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第90話 暗号を解け!

■凛


 食堂のおばちゃんに無理を言ってライスの食券をゴミ箱から取り出してもらった。裏には番人さんが言ってた通り、黒いペンで矢印が書かれている。

 受け取り口に落ちてきた方向を考えると、この食券の矢印は部室棟の方を指し示していることがわかる。

 矢印にしたがって部室棟を真っ直ぐ進むと、廊下の突き当たりにあるパソコン部の部室前までやってきた。


「とりあえず入ってみるか」


 と言って蘭さんはドアを開けようとしたが、


「ちっ! 鍵がかかってやがる」


 どうやら施錠されていたようだ。これじゃあ中に入れないよぉ、と思ったのは一瞬だけ。


「きっとこの鍵ですわ」


 と言って、七海ちゃんはコーナーキューブがついた鍵をドアノブにさし、右に90度ひねる。

 すると、


 ――ガチャ


 解錠された。

 この学園にもまだ普通の鍵を使ってるところがあるんだね。

 てっきり全部カードキー式かと思ってた。だって初等部と中等部は全部カードキー式だから。

 高等部の校舎は前身の東京魔法学校の頃からのもので、少し古いからかな? たしか、土地を買って中等部と初等部の校舎を建てたとか聞いたことがある。

 まあそんなことは置いといて、わたしたち9人はパソコン部室に入った。




「これは……暗号か?」


 蘭さんがそう言って仰ぎ見るのは、天井に吊るされた「〇―〇〇〇 〇〇〇― ――〇―〇 〇〇 ―― 〇〇―」と書かれたA4版の紙である。


「〇と―のところには同じ文字が入るんじゃあ……いや違うか」


 自己完結する仙人さん。


「七海と四谷はどう思う?」


 蘭さんは2人に意見を求める。


「ん〜、さっぱりですわ」


「……わからない」


 どうやら2人もお手上げみたい。たしかにこれはイミフ過ぎる。



 しばらく各々で考えていると、上の階から軽音部の練習音が聞こえてきた。きっと大会が近いから昼練をしているのだろう。体育祭期間中なのにすごいと思う。


 ――タンタンタンタン! チャンチャンチャン! ドンドコドン!


 ドラムの音がわたしたちの鼓膜を細かく揺らす。それに合わせて蘭さんは人さし指をテーブルに打ち、リズムを取り始めた。

 すると、


「あーっ! まさかっ!」


 わたしは突拍子もなく立ち上がり、大声を上げてしまった。


「ッ! 急にびっくりするじゃないか! 叫ぶなら先にそう言ってくれ!」


 無茶なことを言う蘭さんに、


「ご、ごめんなさい」


 わたしは戸惑いつつも頭を下げて謝った。

 

「それで何がわかったんだ?」


 亮二さんの問いかけにわたしは頷いてから、


「トンツートントントン、トントントンツー、ツーツートンツートン、トントン、ツーツー、トントンツー。これはモールス信号ですっ!」


 わたしはこの暗号の正体をみなさんに伝える。


「おおー! すげーな」


「お前は天才か!?」


「初等部生なのによくそんなこと知ってるな」


「すばらしい!」


 京さん、蘭さん、杉野さん、仙人さんはわたしを褒めたたえてくれた。そんなに褒められたらうれしすぎますっ!

 蘭さんはスマホを取り出して、モールス信号について検索した。


「ええっと、これは……『お』で、これが『く』。これは『し』で〇〇は濁点だから『じ』。『よ』で……最後は『う』だ。つまり……」


『屋上!』




 わたしたちはエレベーターで屋上まで移動した。

 屋上は普段から立ち入り禁止ではないので、自由に出入りすることができる。

 ソーラー発電機や風力発電機がたくさん並んでいるのは、この学園の電力の1割を自家発電でまかなっているからだ。

 全面芝生で、木まで生えていて、割と立派な屋上庭園となっている。一匹の小さなカラスがいるだけで、他には一切何もなかった。


「何もねーじゃねーか!」


「まさかニセのヒントだったってのか?」


「残念ですわね……」


 京さん、杉野さん、七海ちゃんはそれぞれそう言う。


「そんなこと言わないでちゃんと探すわよ。何もないってことはないはず。花壇の中とか、木に何か引っかかってるかもしれないわ」


 そう言ってジョーカーは花壇の方に歩いていった。

 すると、


「おー、タカオミ! Ciaoチャオなのだ!」


 突然現れた黒ずくめのちっちゃな女の子が、そんなことを言って隆臣に抱きついた。


「ラ、ラナ!?」


「そうなのだ!」


 誰、この女……?


「た〜か〜お〜みぃ〜っ! 誰ですかその女のこっ! わたしに内緒で知らない女の子と仲良くなるなんて! ひどいですっ!」


「京、友達やめるってよ」


「お前がロリコンなのは知っていたが、まさかそこまでとは思わなかった」


「通報していいか?」


ロリコン擁護協会ガチロリコンズ入会おめでとう! 四皇の右腕レベルだぞ」


 わたしは怒っている。とっても怒っているっ!

 京さんも杉野さんも蘭さんも仙人さんもそれぞれそう言って怒りをあらわにしている。

 七海ちゃんと四谷ちゃんは汚物でも見るような目で隆臣を睨みつけている。

 亮二さん同様、隆臣がロリコンなのは重々承知していたけど、隆臣はわたしを1番好きじゃないとダメなんだ!

 他の女とベタベタすることは、神が許してもわたしは絶対に許さないっ!

 今すぐ隆臣を魅惑するこの女を引き剥がさないと!

 わたしは女の子を引っ張る。


「わわわ! 引っ張るなっ!」


 よしっ! 引き剥がした! でもどういうこと? 手が黒い翼に変化して羽ばたいている。


「何をする!」


「それはこっちのセリフですっ! 隆臣に無許可でくっつかないでくださいっ!」


「何だその許可! てかお前は誰だ!」


「わたしは三鷹凛です。あなたこそ誰ですか!」


「ほほう。お前がミタカリンか。ふーん、思った以上のガキだな。横のお前に似てるのが、あの元黒の魔女シュヴァルツへクセのリンカ・フォン・シュヴァルツブルク=ルードシュタットか」


「わたしのことを知ってるね」


 と、ジョーカー。


「お前のことを知らない者なんていないだろ。なんせ禁忌を2つも破った魔女なんだからな」


「あら、色々知ってるのね。うれしいわ」


「ほめてはないからな」


 時間を人の手で操るという禁忌と、吸血鬼の子どもを産むという禁忌。その2つの禁忌を破ったと、ジョーカーはこの前語ってくれた。生前のジョーカーってすっごくおてんばだったみたい。


「あの……わたしはガキじゃありません! 9歳ですから!」


「9歳はガキガキだろ!」


「9歳はお姉さんです!」


「ガキガキのガキだ!」


 わたしと女の子が言い合っていると、


「すまんな凛。こいつはナディアの使い魔のラナ。カラスだ」


 隆臣がそんなことを言ってきた。


「カラス? 女の子じゃないですか! バレバレの嘘つかないでください!」


 わたしは隆臣のほっぺたをつねって問いただす。


「らなはへんひぇができりゅんらよ(ラナは変化へんげができるんだよ)!」


変化へんげ?」


 たしかに腕がカラスみたいな翼になってる。まさかほんとうに変化へんげができるの?


「ラナちゃんはほんとうにカラスなんですか?」


「われはカラスだ! ほら」


 ラナちゃんがそう言うと、まばゆい光がまたたいてラナちゃんが消え、代わりに小さなカラスが目の前にいた。


「ほんとにカラスだった」


 ラナちゃんは人間の姿に変化へんげし、


「バーカ!」


 と、いきなり罵ってきた。



 To be continued!⇒

ご閲覧ありがとうございます!

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