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第55話 リンカ・フォン・シュヴァルツブルク=ルードシュタット

◾ジョーカー


「わたしの生前の名前は……リンカ・フォン・シュヴァルツブルク=ルードシュタット! その棺桶に入っているのは、ずばりわたしの死体よっ!」


『ッ!』


 ボスとスペードだけでなく、意識朦朧な凛も驚愕した様子だ。


「どうしてわたしの死体が腐らずに残っていたのか……それがシュヴァルツの大魔法の秘密よ。

 さあ、これを奪いたいならわたしを殺しなさい。それがあなたたちの試練。わたしの試練はあなたたちからこのロザリオを守り抜くこと!」


 わたしがそう言うと、ボスは立ち上がり、スペードはボスに寄り添う。

 わたしがロザリオの十字架部分に、したたる血を付けようとしたそのとき


「させない!」


 スペードは、ロザリオを握るわたしの右手の目の前でエネルギーを放出してきた。

 わたしの右手の肉は吹き飛び、骨は複雑に砕け、大量の血が吹き出した。

 でももう痛くない。というより、痛すぎて感覚が狂ったのかもしれない。実は何も感じない。

 ロザリオはわたしの手から落ちて、そのまま棺桶の中に落ちた。

 それからすぐにスペードの右手からも血が吹き出す。


「ジョーカー……貴様! どういう原理か知らないが、攻撃をはね返しているのか!?」


 ボスの問いかけにわたしは、


「万有引力は二物体間にはたらく引き付け合う力。それを利用して2つの物体を互いに引き離したとき、そこに斥力が発生したように見える。そこからヒントを得たのよ。まだ未完璧だけどね」

 と。


「そうかそうか。また新しい能力を手に入れたのか。

 だが、いくら新しい能力を身につけようと、最強の一に対しては太刀打ちできない。

 フルハウスやフォアカードでロイヤルストレートフラッシュに勝てるか? 無理だ。それと同じことだ!」


「はい、お父さま。もう対策は思いつきました 」


 スペードはボスの言葉に続いてそう言いながら、背後の土のエネルギーを吸収し、そしてそのエネルギーをわたしの目の前に放出してきた。

 わたしの全身の骨がさらに砕ける。

 痛みはないが、頭がチカチカして、今にも気が飛んでいきそうだ。

 今にも霊魂化して、凛の体内に戻ってしまいそうだ。


 スペードはわたしの斥力操作による反射攻撃を受けている様子はない。

 しかしわたしは、凛とロザリオを守るという強い信念だけで、棺桶の中に落ちたロザリオを拾いにいこうと、懸命に手足を動かして這いずった。

 そこでわたしはあることを思いつき、自ら霊魂状態になる。

 白い光になったわたしは、死体のリンカの体内に入った。

 ボスとスペードは不思議そうな表情をしていたが、すぐに目を丸くする。

 死体のはずのリンカの目が開き、半身を起こしたのだから。


「戻ってきたわ! わたしの体に!」


「「ッ!」」


 ジョーカー(わたし)――すなわちリンカの霊魂が、からのリンカの体に憑依したのだ。

 スペードはそんなリンカ(わたし)の目の前でエネルギーを放出した。

 しかし、何も起こらなかった。

 わたしがエネルギーを斥力で跳ね返し、そのエネルギーをスペードが吸収したのだ。


「エネルギーがあるってことは質量があり、なおかつ空間が歪んでるってこと。

 その空間の歪みを中和するために斥力物質が存在する。斥力物質が存在するということは、ダークエネルギーが存在するってことになる。

 つまり、エネルギーを斥力で跳ね返すにはダークエネルギーが必要で、わたしは斥力の発想からそれを操る能力を手に入れたわ!

 さぁ、かかって来なさい、スペード! わたしはすぐにロザリオを使ってみせるわ!」


 わたしは人さし指を噛んで血を出す。

 ちゃんと痛いし、頭もチカチカしてない。万全な状態だ。


「っ!」


 スペードはわたしの頭上の天井に向けてエネルギー波を放つ。

 地下空間の天井は崩壊を始め、わたし目掛けて岩盤が落下してきた。

 斥力でそれをはね返そうとするが、能力がまだ未完成のため、超重量の物体をはね返すことはできない。

 轟音が響いた。


◾???


 私とスペードは黙って崩れた岩盤を見つめていた。


「やった、勝ったぞ!」


「はい、わたしたちの勝利です」


 少しして、スペードはあることに気づく。


「お父さま、何かおかしくありませんか?」


「ん? どこがだ?」


「砂が……上に昇っているように見えるのは、わたしだけでしょうか?」


「風じゃないか?」


「そうですよね! よかった、わたしの勘違いで」


 しかし、時間が経つに連れて砂だけでなく、小石や少し大きめの石までもが上昇し始め、その上昇スピードも加速度的に速くなっていく。


「なんだこれは!」


 そしてジョーカーの上に落下した大きな岩盤までもが上昇し、潰れて血だらけになったはずのジョーカーの姿が現れる。

 手脚の骨だけでなく、背骨や頭蓋骨までもが潰れ、ジョーカーは完全に死亡しているのが見てわかる。

 しかし、飛び散っていた血はジョーカーの体に向かって移動し始める。

 血痕はまったくない。

 潰れた頭蓋骨やおかしな方向に折れ曲がった手脚の骨もすぐに復活していく。


「お父さま!」


「これは……まさかッ!」


 瞬間、あたりが真っ白になった。



 To be continued!⇒

ご閲覧ありがとうございます!

昨日投稿できなかったので、今日はもう一本出します!

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