第51話 死
昨日は投稿できなくて本当にすいませんでした!
今日は2本投稿しますのでお許しください!
◾隆臣
エースは一同にそう叫んで、今度はアンナとストレートに向けて、
「ずっと瓦礫のそばから離れないのは、ストレートが瓦礫のエネルギーを吸収しているから。そして、ストレートは吸収した分のエネルギーでしか物体を作り出すことができない……違う?」
と。
「おめでとうエース。よくストレートの能力を看破したな」
「嬉しくない賛辞だね」
と、エースは分身の数を増やして答える。
「だが、それがわかったからどうだというのだ。こっちには無限の武器庫がある。しかしそっちはどうだ? 為す術なんてないんじゃないか?」
と、アンナはストレートの頭をポンポンしながら。
「それはどうかな?」
アンナ、ストレート、マリアは、背後から俺の声がすることに気がついた。
アンナが振り返った瞬間、声の主はアンナの顔面を拳で殴った。そう、そいつは俺の分身だ。
「くッ!」
「お姉さま!」
「っ!」
倒れたアンナにストレートとマリアは駆け寄る。
「貴様は……分身か!? いつの間にッ!」
アンナは頬を抑えながら叫んだ。
その間に俺たちは3人に接近。その距離はおよそ8m。
「挟み撃ちだぞ……アンナ!」
「……ッ!」
一瞬の沈黙の後、
「フフフフフフハハハハハハハハハハハハハ!」
アンナは突然気味悪く笑い始めた。
凛は左目の前に手をやって、
「……どういうこと? これは一体……何を意味しているの?」
「凛、何が見えたんだ」
俺は凛の手をぎゅっと握ってやる。
「何も……見えないんです。左目に何も…………映らないんです!」
凛は泣きそな顔でそう答えた。
『ッ!?』
「何も見えないだって……? そんなことがあるのか!?」
俺たちは狼狽したが、
「みんな! 目を隠して!」
エースがそう叫んだ。
その言葉で俺たちは目を瞑る。
大きな音で耳がキーンとなって効かなくなるが、エースの咄嗟の判断で目を隠していたので、閃光弾を投げられたみたいだが、視界は保護することができた。
そして俺たちは、目の前からアンナたち3人がいなくなっており、分身が血を流して倒れているのを目撃した。
凛の未来予見の報告を聞くことができなくなてしまい、何が起こるかわからなくなってしまった俺たち一同。
俺はすぐそばにいた凛とナディアとともに瓦礫に隠れ、聴覚が復活するのを待ちながら、辺りを警戒して見渡す。
アンナ、マリア、ストレートがどこに隠れたのかは俺の位置からは見ることができない。
すると俺は、凛に袖をくいくいと引っ張られた。
目線を下げると、凛は切羽詰まった表情で、必死に何かを伝えようと指をさしている。
その方向に目を向けると、尚子とクリスが辺りを見渡しているのがわかる。
しかし次の瞬間、2人は音もなく、血飛沫を伴って倒れた。
俺は咄嗟に凛とナディアを抱き寄せ、瓦礫に密着して身を隠す。
聴覚が徐々に復活してきた。
小さな発砲音が聞こえると同時に、凛の左太ももから血が吹き出した。
「エースッ! 俺を強化しろッ!」
俺はありったけの声でエースに叫ぶ。
どうやらエースも聴覚が復活し始めたようで、どこに身を潜めているのかはわからないが、俺の身体能力を極限まで強化してくれた。
再び小さな発砲音が聞こえてきて、銃弾は凛の逆脚を狙うような軌道で飛んできた。
俺はその銃弾の側面を裏拳で叩き、軌道を逸らして凛への被弾を防いだ。
凛は撃ち抜かれた左太ももを抑えながら俺を見上げ、
「隆臣の頭に飛んできます!」
と思い切り叫んでくれた。
凛を瓦礫の間に隠して、俺は射撃地点を確認するために、あえて顔を隠さない。
――ダンッ!
さっきよりも少し大きな射撃音が聞こえてきて、俺の顔面に向かって弾丸が飛んできた。
俺はしっかりと射撃地点を確認し、首を傾けて弾丸を避けた。
「見つけたぞ……! そこかッ!」
俺は再び瓦礫に隠れ、
「凛、ナディア! 耳は治ったか?」
と尋ねる。
「……は、い。ちょっとは……治りました」
痛みに顔を歪めながらも、凛はそう答えた。
「私もなんとか……まだ頭がガンガンするけど、第九感を使えるくらいまでには回復できた」
ナディアの返答も心強いな。2人とも頑張ってくれッ!
すると、
「隆臣! 凛! ナディア!」
「2人とも……その傷ッ!」
エースとジョーカーが瓦礫をすり抜けて背後からやってきた。
「俺の方は大したことない。ナディアも無傷だ」
俺は弾丸の軌道を逸らすために裏拳を使ったため、手の甲がすりむけているが、大した傷ではない。
凛の方は右ふくらはぎのフラッシュのレーザービームによるかすり傷と弾丸で撃ち抜かれ、恐らく骨も砕けてしまっているだろう左太ももの傷がひどい。
気を抜けば意識が飛んでしまうような痛みに、凛は耐えているのだ。ごめんよ……痛い思いさせちまって。
「だが凛の傷はひどい。それに出血も……」
俺は着ていた薄手のジャケットを脱ぎ、それを引き裂いて帯を作り、それを凛の太ももにギュッと巻いてやる。
「凛はここで待ってろ」
「はい……」
凛は力ない笑みを向けてきた。
俺は凛の頭をなでなですることしかできない。
痛みに耐えながらも、凛は俺をこれ以上心配させないために、懸命に笑みを作っているように見える。
「ねえ隆臣。ハートとダイヤの反応はあるのに、尚子とクリスの反応がないんだよ。これはどういうことなんだろう?」
エースがそう聞いてくる。
俺は目を伏せ、尚子とクリスの死体を指さす。その指は震えている。
「2人とも狙撃された…………」
「っ!」
その無残な死に方を見たエースは、目を見開いて手で口を抑えた。
ジョーカーもすぐに目を伏せている。
「みんないたよ、ダイヤ」
「……ほんとだ」
まだ尚子とクリスが殺されたことを知らないのか、ハートとダイヤのそんな声が瓦礫の中から聞こえてくる。
瓦礫をすり抜けてハートとダイヤは俺たちに合流した。
「みんな無事みたいね。よかった」
「…………っ! は……ぁと」
ダイヤも尚子とクリスの死体に気がづいたようだ。
「尚子……? そんな! そんなの! 酷いよ! ヤダヤダヤダ!」
「……クリス………………っ!」
ハートは泣き叫び、普段あまり感情を露にしないダイヤも、目に涙を浮かべていた。
悲しみにふける暇もなく、聴覚が復活して、第九感でアンナたちを監視していたナディアが、
「3人が移動しはじめた! 正門の方に回り込んでいるぞ!」
と、報告してくれた。
「ハート、ダイヤ…………2人はどうする?」
俺は尋ねる。
「あたしは……復讐したい…………尚子と尚子の家族のために……」
「クリスはわたしの命の恩人…………。でも、ありがとうって、1回も言ったことなかった。だから……アンナをコロスことで、その気持ちを……伝えたい!」
ハートとダイヤはそれぞれそう言った。
「ありがとう、2人とも」
俺は2人の頭を抱き寄せた。
(尚子、クリス。お前らの魂……俺が預かったぞッ!)
「や、やめてよね! そういうの!」
「……ん」
ハートの声は震えていて、ダイヤも押し返そうとしてくる。
「すまないな……」
俺の声も震えている。
「泣いちゃダメだよ……隆臣」
エースは俺のTシャツをギュッと掴んだ。
俺は涙をぬぐう。
(なに泣いてんだよ、俺! 泣いたってなんも変わんねーじゃねーか。何かを変えたきゃ泣くのをやめろッ!)
「みんな! 行くぞ!」
俺はエース、ジョーカー、ハート、ダイヤ、ナディアを引き連れてアンナたちの方へ歩き出した。
To be continued!⇒
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