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第53話 スペードの圧倒的強さ

◾隆臣


「お父さま!」


 マリアは叫んだ。


「2人ともよくやったな」


 赤髪の男――ボスはそう言って、両脚を怪我して動けない凛を抱き上げる。

 ボスのガイストであろう赤髪の少女は、遺体のクリスの服をあさり、虹色の魔力石を取り出した。


「クレヤボヤンス、そして5つ目の魔力石の確保……私は大変喜ばしく思っているぞ。アンナ、マリア」


 アンナとマリアは父の姿を見て安心した様子だ。


「離してください! わたしをどうするつもりですか!」


 凛はそう言って、ボスの腕の中でジタバタ暴れたが、すぐに血の気が引けた表情になる。

 次の瞬間、凛の両腕両足の肉は裂け、骨が剥き出しになったり、砕け折れた状態になった。

 血がボタボタとしたたり落ちて、石畳を赤黒く濡らす。


「うぁああああああ!」


 凛は引き裂けるような声で叫んだ。


「腕も脚も邪魔だ。必要なのは生命と、この左目だけ」


 ボスはそう言って俺たちの方を向いてきた。


「テメェーッ!」


 俺は激昴し、両手に握った拳銃の引き金を引いて、ボスに向けて乱射する。

 しかし弾丸は全て、ボスの手前で消え失せた。


「これは……ストレートと同じ!」


 俺たちすぐに、ボスのガイストの能力がストレートの能力と近似していることに気づく。

 エースは文字通り目の色を変えて、第九感――分割高速演算を利用して、ボスのガイストの能力の解析を開始する。


「美しい青色だな。しかし、スペードの能力を看破したからといって、貴様らに何ができるというのだ」


 ボスはエースにそう言いながら、ガイストの少女――スペードの髪の毛をなでる。


「やってみないとわからねーだろ!」


 俺の声でエースは数体の分身を作り出し、拳銃を持たせて突撃させた。

 しかし、分身は一瞬のうち全員後方に吹き飛ばされ、行動不能になった。

 ダイヤはつららを、ジョーカーは石畳の欠片を放つが、やはりその全ては消滅してしまう。


「チッ! 接近できない!」


 大きく舌打ちをした俺に対してエースは、


「でもわかったよ。スペードの能力は、物体のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを任意の座標にそのまま放出することなんだよ!」


 と、スペードの能力を早々に看破してくれた。

 さらにナディアは、


「スペードの能力はジャックの能力に似ている。それなら私のロザリオでボスに近づくための道を切り開けるかもしれない!」


 俺たちは頷き、ナディアを中心に集まろうとしたその刹那、


 ――キンッ


 奇妙な音とともに、突然ハートとダイヤの全身から血が吹き出し、後方にぶっ飛ばされた。


「ハート! ダイヤ!」


「どうして……こんなに離れてるのにっ!」


 俺とジョーカーは驚きを隠しきれずにそう言う。

 一般的なガイストの能力効果範囲は広くてもせいぜい25m。

 しかし、今のスペードの攻撃はその範囲を遥かに越えおり、推定能力効果範囲は4、50mほどだ。

 俺、エース、ナディア、ジョーカーが無事だっだのは、ロザリオの、高濃度の魔力に反応して自動的に魔術的結界を形成するという効果の範囲内にいたからであろう。

 ハートとダイヤはその範囲内にいなかったのだ。だからやられたんだ。

 ハートとダイヤは光の塊となり、遺体の尚子とクリスの体の中に入っていった。

 俺は歯を食いしばって悔しがる。


「行こう……行くしかない…………!」


 悲しみはここに置いて、俺たちは寄り添って歩き出した。

 ボスとスペードは不敵な笑みを浮かべる。

 すると、


 ――ドガンッ!


 轟音とともに地面が揺れ、広範囲の地面が突然砕けて沈降し、俺たちは5mほど落下した。

 エースとジョーカーは浮遊して落下によるダメージはなかったが、俺とナディアは地面に体を強く打ち付けてしまう。


「2人とも大丈夫?」


「ああ」


「なんとかな」


 エースに俺とナディアはそう答えて立ち上がる。

 ボスとスペードのいる地面は通常の高さで、2人はそこから俺たち4人を見下ろしていた。

 ジョーカーは砕けた石畳とボスたちとの間にはらたく万有引力を強めて石の弾を次々と発射するが、やはり2人までは届かずに消えてしまう。

 ジョーカーは苦悶の表情を浮かべる。

 すると突然、俺たちの周囲に転がるたくさんの石畳の欠片が、ものすごいスピードで襲いかかってきた。


『ッ!』


 俺はエースの分割高速演算思考にアクセスして石弾を弾き、その近くの石弾の軌道も逸らしていく。

 エースも分身に、俺と同様の対応をさせ、ジョーカーは石弾に加わる重力を強めて石弾の弾幕の被弾を防ぐ。

 しかし、


「ッ! 上からもッ!」


 第九感で上空からも石弾が降ってきていることに気づいたナディアがそう叫んだ。

 エースはストレートが形成していた鋼鉄の壁をコピーして頭上に配置し、上からの弾幕を防ぐ。

 だが再び地面が崩れて俺たちは体勢を崩し、周囲からの石弾の弾幕を浴びた。

 ナディアの手に石弾が命中し、ナディアはロザリオから手を離してしまう。

 さらに石弾はロザリオに命中し、ロザリオは俺たちから離れたところにいってしまった。

 俺たちは、スペードのエネルギー放出攻撃が来ることを悟って、ロザリオの方に走り出そうとした。

 だがそれよりも早く、俺たちは体をすり潰されるような痛みを感じた。

 俺とナディアはその場で倒れ込み、エースとジョーカーは霊魂となり、それぞれ俺と凛の体内に戻っていく。

 それを見たボスとスペードは、凛をその場に置いて、ゆっくりと俺とナディアのところまで滑り降り、俺たちから虹色の魔力石を奪い取とろうと手を伸ばす。


「うぅ……」


 虫の息の俺はボスの腕を掴んだ。


「まだ生きていたのか。スペード、トドメをさせ」


「はい、お父さま」


 ボスの言葉に首肯してスペードは俺の頭の付近でエネルギーを放出した。

 ――その瞬間、あっけなくすべてが終わった。


◾???


 私とスペードは、隆臣とナディアから虹色の魔力石を回収した。


「これで全部そろいましたね」


「ああ、これでようやく……すべてが整った」


 スペードが土の壁を見つめると、壁は一瞬のうちに階段に変わった。

 必要ない部分のエネルギーを吸収することで壁を階段に整形したのだ。

 私は凛を抱えてスペードと共に地下へと続くはしごを降りた。

 始めよう。儀式を。



 To be continued!⇒

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