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第93話 もっと先の世界

■隆臣


「ヤバい! こじ開けられちまうッ!」


 亀有さんは力んだ顔で言う。


「罰則覚悟で魔法使っちゃう?」


 そう尋ねてきたジョーカーに、


「本当にヤバくなったら使おう。今はまだ俺たちで何とかする。凛、ジョーカー、七海、四谷! 何か扉を抑えられるものを探してきてくれ! 急いで!」


 と、俺は答えた。


「わかったわ!」

「はいっ!」

「お任せください!」

「任せて」


 4人は元気よく返事して倉庫内に散っていく。


「ここは俺たちで持ちこたえるぞッ!」


 亀有さん、亮二、篝、仙人に呼びかけ、俺たちは懸命に引き戸を抑える。


「隆臣! これ使える?」


 凛が角材の棒を2本持ってきてくれた。


「ここに設置してくれ!」


「はいっ!」


 凛は2本の角材をつっかえ棒のように設置し、扉が開かないようにしてくれる。


「これで開かないだろう」


 と思っていた俺が馬鹿だった。


 ――ドゴン! ドガン! バゴン!


「おいおい嘘だよなァ?」


 篝は信じられないという顔で後ずさった。ヤツらが引き戸を蹴り始めたぞ。

 そして――


「ドアから離れろッ!」


 ――バターンッ!


 ドアが外れた。

 亀有さんが叫んでくれたおかげで、なんとか全員、外れたドアに押しつぶされることはなかった。


「デゥフフフフ! 追い詰めたデゥフ! ヤツらを取り押さえろ! そして板橋様をお呼びするデゥフ!」


 Tシャツに大きくTと書かれたロリコンが叫んだ。

 ヤバいぞ……絶体絶命すぎる。


「隆臣……」


 ジョーカーが裾をクイクイと引っ張ってきた。


「ああ、だがまだだ。もっと引きつけろ」


「うん、わかったわ」


 ジョーカーは指輪の小刀で親指を小さく切って血を出し、いつでも魔法が使えるようスタンバっている。

 何人かのロリコンがゆっくりと近づいてくる。


「ジョーカー! 今だ! 時を止め……」


「まてぇぇぇえええええい!」


 突然誰かの叫び声が聞こえてきた。爺さん目白かと思ったが、もっと声が若い。

 ロリコンたちも振り返る


「お前は……元ガチロリコンの矢田! どうしてこんなところにいるデゥフ! お前はロリコンをやめたはずデゥフ!」


 Tのロリコンが言う。


「俺は真髄にたどり着いただけさ。ロリコンはやめていない」


「なにっ!?」


「正しきロリコンとして、誤ったロリコンを正しに来たのだよ」


 矢田とかいうやつの声はどこか神がかっているように感じる。

 こいつは一体何者なんだ? ロリコンと自称していたが、他のロリコンとは雰囲気がまるで違う。


「お前、何を言って――」


「――ロリの真髄が知りたいか?」


「え?」


「俺に着いてこい。ロリの真髄を教えてやる」


「ロリの真髄……それは本当か?」


「俺と共にロリコンとしての正しき道を歩むのならば、俺がロリの真髄に到達させてやる」


 ようわからんが、元四皇ガチロリコンの矢田がガチロリコンズを説得しているぞ。


「騙されるなンゴ! こいつはもうロリコンじゃねーンゴッ!」


「いいや」


 首を振って矢田はスマホを取り出して操作し、画像フォルダをロリコンたち披露し始めた。


「こいつ本当にまだロリコン……グヘ」


 すると、


「教えてくれ! ロリの真髄を教えてくれプニ!」


「拙者にもモニュ!」


「オデもオデも!」


 何人かのロリコンが矢田に駆け寄って行った。


「騙されるなグヘ! 我々が正義! こいつが悪グヘ!」


「教えてくれデゥフ!」


「T高田! お前まで……ッ!」


「L近藤、俺は行くよ」


 このグループのリーダーらしきT高田というロリコンも、どうやら矢田に引き抜かれた。

 そしてそんなところにガチロリコン板橋が現れる。


「T高田……お前ッ! 裏切るのかッデュフ!」


 ガチロリコン板橋の顔には包帯が巻かれている。きのうゲイーズ青戸にぶん殴られたらしいからな。


「板橋様、今までありがとうございました。ワタクシメはもっと先の世界に行って参ります」


「そうか……」


 板橋はそう言って踵を返した。

 ん? なんだこの状況。ようわからんが、板橋派のロリコンが引き返して行くぞ?

 矢田は俺たちの方を向き、やさしくほほえんで去って行った。矢田派に寝返ったロリコンたちも矢田の後に続く。

 ロリコンのほほえみなのに、なぜか気持ち悪さを感じなかった。こいつは本当に何者なんだ?


「ふっ」


 この笑い声は……、


『爺さん目白!』


「おもしろいものを見せてもらったわい」


「お師匠様! どうして助けてくれなかったんですかぁ!?」


 十六夜姉が尋ねる。


「矢田の小僧がわしを制したのさ。『ここは私に任せてください』っての。元ガチロリコンの小僧に任せる気はなかったが、どれほど更生したのか見ておきたかったしの、任せてやったわい」


 すると七海&四谷は涙目で、


「お師匠様のバカっ!」

「怖かったのですっ!」

 と。


「すまんすまん。白くまアイス買ってあげるから泣くな」


 爺さん目白のその言葉で、2人はすぐに笑顔に戻った。

 凛とジョーカーもほっとしたようで、2人で仲良く手を繋いでいる。ほんとに双子みたいだ。かわいいね。



 To be continued!⇒

ご閲覧ありがとうございます!

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