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能力者、時々、探偵  作者: 新坂つばめ
5/5

探偵部の4人には、暗い過去があった

んー、納得がいかない。


その夜、俺たちは事件があった三丁目に来ていた。

「あー、ここですか」

山宮は辺りを見渡しながらゆっくりと歩いている。

「いやー、ここで殺人犯なんかでたらひとたまりもないで」

その横を笑いながら歩くひなは、どこか楽しそうだった。

「そういえばなんで夜なんだ?」

俺は問いかける。なんとなくついてきたが、俺が探偵部の教室に入ってから約三時間が経っている。こんな遅くなるなんて知らなかったから妹に怒られた。ま、実際『怒られた』という表現は正しくないかもしれない。なぜなら俺がさっき、遅くなるとメールしたら既読スルーされてしまったから。これはもう終わりですね、はい。

「それは夜に出てくる場合が多いからでござるよ」

その問いに、俺の隣を歩いていた智久が答える。

「そうなのか…てかお前、そんな『ござる』口調だったか?」

教室では普通に喋ってたと思ったけど。

「あー、僕は口調が気分によって変わるんでござるよ。明日は違うかもしれないし同じかもしれない。そんな曖昧な気分によって続いていくんでござるよ」

「そ、そうなのか」

「はいでござる」

山宮もそうだがこいつも中々変な奴だな。あまり関わりたくないタイプ…だが悪い奴ではなさそうだ。

「それにしても、お前ら大丈夫なんか?」

俺や智久はいいとして、女子3人は大丈夫なのか。もう七時を超えてるけど家とか帰らなくていいのか。

「なんやゆうちゃん、怖いんか?」

にやにやしながらひなが俺の顔を見て言う。

「別に怖くねーよ!お前らが家とかに帰らなくてもいいのかって話してんだよ。第一、これから殺人犯に会うんだろ?なんかこう、ほら、恐怖心とかないのか?」

ひなの顔が曇った。なにも喋らなかったが、智久も顔を逸らしていた。

「…家ねぇ。そんなものはここ数年、私たちにはないわ。恐怖心も、そのせいで薄れてるわね」

今まで何も言わなかった香織が、どこか遠くを見るように語った。

「そ、それはどういう…?」

なんかやばいこと聞いちゃったか?俺そんな空気に慣れてないんだけど。

「私たちさ、あんた以外小さい時から一緒でね。簡単に言うと孤児院みたいなとこに保護されてたの。小さい時だから親の顔もはっきり覚えてない、捨てられたんだよ。生まれ持った能力に怯えたんだろうよ。ちなみにあたしの親は「こんな子を生みたかったわけじゃない!」って言ってたそうよ。…ひどい話よね」

他の3人は黙っている。

「だからさ、家はないんだよ。今は学校のあの教室で寝たりしてる。でも結構住みやすいんだよ、あの教室。広いし食には困んないし。あ、食べ物は一応『探偵部』ってことで学校から依頼達成料として貰えるから大丈夫なのよね。泊まることも許されてるし。…だからさ、親に捨てられるって恐怖心より怖いものはないのよ」

「その、なんか…ごめん」

こんな暗い過去があったなんて。俺はどうすることもできずに謝ってしまった。こういう時に何もできないのが俺なんだ。自分に腹が立ってくる。

「あ、ごめんなんか気を使わせて。暗い話しちゃったわ。ひな、盛り上げて」

「そ、そうやでゆうちゃん。気分、盛り上げてこー!」

「僕も参戦でござるー!」

「…」

必死に空気を変えようとひなと智久がわいわいしている。だが俺は、そんなことにも目もくれず、考えていた。「俺はお前らを辺な奴らだと思ってた、悪かった。だからお前らに協力させてほしい。俺も探偵部として、お前らと一緒に活動していく!」

俺にしてはなんか熱いことを言ってしまった。柄でもない、俺らしくない言葉。だが今の俺には、そうすることしか出来なかった。

「ゆうちゃんはもう、うちらの仲間やんか。入部したらもう探偵部の一員やで?」

「そうでござる。実際、辺な奴らですから」

「…」

山宮だけは一番前で顔が見えず、喋らなかった。スタスタと前へ進むばかり。

「…ちょっと待って。ここで止まって」

急に香織が声を上げる。

「ん?どうしたんだ?」

「…いるわ。ここから前方に90メートル先」

俺は何がいるのかすぐには分からなかった。だが、俺以外の3人はそれまでの顔を変え、身構えていた。

「何がいるんだ?…もしかして、殺人犯か!?」

「しっ、声出さんといて」

ひなは俺を静止させる。

「近づいてくる、反応は4つ。普通の人とは違う気配を感じるわ。間違いなく殺人犯よ」

まじか、ついに殺人犯が現れるのか。俺は息を飲んだ。すると前の方から悲鳴が聞こえてきた。

「まずいですね、被害者がでたようです」

それまで喋らなかった山宮が口を開いた。

「後20メートル…。その角から出てくるわ」

どんどん近づいているらしい。

「ど、どうするんだ?」

「今日は逃げます」

「え?」

山宮からそう告げられた。ここまで来たのに?なんのために会いにきたんだよ。

「今日は情報を集めるだけです。なので正体をみたらすぐ逃げます」

「え、戦うとかしないのか?」

てっきり俺は、殺人犯を倒して事件を解決するかと思っていた。

「今日は戦いません。今の段階では情報が少なすぎます。探偵部として情報を集め、しっかり準備してから戦います。それともあなたは今の段階であの殺人犯に勝てるとでも?」

「い、いや勝てないけど…」

「では決まりです。姿をみたらすぐ後ろに逃げますよ」

論破されてしまった。そうだよな、それが正論だ。俺は山宮の指示に従うことにした。

「来ますよ」

俺は身構えた。どんな奴が来るんだろうか、心臓がばくばくしていた。すると、前の角から人影が見えた。その影は、こちらへと向いていた。香織の言うように、確かに4人いた。だが1人と3匹といった方が正しいかもしれない。1人は確かに人だが、後の3匹はそれぞれ、犬、猿、キジの格好をしていた。俺は驚き、立ちすくんでいた。

「何やってるんですか、逃げますよ」

山宮に腕を掴まれ、はっとした。そうだ逃げなければ。その瞬間、桃と書かれた鉢巻をしている奴と目があった。


『鬼…殺す…村人…泣かせるな…』


「やばいでござる!見つかったでござる!」

「まじですか、早く逃げましょう」

俺は山宮に強引に腕を引かれ、そいつらから逃げた。





頑張ります。

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