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第73話 白熱? パン食い競走!

■凛


 わたしたちは一斉にスタートを切った。

 スタートダッシュは成功。

 でもやっぱり高等部のお兄さんお姉さんは足が速い。初等部のわたしたちじゃ勝つのは結構厳しそう。

 でもこれはただの徒競走じゃない。パン食い競走だ。頭を使わなければ!


「ひひっ! やっぱ大したことねーじゃん!」


「しょせんガキァガキだ。身の程を知りやがれッ!」


「おチビちゃんだからそもそもパンまで届かないじゃん。いずれにせよアタシたちの勝ちさ」


 余裕ぶっていられるのも今のうちですよ。

 わたしはリーゼントのお兄さんに追いつくべく、開始15メートル付近で全力を出す。リーゼントさんは手を抜いているようで、少しずつ距離が縮まる。

 よし、もう少し近づいたら仕掛けよう!


 ――パンまであと8メートル。


 よし! 仕掛けよう!

 わたしはリーゼントさんに詰め寄る。


 ――パンまであと5メートル


 リーゼントさんとわたしの距離は1メートル。もっと近づかないと。


 ――パンまであと1メートル


 よし! 靴を踏んじゃうくらいまで近づけた。リーゼントさんはパンに夢中でわたしの存在には気づいていない。今がチャンスっ!

 リーゼントさんがジャンプをしようと体勢を低くした瞬間、わたしはリーゼントさんの背中を台にして跳び上がった。


「なにッ!」


「いただきますっ!」


 宙に舞うわたしは、空中でパンにかぶりつく。そして勢いを殺さないように着地して再び走り出す。このままゴールまで全力疾走っ!

 背中を踏みつけられたリーゼントさんはバランスを崩してそのまま転んだ。

 転んだリーゼントさんに足を取られ、他の2人もつまずいて転んでしまう。

 わたしはダントツでゴールし、後ろを振り返る。

 ジョーカーと七海ちゃんも四つん這いのお兄さんとお姉さんを踏んずけてジャンプし、パンをあむっとくわえて着地し、こちら手振りながらゆっくりと走ってきた。

 四谷ちゃんはリーゼントさんたちにペコリと頭を下げてから踏みつけて土台にしてパンをぱくっ。


「いってぇ! 畜生アイツらッ! 踏みつけやがって!」


「なんだよあれ! 卑怯だぞッ!」


「ちくしょうあんガキめッ! おい審判! アイツら反則だぞ!」


 お姉さんは審判さんに抗議するが、審判さんは大きく首を横に振った。

 リーゼントさんたちはおしりの砂をはらい、わたしたちのことをギリッと睨みつけてからゴールすることなく、どこかに行ってしまった。


■凛


 ちょっとやりすぎちゃった感はあったけど、無事勝てたよっ。うれしい!

 下克上システムもあって、緑組には180ポイントも入った。

 暫定スクワッド1位! 暫定じゃ意味ないけどね。

 そうそう、隆臣が説明し忘れてたけど、魔術学園の体育祭にはスクワッドシステムってのがある。

 スクワッドとは同じ色の組どうしの4人1組のことで、スクワッド内でポイントを合算することができるシステムのことだ。

 さっき100ポイントごとでお菓子がもらえるっていったけど、スクワッドを組めば合計350ポイントで4人分のお菓子がもらえるんだよ。少しお得だよね。

 ちなみに大会期間中に最もポイントを稼いだスクワッドや個人にも豪華景品があるんだよ。毎年変わるから景品の内容は予想はできないけど。

 だから自分の色の組が負けても、スクワッドや個人での入賞はまだ残っているんだよ。

 いっぱいがんばって優勝して、隆臣にいっぱいほめてもらいたいっ! 今ごろ隆臣もスクワッドっでがんばってるのかな? はやく2000ポイントためて白組にならないと!

 そうとなればさっそく2種目めだっ。

 でもその前にリーゼントさんたちにあやまらなきゃ。ごめんなさいって。だって踏んづけちゃったから……。

 わたしたちはリーゼントたちの背中を追いかけ、


「あのっ!」


 勇気を出して声をかける。


「あん?」


「えっと……さっきはごめんなさいっ! 踏んづけちゃって……」


「わたしも……ごめん」


「すみませんでした!」


 わたしに続いてジョーカーと七海ちゃんも謝罪を述べる。四谷ちゃんもぺこり。


「んだめーら! バカにしてんのかッ!?」


「チョーシこいてんじゃねーぞ!」


「ガキァ失せろッ!」


 うぅ、謝ったのにどうして許してもらえないの。ひどいぃ。


「ひっく……うう」


 ど、どうしよ! 涙が出てきちゃった。こんなはずじゃあ……。


「あんたたちふざけんじゃないわよ! ぶっ潰すわよっ!」


「そうですわよ! 謝りなさいっ!」


「うんうん」


 ジョーカー、七海ちゃん、四谷ちゃんはわたしをかばってくれる。ありがとみんな。やさしいね。


「決闘したいってのか? いいぜ? 体育祭だからな」


 普段学園内で不必要に能力や魔法を使うことは禁止されている。もちろんそれらを用いたケンカも。

 しかし体育祭期間中のみ、第二野外競技場で1対1で決闘することができる。

「だが今すぐってのは面白くねぇよな? じゃあそうだなァ……いいくらいにポイント貯めて明日なんてのはどうだ?」


「受けて立つわ!」


 リーゼントさんに流されて、ジョーカーは勝手に決闘の約束をしちゃった。


「じゃあけってーい! 明日の午後2時な。たくさんポイント貯めてこいよ? くっひひ!」


「うっはは!」


「はっはは!」


 リーゼントさんたちは立ち去ろうとした。しかしそのとき、


「決闘はお好きにどうぞ。でも女の子を泣かせるなんて、それでも高等部の生徒ですか? 見るに耐えません。決闘うんぬんよりもまず、三鷹さんに謝ってください」


 実行委員と風紀委員の2つの腕章を着けた初等部の男の子が、わたしたちの前に現れた。



 To be continued!⇒

ご閲覧ありがとうございます!

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