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第83話 七海ちゃん強し!

きのうはすみませんでした

■凛


 第六体育館にて、隆臣とそのスクワッドメンバーに出会った。どうやらさっきまでチャンバラをしていたらしい。

 隆臣たちは休憩がてら、わたしたちの試合を観戦してくれるんだって。

 隆臣に見てもらえるのは嬉しいけど、緊張して動けなくなりそう……。

 でも優勝したいな。たくさん褒めてもらいたいっ! てなわけで頑張ろうっ!




 わたしの最初の対戦相手は、太っちょな初等部の男の子。

 両手に紙の剣を握っている。

 わたしは身体能力には少し自信がある。ごめんだけどフルボッコにさせていただくよっ!

 そもそも剣なんて1本あれば十分なんだよ。1本もまともに扱えないのに、2本持つなんて無意味だよね。

 そんなわけで、わたしVSぽっちゃりくん。


「やぁああああ!」


 ぽっちゃりくんが両方の剣で切りかかってきた。遅い。あくびが出ちゃうくらい遅いよ。

 それに狙いがバレバレだよ。両肩の紙風船を狙っている。

 わたしはひょいと攻撃を躱し、ぽっちゃりくんの頭の上の紙風船を破壊する。

 ぽっちゃりくんは勢い余ってつんのめった。

 わたしはその隙をついて、腰の紙風船を突いて割り、右肩と左ふくらはぎの紙風船も破壊する。

 ぽっちゃりくんの振り返りざまに左肩と右ふくらはぎの紙風船も破壊。

 あとは左右の太ももと背中のフィニッシュ紙風船だけだね。余裕余裕っ!

 またぽっちゃりくんが切りかかってきた。さっきとまったく同じだ。成長しないなぁ。

 身を翻して攻撃を避け、背後に回り込んで両太ももと背中の紙風船を割る。ゲームセットっ!

 やったー勝った! うれしいな!

 隆臣のところに行くと、隆臣は、


「よくやったな、凛。かっこよかったぞ」


 と言って頭をなでなでしてくれた。

 隆臣のなでなでは気持ちよくて落ち着く。ふにぁ〜、もっとなでて欲しいなぁ。

 でも隆臣はジョーカーにもなでなでしないといけないから、なでなで時間はジョーカーと半分こ。だけど次も勝てばまたなでなでしてもらえるから、次もがんばろうっ!




 一試合遅れて行われた七海ちゃんと四谷ちゃんの試合はどちらも不思議すぎた。

 まずは七海ちゃんの試合を解説するね。相手は体育が得意そうな男の子で、三刀流だった。

 左右の手に刀を握り、もう1本の刀を口に咥えているのだ。そう、ワンピースのゾロみたいに!

 そして七海ちゃんが持っているものも衝撃的だった。紙製の小さいナイフなのだ。


「おい! 何のつもりだそりゃあ!?」


「わたくしはウサギを狩るのに全力を出すバカなケダモノじゃありませんことよ? あいにくこれ以下の武器はありませんの」


 七海ちゃんは小さな紙ナイフを男の子に見せつけ、


「井の中の肥えしかわずよ、世の広さをしるがいい」


 七海ちゃんは七海ちゃんの声でそう続けた。


「鬼……斬りッ!」


 男の子は3本の刀で七海ちゃんに斬りかかる。しかし七海ちゃんは、小さなナイフだけでそれを受け止める。


「(動かねぇ! 何をしやがったんだ。見切ったやつはいねぇこの技を! こんな……バカなッ! そんなわけねぇ! いくらなんでもこんなに遠いわけねぇ!)」


 男の子は額に汗を垂らし、ぶつぶつとつぶやき始めた。


「世界がこんなに遠いはずはねぇ!」


 男の子は叫んで七海ちゃんに何度も斬りかかる。

 七海ちゃんは何度でもナイフだけで男の子の猛攻を受け止め、そしては弾き飛ばした。


「(この距離はねぇだろ! この遠さはねぇだろ! こんなおもちゃにあしらわれるために、俺は今日まで! 剣を振ってきたわけじゃないッ!)」


「なんと凶暴な剣か」


「(俺は勝つためにッ!)」


「何を背負う? 強さの果てに何を望む。弱き者よ」


 七海ちゃんは静かに尋ねた。

 男の子は一旦距離を取り、


「虎……狩りッ!」


 再び七海ちゃんに斬りかかった。七海ちゃんは避けるでもガードするでもなく、男の子の胸に紙のナイフを当てた。

 胸には紙風船はない。しかしそこにナイフをかざす余裕があるということは、つまり七海ちゃんは勝利宣言をしたようなものだ。


「小僧! 名乗ってみろ!」


 七海ちゃんに対して、男の子は3本の刀を構え直し、


中野なかの……良介りょうすけッ!」


 と大声で名乗った。


「覚えておく。久しく見ぬ強き者よ。そして、剣士の礼儀を持って、紙剣しけん界最強のこの黒刀で沈めてやる」


 七海ちゃんは背負っていた大きな黒い紙の剣を抜き出す。七海ちゃんと男の子はしばらくの間睨み合いを続ける。


「散れ」


 七海ちゃんが初めて自分から斬りかかった。男の子は両手の刀をぶんぶん回し、


「三刀流奥義ッ! 三千世界ッ!」


 これが男の子の必殺技なのだろう。今までとは全然雰囲気が違う。

 七海ちゃんは一瞬目を見開いた。

 七海ちゃんと男の子がすれ違う。

 男の子の両手に握った紙の刀が砕き折れた。

 しかし男の子は七海ちゃんに正面を向け、大の字になる。


「何を?」


「背中の傷は、剣士の恥だ」


「見事っ!」


 七海ちゃんはそう言って、一瞬で男の子の紙風船をすべて破壊し、


「生き急ぐな。若き力よ」


 と。

 なんかこのシーン見たことあるなぁ……。



 To be continued!⇒

ご閲覧ありがとうございます!

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