ドワーフ国国王陛下と謁見
翌日、私は酒精にあてられたようで気分が悪い。ゆきちゃんは今日も元気いっぱいだ。
「バイエルン家のエマ様はいらっしゃいますか」と鉱山局の人がやって来た。
「まさかエマ様ご自身がアダマンタイト鉱石を運んで来られるとは思ってもみませんでした。お許しください。国王陛下よりこの様な宿舎に案内するとはと叱責されました」
「決して、国王陛下の指示では決してございません」
「私たちは鉱石を運んだらすぐに戻るつもりでしたから、鉱山局の方に宿泊の手配までさせてしまい、申し訳ありません」
「国王陛下より、エマ様御一向をすぐに王宮にご案内せよとの指示が出ております。急ではございますが、お支度をお願いいたします」
やめてくれ! 今回もまたドレスを持ってきていないよ。
「申し訳ございません、私、王宮に入れる様なドレスを用意しておりません」
「ご心配なく、すべて鉱山局が責任を持ってご用意させていただきます」
グレイ君は宿舎に戻って来ていなかった。他のみんなにドワーフ国の国王陛下と会うことになったことを伝えた。ニコラが気を失った。
ヴィクターとウエルテルは正装は準備している。ハーベスト准将は礼装の軍服があるので大丈夫だと言う。マリアは正装は持ってきていないのでパニックになっている。ニコラはまだ気を失ったまま。
「鉱山局の人がドレスを用意してくれるらしいから、それを着るしかないので覚悟して」
国王陛下謁見の儀をもたらした張本人のゆきちゃんは「龍殺し」を買って帰るつもりだ。宿舎の調理場の人に尋ねたようだけど、普通の酒屋では売ってないと言われてしょげていた。
「ゆきちゃん、国王陛下との謁見の時の服はどうするの?」
「私はいつもの副官の服で良いかと思ってます」
「ゆきちゃん、あれ軍服ではなくて侍女の服だよ」
「そうなんですか? じゃあいつも通り侍女の服で」
これはダメだ。ゆきちゃんはドレスは着慣れていない。ハーベスト准将の顔を見たらわかってくれたようで「ゆきさんには、申し訳ないが軍団の副官の衣装として、私の大尉の服を着用して欲しい」
「了解です」ゆきちゃんの件は終わった。
問題は未だ意識を失ったままのニコラをどうするのか? 謁見時に倒れられても困る。で、私はここにいないグレイ君の看病をしていることにする事にした。
「ニコラしっかりして、あなたは宿舎でお留守番です」
「エマ様、私も出席します。出席させてください」
「私もヒーラーです。自分の精神をコントロールできないヒーラーに満足な仕事はできません。これは私への試練です、絶対に倒れません、お約束します」
「ニコラ、本当にお願いね。倒れないでね。国王陛下への返答は私がするから」
「エマ様」とニコラは私に抱きついてきた。
鉱山局の人の案内で王宮に入ると私、マリア、ニコラはドレスに着替えた。問題のゆきちゃんは意外に軍服が似合う。男装の麗人みたい。
マリア、ニコラはギリギリセーフだと思う。問題は私だ。サイズが子どもサイズなので問題が多い。優雅さのカケラもなく、とっても可愛い女の子姿。お供の子どもなら問題はないのだけれど、私は立場上軍団長なのでこの服は着られない。
それならいっそのこと、魔王を倒した服装の方がマシだ。私は青い上着に青いズボン、そして青い帽子を持って控室で国王陛下に呼び出されるのを待っていた。
国王陛下の御前に出た。ニコラが既に意識が飛びそうになっていたが、何とか堪えている。
「国王陛下に拝謁出来ましたこと、誠に恭悦至極でございます」
「エマ、なぜドワーフの国にやって来たのか、ただ鉱石を運びに来ただけではないのであろう! エマの従者を牢獄に捕らえてある」
「魔王同様に私を討伐しに来たのか?」
グレイ君、君は何を仕出かしたの?
「私の従者のグレイは好奇心が旺盛で色々調べたがる癖がございます」
「スパイとしての適正があるようだな。グレイなるそちの従者は機密文書が保管されている建物に侵入して逮捕された」
グレイ君、一体何を調べようとしたのだろう。即日処刑されても仕方ないよ。
「国王陛下、おそらくグレイはドワーフ国と天界との関係について調べていたと思います」




