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グレイ君は二重スパイ

「エマの軍は止まりました。旗を持った少年とエミル神そっくりの少年二人がこちらに向かって来ます」


「子どもを使者に立てるとは常識に欠けるバイエルンらしい」


「旗を持っている子どもは当家からバイエルンに忍び込ませた者でグレイです」


「もう一人の子どもはどう見てもエミル神、後光がさしてます」

「あれは幻影か? それとも本物のエミル様か?」


「神殿長、どう見る?」

「エミル様ですね。伝承の通りのお姿です、ご当主様はすぐに沐浴されてエミルをお迎えする準備が必要かと思います」


「当家の危機の際に、ご降臨とは先祖に感謝しないといけないな」



「グレイ、なぜこれまで報告をしなかったのか、言い訳があるなら聞きたい」


「ご当主様、ホーエル・バッハ系の貴族が切り崩しにあっており、誰が味方で誰が寝返ったのかが不明で報告ができませんでした」


「今回、新聖女軍の補給に協力した貴族は寝返った貴族だと見て良いかと思います」


「そうか、それならほぼ全員が寝返った、当家は孤立無援と言うことだ」


「グレイ、その方の隣にいらっしゃる神々しい方はどなたか?」


「ご当主様、名前を言うと天界が天変地異をこの世界にもたらし、生きとし生けるものを滅するので、名前は言えないとの事です。ただし、エマを大聖女にされたのはこのお方でございます」


「エマは、我々と同じ神の庇護下にあると言うことか?」


「はい、その通りでございます」


「ならば、我らとともに王都に向けて進軍するのが良い」


「残念ながらそれはなりません」


「なぜだ?」


「天界がやはり天変地異を起こして人を滅します」


「現在、この方と天界とは不可侵条約を結んでおりますので、この方が地上におられる限り、地上での紛争は天界とこの方との紛争になってしまいます」


「新聖女軍は我らの敵ではないのだな」


「今のところはですが」


「僕の子どもたちを害することを僕が許さないから安心して、君たちのお陰で僕の力は変わらなかったから、感謝している」


 ホーエル家当主は領主の椅子を降りて、エミル様の足元にひざまづき、もったいないお言葉をと言った後は言葉にならず嗚咽おえつしていた。


「ご当主様、エミル教徒であることを公表して今後どうされるのでしょうか?」


「現状は王家も我が家には手が出せない、当家も王家に手が出せない。どちらも動けない」


「バイエルンがどう動くか。王権を簒奪さんだつする好機だと思うが。


「バイエルンはまだそれはしないかと思われます。エリザベートと婚約した第五王子がいる限り王権を簒奪をしなくても、実質的な国王はバイエルン家の当主ですから」


「我々は自立するが、この方の庇護下にある大聖女がいる限り、我々はバイエルン家と敵対関係になるのは望まない」


「バイエルンから極秘裏に共闘関係の申し入れがあれば、ご当主様はどうされますか?」


「もちろん共闘関係はこちらも望むところだ」


 グレイはにっこり笑った。彼の目的はホーエル家とバイエルン家が共闘関係を結べるかどうかを探ること、それがハンニバルからの指令だった。



 エミル教徒だと公表したホーエル・バッハを新聖女軍が討伐するよう王命が下されるが、それはできない。


 新聖女軍は、主力はホーエル・バッハ系の兵士の軍。あくまでも内乱を鎮圧するための義勇軍でしかない。建前上はそう言うことになっている。


 実際はエマの私兵なので、エマが命令すれば、ホーエル・バッハ本家を攻撃はできるけれども。


 エマにはその気はまったくないので、ここで新聖女軍は解散して、兵士が望むのなら分散してバイエルン領を目指す。


 これがホーエル・バッハ家が新聖女軍に抵抗しなかったの時のプランBの内容だ。



 その後バイエルン家はホーエル家と極秘裏に共闘し、ホーエル家が必要な物資はバイエルンが融通する。


 将来バイエルン家と王家が戦争状態に入れば、ホーエル・バッハ家は王家を牽制する。そうした内容の秘密文書の作成をグレイが作って、実質バイエルン家の当主のハンニバルの承認をもらう。それがグレイの受けた命令だった。


「王族も宗教の自由を認めたら、面倒はないのにね」とエミル様は笑った。


「天界の人たちって本当にマメに色々手を打ってるから感心してしまう。人間絶滅計画なんて面倒な計画を実行してるし」


 エミル様がさりげなくもの凄く物騒なことをさらっと言ったので、グレイは、ハンニバル様に報告しておくことにした。


「天界は地上の生きものの生命など、塵芥ちりあくたとしか思ってないですから、人間だけに限定しているのは、ありがたいことなんでしょうなあ」とホーエル・バッハ家当主は豪快に笑った。


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