第94話 宝間近 立ちはだかるのは
■隆臣
十六夜妹は1年10組の床のタイルの謎に関わるものをこの倉庫内で発見していたらしい。
そこに行ってみると、正方形の小さなタイルが壁に24✕24ではめ込まれていて、その中のいくつかは引っ込んでいた。
「これはきっと、高等部1年10組の床のタイルとリンクさせるんですね」
と言って、凛は壁の正方形のタイルを指で押し込んだ。もう一度押すと元に戻るようだ。
すると亀有さんは、
「よし、じゃあここに残るメンバーと10組に残るメンバーを決めよう」
と提案してきた。
俺と凛が10組に戻ることになった。残りのメンバーは部室棟地下2
階の倉庫に待機だ。
「横の列を数字、縦の列をローマ字にしてへこんでるマスの座標を伝えろって言ってたよな」
「はい。じゃあわたしが言うので、隆臣はそれをLINEで打ってください」
「おっけー」
俺が返事すると、凛は膝に手をつい床を覗いた。
その体勢かわいい! スパッツだからこそより映える! えも言われぬ良さがスパッツにはある!
俺は元々ブルマ派だった。
しかし、某迷い猫オーバーランのブルマスパッツ戦争の梅ノ森千世様のスパッツ姿に感銘を受け、ブルマ派からブルッツ派でもなくスパッツ派に移行したのだ。
「じゃあまずは1列目からいきますね……」
凛は横歩きで1列目のタイルを見ていき、へこんでいる箇所の座標を教えてくれる。
俺はそれをLINEに打ち込み、一列が終わるごとに亀有さんに送信するだけだ。
13列目以降は役割を交代して、時間はかかったものの、なんとか全てのへこんだタイルの座標を倉庫に残るメンバーに伝えることができた。
576個あるタイルのうち、へこんだタイルは140個あった。
へこんでるっていってもほんの1、2ミリだから、ほんとに大変だった。
今は倉庫チームが頑張って座標を入力してくれている。何か変化が起こるかもしれないので、俺たちはイスに座ってもうしばらくここで待機する。
「もう入力終わったってよ。何か変ったか?」
「床のタイルが全部へっこみました。きっとまだ何かあるはずです。探してみましょう」
「おう」
しばらく10組内を再探索していると、
「あれ? なんか光ってませんか?」
凛は教室右前のすみっこらへんを指さして言った。
近づいて見てみると、たしかに何かがある。
「なんだろ」
と言って俺は手を伸ばすと、
「あっ」
凛と手がぶつかった。
そしたら凛の顔が一気に赤くなって、頭から蒸気が立ち昇った。
「大丈夫か凛」
「は、はひっ! だいぢょうぶれすっ!」
なんか呂律が回ってない感じたな。熱でもあるのか? 鼓動も聞こえるぞ? 本当に大丈夫なのか?
凛のおでこに手を当てる。するとますます顔が赤くなって、
「熱っ! 凛、熱があるぞ!」
「ち、ちがいますっ! 熱じゃなくて、これは……これはっ! (隆臣に触れられたから……)」
「ん? とにかく、保健室に行こう」
俺は凛をお姫さまだっこしてやる。相変わらず軽いな。片腕だけでも持てるぞ。
すると凛は白銀のツインテールで赤くなった顔を隠して、
「保健室行かないです」
と。
「え?」
「違うんですっ! 熱じゃないんですっ! わたし……隆臣にふれられただけで胸がどきどきってなって、顔が熱くなって、目が回っちゃうんですっ!」
思い切ったように凛が言った。息を切らしている。
俺は凛をおろして、頭をなでなでして、
「よくわからないけど、なんかごめんな」
「ぅ〜」
凛は涙目で小さくうなった。かわいい。ぎゅーってしたい!
そんなわけで、俺たちはすみっこにあった鍵を拾い、亀有さんから戻って来いとLINEが来たので、倉庫に帰還した。
すると倉庫の方では、576枚のの小さなタイルが敷き詰められていた壁が横にスライドし、その奥には道が続いていた。
「まるでフリホラよね」
と、ジョーカー。たしかにこれはフリーホラーゲーム感がすごいな。
「行こう」
俺たちは亀有さんに続いて薄暗い廊下を進んでいく。
すると正面に鉄製のドアが現れた。
ドアノブをひねってみるが、どうやら鍵がかかっているようだ。なので俺は先ほど入手した鍵を使って扉を開け、中に入った。
するとそこには、
「おめでとう。よく来たな」
尚子率いる高等部生徒会の面々がいた。
To be continued!⇒
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