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能力者、時々、探偵  作者: 新坂つばめ
2/5

妹に嫌われ、隣の子にも嫌われ

暇なんです。

高校に入学して二週間が経ったある日。俺は海斗と一緒に昼飯を食べていた。

「お、雄也んとこ手作り弁当かぁー。いいなー、俺なんか作ってもらえねーよ」

そう言って海斗はコンビニの袋から鮭おにぎりを取り出した。それを勢いよく頬張る。

「親、忙しいのか?」

「いや、俺ん家両親共働きでさー。じぃちゃんとばぁちゃんと一緒に暮らしてるんだけど、ばぁちゃん入院しちゃって弁当作れねぇんだ」

「じぃちゃんは?」

「じぃちゃんなんかの飯食ったら俺も入院だわ!」

海斗はうえーと吐く動作をする。

「ところでお前、その弁当誰に作ってもらってんだ?」

「妹だけど」

「い、妹!?」

急に海斗は立ち上がった。

「い、今、妹って言ったか!?」

「言ったけど」

海斗はかぁーと手を額につける。

「お前、アニメの主人公かよ…。前世で何やったらそんなんなるんだよ!」

海斗は喜怒哀楽がめちゃめちゃになって、ついには椅子の上に正座した。

「ではその弁当、見させていただく」

海斗は俺の前から弁当を奪い、その蓋を開けようとした。

「え、ちょっと待て……!」

俺が止める隙もなく海斗は蓋を開けた。

「おっ、お前、オムライスに字書いてんじゃね……」

そこまで叫び、海斗は口を閉ざした。そりゃそうだろう。そこには確かにオムライスの上に文字が書いてあった。人から見れば最高だろ!ってなるとこだけど、そこにはこう書かれていた。


『しね』


「……」

「……」

「なんか…ごめん」

「同情すんな、ばか!」

入学式以来、こんな感じだ。弁当を作ってくれるのはありがたいが、毎日こんなでは気がもたない。オムライスだけじゃない、どの食べ物でも最後にケチャップで『しね』と書かれるんだ。


「お兄ちゃん、今日も弁当作ったよ」

「お、おう。ありがとう…」

俺は渡された弁当をつかむが、明菜は離さない。

「ど、どうした妹よ。早く渡してくれないか…」

明菜はニコニコとするばかりで離さない。すごい握力だ、こんなん女の子の力じゃない。

「お兄ちゃんケチャップ大好きだもんね。今日も可愛い『クロウト』から愛のメッセージ書いといたから、しっっっかりと味わってね?」

そう言い、今度は力強く押し返される。俺は尻もちをついた。まだ『クロウト』のことを根にもっているらしい。

「お、おい。もうクロウトのことは謝るから、悪かったって。ほ、ほら今度お前の好きなモンブラン、買ってきてやるから。き、機嫌直して…」

明菜の目付きが変わった。

「早く行け、このくそ兄がっ!!」

俺は外に蹴り出された。



「そ、そんなことがあったのか…それはお前が悪いぞ」

「うん、俺は妹という存在が消えてしまったらしい」

「ご愁傷様」

こんな話をしながら海斗と飯を食べていると、多くの視線を感じる。

「お前、今日も見られてるな」

「そうだな」

入学して二週間が経ったのにも関わらず、まだSランクとして俺を見てざわざわしている。

「いい加減飽きねーのかなー?」

海斗も最初は驚いていた。俺がSランクだと伝えると飛び上がる様に驚いたが、それでも海斗は、

「Sランクだからって雄也は俺の最初の友達だ!」

なんて言ってくれた。もうなんていい奴なんだ。こいつとは一生友達、いや親友でいたい。

「……」

俺に寄せる視線のうち、一際強い視線があった。

「おい、またお前の隣の席の子、じっとお前見てるぞ」

「うん…」

そう、俺の隣の席に座って一人で弁当を食べている女の子。その子の視線がダントツで一番強かった。顔に表情は無く、感情もゼロであるかの様に俺をずっと見ている。

「お前、あの子になんかしたのか?…あっ!中学一緒とか?」

海斗は俺の耳元でささやいた。

「いやちげーよ。同じ中学じゃねーし、第一まだ入学して二週間だぞ、なんも悪いことしてねーっての」

あんな子を俺は中学校で見たことない。俺もちょっと前に卒業アルバム調べたし。調べてもこの子はいなかった。なら尚更なんで見てるんだよ、というか入学から多分見られてたよね?もう何したんだよ俺が。入学して早々に女子に嫌われるとか終わったわ。



「清少納言が書いたのが……」

昼休みが終わった後、国語の授業が始まった。前の席では海斗が早々に居眠りをしている。

「も、もう食べられないよ…むにゃむにゃ…」

どうやら夢の中でも食べているらしい。さっき食ったばっかだろ。

『コツコツ』

海斗の寝姿を見ていると、俺の机から音がした。なにかと思い、音のする方を見ると、隣の女の子がこちらを見ていた。どうやら俺を呼んでいるみたいだ。

「ど、どうしたの…?」

俺は恐る恐る聞いた。ついに何かキツイことを言われる、そう思い身構えた。だが予想とは裏腹に、彼女は自分のノートを突き出した。

「…?」

そこには可愛らしい丸文字で、こう書かれていた。


『放課後、この教室に残って』


「放課後に…待ってればいいの…?」

彼女はうなずき、すぐ黒板の方へ体を向ける。そして何事もなかったかの様に授業をまた、受け始めた。



明日も書くです。

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