第50話 エースの奇策
誤字脱字は勘弁ください!
◾隆臣
エースは、フラッシュを倒す方法を俺たちに伝えた。
「そんなことが可能なのか?」
と聞くクリスに、
「いけるよ。魔力で作ったレーザービームとはいえ、それはあくまでも光。物理法則が絶対なんだよ。それにフラッシュの背後にある光の玉。あれがレーザービームの素で、今は1個しかない。フラッシュはきっと一度にあまりたくさんビームの素を作れない。新しいのが作られる前の今がチャンスなんだよ!」
エースはそう答えた。
「……さんせい!」
「もちろん協力するわ」
ダイヤとジョーカーはこくりと頷く。
少しして、
「レーザービームが来ます! 狙いはエースっ!」
凛は未来予見により得た情報をみんなに告げる。
「まだ準備が……」
「大丈夫」
ダイヤにジョーカーは言い、前に出た。
さきほどの爆発で破壊された無数の石畳の欠片を万有引力操作で飛ばし、弾幕を形成する。
それらの大半は一瞬のうちに消され、一部は突然現れた鋼鉄の壁に防がれる。
しかし、少しだけ時間を稼ぐことはできた。
「あとは、ジョーカー、エース……お願い」
どうやらダイヤの準備は整ったようで、ジョーカーとエースに仕上げを求めた。
「了解だわ。エース、指示を」
「OK! ジョーカー、それはもっと右上……ちょっと行き過ぎ……そこそこ! それはちょっとだけ左に回転させて……おっけい。それはそのままでいいよ……」
エースは次々とジョーカーに指示を出していき、ジョーカーも手早くそれに応じてダイヤの作り出した氷塊を空中に設置していく。
「どう? 凛、これでいけるよね?」
「うん、完璧!」
凛が首肯した数秒後、フラッシュはエースを指をさしてレーザービームの照準を定める。
その刹那、フラッシュのお腹から血が吹き出し、風穴が空いた。
「なにィ!」
「っ!」
「ひゃっ!」
アンナ、マリア、ストレートは目を見開いた。
「まさか! レーザービームが……跳ね返されたのか!?」
薄い煙に写されたレーザービームの軌跡は、フラッシュの背後から伸び、そしてエースに当たる直前で方向を変え、その後も何度も進路を変えて、最終的にはフラッシュの方に戻っている。
「これは氷ッ! 氷を使ってビームを跳ね返す…………ビームを曲げる………………ビームを屈折させる! あいつら……いや、エース…………よく考えたものだ。やはりあいつは、早急に排除しておくべきだったッ!」
アンナが今の出来事を理解している間、フラッシュは霊魂となってマリアに吸い込まれていった。
エースは第九感――分割高速演算を駆使して、水での全反射や氷での屈折で、レーザービームの軌道を変える計算をした。そしてちょうどよくレーザービームがフラッシュに命中するように、ダイヤが空気中の水分から生成した氷をジョーカーに配置させていたのだ。
「マリア、後ろに下がってろ」
マリアはショックを隠しきれない表情をしていたが、アンナの言葉に頷いてアンナとストレートの後ろに隠れた。
「よし、みんな! 行くぞ!」
俺の掛け声で俺たちは分身と合流し、ナディアは分身からロザリオを受け取り、アンナの方へと向かった。
「やつらが近づいてきた。ストレート、もう一度ロケットランチャーだ」
「はい」
ストレートが頷くと、ストレートの手の上に突如ロケットランチャーが現れる。それをアンナに手渡し、アンナは安全装置を外して肩の上に構えた。
ジョーカーは放たれたロケット弾の弾頭部分と、文化交流館との間にはたらく万有引力を強化して、軌道を逸らす。
ロケット弾は交流館の窓ガラスを破って中で爆発した。
そして、エースが分割高速演算を使って何か考えていることが、俺にも伝わってきた。
(何かを消して、その代わりに何かを作り出すこと。それがストレートの能力で間違いなさそう。でも、作れるものには限度があって、あまり大きいものは作れない。その証拠に、飛行機でも作って私たちを圧死させればいいのに、拳銃とかロケットランチャーとか防壁とか、そういった小さなものしかつくらない。でもどうしてモノが消えるの? それがさっきからずっと不可解……。
物体がなくなる…………物体が存在しなくなる………………物体が存在する条件……………………ある時間において、空間に座標が最低質点として存在すること………………………………質点? 質量があること? まさか! そういうことだったの!? いや、まさにそうだ……そうとしか考えられない! 一般相対性理論から考えて、光の速さは定数だから、物体のエネルギーをゼロにするということは、その物体の質量をゼロにすることと同じ……つまり!)
「わかったよ! ストレートの能力は物体のエネルギーを吸収して、そのエネルギーから別の物体を作り出すことなんだよ!」
To be continued!⇒
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