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第56話 シュヴァルツの大魔法

◾ジョーカー


 目が覚めると、わたしはひどい頭痛に見舞われていた。


「うっ……」


 頭がガンガンして吐き気もする。


「でも、これは……」


 あたりを見渡してみると、そこは地下空間で、近くには大怪我をしたはずなのにすっかり完治している凛や、ボスとスペードが倒れているのがわかった。

 落下してきた天井も、崩壊前の状態になっている。

 それらのことにより、わたしは大魔法が発動したことを悟った。


「あれ……? わたし、どうして…………」


 目を覚ました凛が、不思議そうに自分の体に目をやる。

 外れた眼帯も元通り凛の左目を覆い隠している。


「凛、気がついたのね」


 わたしは凛のそばに寄り、


「シュヴァルツの大魔法が発動されたのよ」


 と、説明した。


「だからわたしの怪我も治ってるの?」


「そゆことよ。ま、詳しい説明は後で。今はとりあえず、トドメを……」


 わたしは目を覚ましたボスを睨みつける。


「ッ! 眠っていたのか!? おいスペード、起きろ!」


 ボスが隣で眠っているスペードの肩を揺すると、スペードはゆっくりと目を開いた。


「どうして傷が……? まさかこれが! シュヴァルツの大魔法の効果ッ!?」


 狼狽するボスに対して、


「その通りよ。時間を操ること……それこそがシュヴァルツの大魔法の効果だわ!」


 わたしはそう言い放った。


『ッ!?』


 その言葉に凛、ボス、スペードの3人は大いに驚愕した。


「30分時間が巻き戻ったのよ」


 わたしはそう説明して、左手の人差し指を噛んでまた血を出す。

 ボスは腕時計に目をやり、


「たしかに……ちょうど30分」


 時間を操作する大魔法が発現されたことを実感したようだ。


「スペード、今からあなたを殺すわ!」


 わたしがそう言うと、


「っ!」


 スペードはわたしの目の前にエネルギーを放出しようとしてきた。

 わたしはビシッとスペードに指をさし、


「時間よ止まれっ!」


 指の血を十字架に付けて叫んだ。

 瞬間、わたし以外の全ての物体の動きが停止した。時間が止まったのだ。

 わたしは懐から6本のナイフを取り出し、万有引力操作でそれらをスペードに向けて発射する。

 時の止まった世界では、わたしが直接触れているもの以外は時間が止まる前の状態を維持し続けるので、ナイフはスペードに突き刺さる直前で静止した。

 そして、


「時間よ動きだせ!」


 わたしの一声で、今まで止まっていた全ての物体が再び動き始めた。


「うぐぁっ!」


 全てのナイフがスペードに突き刺さる。


「なッ!?」


「っ!」


 ボスと凛はその光景に目を見開いた。


「何をした!」


「時間を止めたわ。どう? これでもまだやる気?」


 ボスの質問に、わたしは口角を三日月のように釣り上げて答えた。

 ボスは悔しそうに歯を食いしばり、スペードは霊魂状態になってボスの中に吸い込まれていく。


「……ジョーカーッ! 貴様ッ!」


 ボスは叫んだ。


「ふっ」


 その哀れな光景を鼻で笑い、わたしは再びロザリオに血を付けて時間を止めた。


(ああ懐かしいわ、この感覚。あの人に振り向いて欲しくてつくったこの魔法――わたしのすべて)


 そしてわたしはダメ押しに、ダークエネルギーでボスの足の骨を砕き割る。

 時間が止まっているので、ボスはこの激痛を時間が動き始めるまで感じることはないが、足が砕け折れたという事実は決して覆らない。


「2秒、1秒……くらいなさい! わたしの味わった激痛をっ!」


 時間が動き始めると、


「ぐぁぁあああああ!」


 ボスは痛みに悶えて苦しみ始めた。


「チェックメイトよっ!」


 わたしはボスを見下す。


「ちくしょォォオオオ!」


 ボスは腕の力で這って、地下空間の出口を目指すが、わたしはボスにかかる重力を強めてそれを妨害。


「その脚でどうやってはしごを登るつもりか知らないけど……逃がすわけにはいかないわ!」


 わたしはボスの目の前に立ちはだかる。

 するとボスは懐に隠し持っていた拳銃を取り出し、


 ――パンパンパンパンパン!


 わたしに向かって何度も引き金を引いてきた。

 しかし弾丸が当たる直前に、わたしは斥力を操作してそれらをはね返し、そのうちの1つがボスの額のど真ん中に命中した。

 ボスは仰向けにぶっ倒れ、


「ち……くしょう! こ、んな……ことがッ! こんなことが…………あってたまるか! 俺はッ! 大魔法を、手に入れて…………ッ!」


 そう言ってすぐに意識を失った。

 しばらく沈黙が流れ、


「……ついにやったわよ。凛」


「…………」


 凛は呆気に取られて何も言うことができないようだ。


「これで……ほんとに全部終わったの?」


「ええ、そうよ。……さぁ上に戻ろう。もうみんなも目を覚ましているはずだわ」


 凛にそう答えて、わたしはしごに向かう。


「待ってジョーカー」


「ん?」


「ボスはどうするの?」


 尋ねる凛に対し、わたしは少しだけ間を空け、


「あの子たちをここに連れてきて、その後に時間を戻す。ボスが犯した罪は、死では償えないわ」

 と。



 To be continued!⇒

ご閲覧ありがとうございます!

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