第66話 学園の四皇
■隆臣
俺、エース、凛、ジョーカー、尚子、ハート、亀有さん、桜田はそれぞれ飲み物を購入し、客席に腰を下ろした。
もうまもなく大食いバトルが開始される。あと5分少々といったところだ。
すると、
「コラァァァ! 飲み終わった容器はちゃんとゴミ箱に捨てんかァッ!」
突然野太い老人の声が聞こえてきた。
驚いた俺は、声のする方を振り返って、更に驚いた。
そこには竹刀を持った長い白髪と長い白髭を生やした老人がいて、なんと高等部男子の制服を身にまとっていたのだ。
「あれは……誰だ?」
俺は恐る恐る尋ねる。
「ああ、お前はまだ知らなかったか。てか今までの1ヶ月間でよくこいつを知らずにいられたな」
不思議そうな顔をする俺に尚子は続けて、
「こいつは爺さん目白だ。G4の」
と。
「じーふぉー?」
「それも知らんのか? 学園の四天王――四皇だぞ?」
「すまん。知らん」
「まじかよ……まあいい。学園の四天王――通称G4は、学園内でヤバい4人のことだ」
「ふーん」
「そのうちの1人があの爺さんで、名前は目白幸隆。風紀委員長の高尾美咲の目に留まり、今は風紀委員を務めている」
「ちなみに今何年生だ?」
「高等部1年だ」
「マジかよ」
「マジマジだ。マジ・マジの反乱だ。言っておくが、爺さん目白の第六感は世界最強クラスのもので、息子は魔法庁に務めているらしいぞ」
やっぱこの学校、だいぶおかしい。俺は心底そう思った。
「あと、あの学食の番人も四天王の1人だぞ」
「あのおデブちゃんも?」
「デブは失礼だろ。あいつは神社の息子で、陰陽師見習いらしいぞ」
たしかにデブは失礼すぎたな。すまん番人!
「陰陽師見習い!? 人は見かけ寄らないとは、まさにこのことだな」
驚きすぎで驚き癖がつき始めてきた俺。
すると、
「あんらぁああ? 樹つぁんじゃぁああないのぉおん!」
今度は野太い若い男の声が聞こえてきた。
「げッ!」
桜田はそんな声を出す。
「って! なぁああんであんたもいるのよォおおん!」
「チッ! てめーかよ」
亀有さんはソレに忌み嫌った表情を向けた。そこにいたのは大きな黒いダイヤだった。黒光りして大きく、形のいい筋肉を持った巨躯が俺の真後ろに立っていたのだ。
「あぁんたがいんなら、この特等席はあぁあきらめぇるわァ!」
そう言って黒いダイヤは背を向けて去っていった。その背中は父さんみたいにとても大きかった。
てか喋り方のクセがすごい! 千鳥ノブが飛んでくるくらいのクセすごだぞ。
そんなクセすごゴリマッチョを親指で示しながら亀有さんは、
「あいつは四皇が1人、名前はゲイーズ青戸だ」
と教えてくれる。
「ゲイーズ?」
「ああ。あいつは高等部3年で、ボディービル部の部長であり、そしてゲイだ。あいつには決して構うな。あれでもやつは第九感覚覚醒者だ」
「マジかよ」
驚き癖を通り越して、驚き慣れし始めてしまった俺。
そんな俺をさらに追い詰めるように、
「デュフ、デュフフ。ロリがいっぱい……ロリっぱい! ロリっぱいがいっぱい……ロリっぱいぱい!? デュフフ! ここは天国カニ〜ッ!?」
ああ、こいつも四天王だな。冠名を予想してみよう。うーん……ずばりガチロリコン!
「はぁ……こいつはガチロリコン板橋っていう、四皇の中でも特に厄介なやつだ。色んな意味でな。こいつとも関わるな」
亀有さんはあきれながら説明してくれた。
よっしゃ正解だ! だんだんこの学園がわかってきたぞっ!
そう思いつつも、そろそろ試合が始まるのでフィールドの方に顔を向ける。
フィールド中央には、精神統一をしている番人と仙人がいる。 とても勇ましい。
そんなこんなで開始直前。会場のボルテージは最高潮に達している。
「さあカウントダウン10秒から! 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……試合開始ですっ!」
――カーンッ!
くるみ副会長のカウントダウンとゴングにより、第5回学食の仙人と学食の番人によるフードファイト対決が開始された。
■隆臣
「いけー仙人!」「負けるな番人! その腹は我々の希望だ!」「食いすぎて死ねー!」「食い倒れろバカ!」
観客は2人を鼓舞している。なんか暴言みたいなのも混じっている気がするけど……。
ちなみに今回は、醤油ラーメン→塩ラーメン→味噌ラーメン→とんこつラーメン→地獄ラーメンを順々食べていくスタイルだ。食べた杯数で勝負するんだってさ。
俺が読者の皆様にそんな説明をしていると、くるみ副会長が、
『おーっと! ここで両者ほぼ同じタイミングで一度目のお代わりぃー! 次は醤油ラーメンですっ! 早いですね椿先生』
と、叫んだ。
慌てて番人と仙人の方を見てみると、ラーメンどんぶりにはスープ一滴すら残っていなかった。
『そうね。でもまだまだ2人ともセーブしている感じかしら』
と、椿先生。
『そうなんですか?』
『そうよ。彼らの胃袋はもはや胃袋じゃない。四次元胃袋よ。それに見て! メガフェプス!』
『メ、メガフェプス!?』
副会長は聞き返した。
『メガトンフェイス食いプランストライク!』
椿先生、それはあまりにも無理が過ぎます! だが、観客たちは『うおー!』と雄叫びを上げている。わけわかめ。
『それはどんな技なんですか!?』
『説明しよう。あの食い方を見よ。顔を丼に埋めて、箸を使わないで食べる作戦! まさにメガフェプスよ!』
『そうですね! あれは完全にメガフェプスです!』
……駄目だこいつら。たしかに顔を埋めてるからフェイス食いは分かるけど、別にメガトンな要素はないし、最後のプランストライクも謎すぎる。
『これはもはやただの大食いではないわ。超次元大食いよ!』
こうして長い長い東京魔術学園の体育祭が幕を開けた。
To be continued!⇒
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