第88話 開催! ゲリライベント
ごめんなさいでした!
■凛
――ピーンポーンパーンポーン
『オレの財宝か? 欲しけりゃあくれてやる。探せッ! この世の全てをそこに置いてきたッ!』
体育祭3日目の朝、海賊王が死際に放ち、男たちを海に駆り立てたようなセリフが、突然学園中に放送された。
しかしその声は渋いおじさんの声ではなく、
『てなわけで! 本日午前9時より、体育祭と平行して我々実行委員主催の宝探しイベントを開始します。学園内に隠されたお宝を探してください! 財宝を見つけたチームには、お宝の他に3000ポイントを与えます!』
大会実行委員長の桜田樹さんのやさしい声だ。
これは毎年恒例のゲリライベントで、体育祭か学園祭のどちらかで行われる。
とはいっても毎年交互なので、今年は体育祭で行われることはみんな知っていたが。今年は隆臣と一緒に参加するんだ〜っ! 楽しみっ!
『午前9時です。これより宝探しゲームを開始します』
「よーし! それじゃあ学園のお宝を探しに行くぞー!」
『おー!』
わたしたちは円陣を組んで、蘭さんの掛け声に続いた。
ちなみに今年のメンバーは、わたし、ジョーカー、七海ちゃん、四谷ちゃん、隆臣、蘭さん、学食の仙人さん、杉野亮二さん、京篝さんの9人だ。
蘭さんは理事長さんの娘さんだし、杉野さんと京さんはMMAだからまったく知らない人ってわけではないんだよね。
わたしたちは手分けして宝の手がかりを探すことにした。
あ、言い忘れてたけど、きのうはガチロリコンズに襲われたけど、ちゃんと白組に変更できたよ!
話を戻して、まずは高等部の校舎内から探索を開始します。
わたし、ジョーカー、隆臣は教室棟3階を、七海ちゃん、四谷ちゃん、蘭さんは教室棟1階を、杉野さん、京さん、学食の仙人さんは教室棟2階を担当することになった。
3階は高等部1年生の教室が並んでいて、このゲリライベントに参加している人達も何人か見受けられた。
一学年で10クラスあるので、更に手分けして一つ一つのクラスを探索することなった。
わたしは8組から10組までの担当なので、まずは8組の全ての机の中や棚、ロッカーの中や掃除箱の中をくまなく探した。でもまったく手がかりらしきものは見つからない。
「もう誰かに見つけられちゃったのかな……」
財宝へ到達する手段は1つだけではない。例年でいえば5つくらいのルートがあって、そのうちの一つ一つがしっかり財宝につながっている。
ここはもう漁られたのかな? などと思いつつ、わたしは9組に移動した。
「ないよぉ。ま、こんな簡単に見つけられるわけないよね」
ちなみに去年のお宝の在り処は校長先生のカツラの中だった。手がかりも非常に見つけにくかったし、解読も容易ではなかった。
きっと今回もすごく難しいのだろう。わたしは1年10組の教室に入ったが、やはりこれと言って何もなかった。
しかし、
「あれ? なんだろこのへこみ」
わたしあることに気づいた。いくつかのタイルが1ミリくらいへこんでいるのだ。
わたしみたいに一つ一つの机の中を調べるためにしゃがみこまないと見落とすレベルのものだ。
しかもへこみは1箇所だけではない。あちらにもこちらにも、いくつもある。
「これは一体……」
9組と8組の教室も注意して確認してみたが、やはり10組だけにタイルのへこみが見られた。
たまたまかもしれないので、わたしは隆臣とジョーカーに、「床のタイルが凹んでないかも確かめてください」とLINEを送った。
10組にやってきたジョーカーと隆臣が報告をしてくれるが、これと言って手掛かりになりそうな情報はなかったし、タイルもへこんではいなかったようだ。
「じゃあ最後に、わたしから報告しますね。実はこの教室のいくつかのタイル、へこんでいるんです。例えばジョーカーの足下とか」
わたしの言葉に、隆臣とジョーカーは足下のタイルを見つめる。
「あ、ほんとだ」
と、ジョーカー。
「タイルがへこむことは珍しくありませんが、へこんでいるタイルの配置がとても作為的だと思うんです」
「これは宝の手がかりかもしれない! よし! 手分けして教室内を探索しよう!」
隆臣の提案で、わたしたちは3人で10組内をすみずみまで探索した。
が……、
『何もわからない!』
しばらく10組内を見て回ったが、タイルのへこみに関することは一切わからなかった。
「探索ゲーでは欲しいヒントは別の場所隠されているのが基本よ。このへこみに関するヒントもどこか別の場所に隠されているはずよ。一旦みんなと合流して報告会をしましょ」
と、フリホラ大好きジョーカーが言う。そんなわけで、教室棟2階にみんなが集まり、報告会を行った。
しかし、これといって手がかりになりそうな情報はなかった。
なので、1年10組のタイルのへこみの手がかりを得るためにわたしたちは高等部特別教室棟に移動した。
To be continued!⇒
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