マスコットガールの悩み
エマの悩みです
今日も学校の図書室で一人静かに読書のはずが両隣に女の子、前にも女の子が三人座ってる。皆さん本は机の上に置いているものの読んでる様子はないよね。この図書室って百人くらいは余裕で入れるし、図書室にいる人って二十人もいないので、空いている席ってたくさんあるのだけれど、皆さん、何をされているのでしょうか? 理解出来ない。はっきり言うと狭いわけでどこかに行ってほしい。
ため息をついて、魔道具回路の設計と言う本を読み続けた。爆破系の魔道具回路は熟知しているけど、生活に役に立つ魔道具の回路は分からない。私の知識って偏っている。着火の魔道回路は分かるけど、一回だけの点火だけに限る。繰り返しの着火と消火の魔道回路はそうかこうなっているのか。メモしておこうと思うとペンが目の前に差し出されていた。「ありがとうございます、お姉様」そして全員が席替えってこれってただ私にペンを渡すだけでずっと座ってたわけ。ちなみこの方たちはエマ親衛隊と言う謎の組織の幹部の皆さんです。そしてエマ親衛隊の皆さんには名前ではなくお姉様と呼ぶことになっている。
私の容姿はごく普通だと思う。髪の色はプラチナブルー、目はオッドアイで右がブルーで左はブラウン。鼻は高くない。口は特に特徴がない。全体を見ると気の強い悪役令嬢って雰囲気、実際に悪役令嬢だったのだけど、そんな私がこんなに可愛いがってもらえるとは思ってもみなかった。とっても戸惑っている。6歳児の子が小さな手で本を読んでる姿はまあ可愛いと私も思うけど、親衛隊が出来るほどの可愛いさは私にはないと思うの。最近なぜか機嫌の良くない、ミカサに尋ねてみようか。体育館を半壊させてまで私のルームメイトになったほどのお姉様だしね。
困ることと言えばそう、私が校内、寮内を歩いていると常に誰かがついて来ていることかなぁ。私もたまには一人になりたいこともあるわけ。
魔道具を自分で作りたい。部屋にはミカサがいるから作れないし、空き部屋なら寮内にいくつかあるので、寮監さんにお願いして、侯爵家のご威光をチラチラさせながら使わせてもらおうと思っていたけど、こう誰かがいつもついて来られると校内も寮内も無理そうなの。ため息が出る。
常に火種を絶やさない様にしている人たちがいることに気付いたの。ローレンスさんの所に行った時のことだけど、火種を貰いに隣の家へ行く人を見た時に閃いたの。着火具はいけるかもって、出来れば携帯出来る着火具があれば炎の魔法が使えない人でも簡単に焚き火が出来る。これは売れる。ただし魔道具のランタンで代用は可能だけど、魔道具のランタンってかなり高い。
魔道具回路はたぶんこの設計で良いはずなんだけれど、試作しないことには、上手く行くかどうかが分からない。作りたいのに作れないのが一番の悩みかな。どこかに私の工房が欲しいな。次ローレンスさんの所に行った時に相談してみよう。でも、街に出られるのは月に一回でローレンスさんの所から迎えの馬車が来ないと出られなかった。街で工房を借りるのは高等部を卒業してからだ。ため息が出た。
「エマ」
「はい、お姉様」
「さっきからやたらため息が多いけどどうしたの」
「実は私、魔道具が作りたいのですけど、部屋では作れないので少し悩んでいます」
「魔道具が作りたいって珍しいわね。私たちは魔法が使えるのに。でも可愛い妹とのことだから、教えてあげても良いよね」
皆さんうなづいてますけど。
「クラブ活動の申請を学校にしたら良い。許可が下りたら、お部屋を貸してもらえるよ」
「クラブ活動ですか」
「私たちもエマ研究部って申請してお部屋を貸してもらったわ、学校には使っていない部屋が幾らでもあるから、魔道具回路研究部って申請すればたぶん許可は下りると思うよ」
「教えていただきありがとうございます。お姉様」
席替えが始まった。そうかこの人たちはエマ親衛隊ではなく、エマ研究部の人たちだったのか。それでずっと後をついて、私を観察してたのか。やっと納得できたよ。
エマ親衛隊ではなくエマ研究部でした
 




