「エマは即答でしたから、制止出来ませんでした。まさか知らなかったとは考えてもみなかったです。ゾッとします」
「小鳥君、これからこう言うことが起こると思うから事前の打ち合わせは綿密にお願いします」
「承知しました」
「ユグドラシル君に聞きたいのだけど、天界に行ける能力とか生命と死を司る力っていずれはエミル君やユグドラシル君の元に帰るんだよね?」
「そうだよ、僕たちの権能だから。いつ戻るのかはわからないけど。エマがその力を使わなければ、けっこう早く戻って来ると思うよ」
「私、普通の女の子に戻れるんだよね」
「それは無理だよ、魔王を退治した勇者様だし、エルフたちからは精霊様にされているし」
「有名人にはなっているから、普通の女の子には戻れないよ。人間って忘れやすいけど、魔王退治は吟遊詩人たちが歌っているから、忘れるのは難しいかもね」
「どうして吟遊詩人が見てもいないことを歌えるの?」
「エミルが歌詞と曲を書いてあちこち撒いたから、エミルに会ったら怒った方が良いよ」
エミル君って芸術関係の神様だった。下手をするとお芝居にするかも、絶対に止めないと。
「エマ、もう台本が上がっているからもうじき公演が始まるよ。ホーエル・バッハに急いだ方が良いと思うよ」
「ありがとう。ユグドラシル君、絶対に止めます」もう目立つのって嫌なの!」
死ぬ前の私だったら目立つのは大歓迎だったと思う。今は違う。息苦しい。重い。私と一緒にいれば大丈夫だなんて思わないでほしい。私はそんなに凄くない。出来ないことの方が多いもの。
私の人としての器の大きさって死に戻りする前と死に戻りした後の器の大きさは変わってない。みんな、私の大きくなり過ぎた影を見ているだけ。
そんなことを考えている場合じゃない。お芝居を止めないと。
ヴァッサでホーエル・バッハの都に着いた。すごいめまいがした。あちこちにエマの魔王退治って貼り紙がしてある。脚本、演出、主演、エミル様って何ですかこれは。権力の濫用でしょう。観に行かないと神罰が落ちそうだよ。
領主の屋敷に向かった。エミル君の居場所を尋ねるために。
「バイエルン家のエマ、ご領主様との面会を希望いたしますと門番の人にお願いしたら、紙とペンを持って来て「エマ様、サインをお願いします、出来れば名前入りでモブさんへってお願いします」
理解不能な対応で困惑したけど、書けば取り次いでくれるからと思って書いた。その結果今、屋敷中のみんなさんからサインください攻めにあっている。
「エマ、よく戻った。この色紙にサインを貰いたい」
もう描き慣れたのでサラッと書いてあげた。
「エマ、昨日のエミル様のお芝居は素晴らしかった。もう一日早く戻って来たらエマも観ることが出来たのに」
うう、間に合わなかった。
「エマ、エミル様に再演をお願い出来ないか尋ねてほしい」
「承知しました。エミル様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「それが、教会にも戻っておらず、現在行方不明になっている」
「私が探し出して見せます」
「そうしてくれると有り難い、よろしく頼む」
ふふふ、エミル君の気配を感じる旧魔王城にいる。
「エマ、ちょっと」
「青い小鳥さん、何かしら」
「エマから邪気が漏れてる。エミル様は芸術家だからその魂に火が着くとご自身でも止められない、そこはわかってあげてほしい」




