内気な大魔王の娘は勇者の娘とお友達になりたいです!
「パパ、聞いて欲しいの。昨日ね、ソード様に会ったの。そう、勇者の娘で、無口で凛々しくて、すごくクールなのに、自分のことボクって言うとか、可愛いところもあったりして、とってもとっても素敵な人なの。私、絶対お友達になりたいの。だからパパ――死んで?」
十歳にして歴代最高の実力と言われるルーナの魔法の前には、大魔王とはいえ一撃だった。幽霊になった元大魔王は涙目で愛娘に訴えた。
「ひどいよ、ルーナ……」
だがルーナはさらりと無視する。
「これで私が大魔王なの。後はソード様に勇者になってもらえば、2人は運命で引き合わされて戦うの。そして戦いの中で芽生える友情――うん、完璧なの」
後ろで見ていた従者のアンデッド、グリルがおずおずと声をかける。
「あの、何もお父上を殺さなくても、普通にソード様に声をかければ良かったのでは?」
「無理。そんなことしたら恥ずかしくて死んじゃうの――それよりソード様の方はどうだったの? ちゃんと伝説の剣を抜いて勇者になってもらったの?」
「そ、それが、ソード様は勇者ではなく魔法使いになりたいとおっしゃりまして……」
「グリル? 私、そんなこと聞いてないの」
ゆらりと立ち昇った殺気に身の危険を感じた時は、もう遅かった。ヘルファイヤで焼かれ、メテオレインで穴だらけにされ、アシッドスライムで溶かされる。だが、ルーナの有り余る魔力で不死となっているグリルは数秒で生き返るのだ。
そして再びソードの元へ。
しかし、何度頼んでもソードの返事は同じだった。
「ボクは魔法使いになるんだ。そしてソードなんて女の子らしくない名前を付けたバカ親父を見返してやるんだ」
「そこを何とか……」
「やだ」
押し問答していると、背後に気配が。
「グ、リ、ル――まだなの?」
「ヒイイイイッ!」
今度はスーパーコンボだった。うなぎ上りのダメージに叩きのめされ、もはや悲鳴も出ない。
だが、その鮮やかな魔法攻撃に感嘆の声が上がった。
「すごい……」
ソードだった。尊敬の眼差しでルーナを見つめる。
「キミ、良かったらボクに魔法を教えてくれないか」
聖と魔の戦争が遠い昔のものとなった現代。人間と魔族の子供たちが仲良く通うこの聖魔学園で、新しい物語が始まろうとしていた。
お読み頂きありがとうございました。
楽しんで頂けましたでしょうか。
『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』でも「タイトルは面白そう!」のコーナーで毎回投稿してますので、そちらもよろしくしていただけますと幸いです。
ラジオは文化放送にて毎週金曜日23:00から放送中。スマホアプリradikoなら無料で1週間聞き逃し配信してます。YouTubeには過去アーカイブも揃ってます。