第49話 ストレートフラッシュの強さ
◾凛
「なるほど……水蒸気を使ってフラッシュの能力を見破ったか」
「でも問題ないです」
「はい、わたしの能力の秘密がわかったところで、対応できるのは凛ちゃんだけ。だから、心配いりませんよ、お姉さま」
「わたしたちに勝てる人はいません!」
アンナさんにマリアちゃん、フラッシュ、ストレートはそれぞれそう答えた。
「もちろん、負けるなんて思ってないさ。しかし、エースのあの第九感……何か嫌な予感がするんだ……」
アンナさんは眉根を寄せた。
「どうにかしてやつらに近づこう。じゃないとこちら側は成す術がない」
と、隆臣。
「ああ、それには賛成だ。しかし、徐々に水蒸気が薄くなってきている。このままでは凛がビームを見れなくなるぞ」
「俺に1つ、考えがある」
尚子さんの心配に対して隆臣は、
「あの瓦礫は鉄筋コンクリートだが、木製の部分もあるだろう? そこを燃やす。そうすれば大量の煙と水蒸気が発生するはずだ」
と。
「なるほど。でもそれならさっきみたいに火薬玉は消されちゃうよ」
心配するハートに、
「囮作戦だよ」
エースはさらに3体の分身を作り出して答えた。
するとナディアさんは、
「わたしはビームが見えないし、第九感も役に立たない。今回は活躍できそうにないが、これを持って行ってくれ。レーザービームはフラッシュが直接魔力を使って作ったもの。さっきやつらが隆臣を直接ビームで狙わなかったのは、隆臣が私の隣にいて、ロザリオがビームに反応してしまうのを避けるためだ。つまり、レーザービームはロザリオで防げるってこと。そうよね? エース」
と言ってエースにロザリオを渡した。
「ナディアの言うとおり、ビームからは大量の残滓粒子が発生している。ロザリオで防げるはずだよ」
エースはそう言ってロザリオを受け取り、分身の1体に「お願いね」と言ってロザリオを手渡す。
「それじゃあ始めるよ! 凛、サポートは頼んだ! ハート、ジョーカー、タイミングは合図送るからね!」
エースは分身を前進させた。
「来たか。撃て、フラッシュ」
「はい」
アンナさんの言葉に頷き、フラッシュはレーザービームを放ってきた。
「来ます! 4本! 分身さんはそれぞれその場から離れてください!」
わたしの言葉を聞いて、3人の隆臣の分身はその場から離れ、1人はロザリオを前方にかざした。
――キーンッ!
たちまち薄れた水蒸気に光線が走り、ロザリオを構えた分身の前で光は分散していった。
すぐに分身さんたちは走りだし、アンナさんたちに肉薄する。
「ふっ」
アンナさんは鼻で笑った。
そのとき、わたしはパニック状態に陥った。どうしようもない現実に狼狽したためた。
「これは……っ! どう説明すればいいかわからないよ!」
「凛! しっかり説明して! 未来が見えるのはあなただけなのよ!」
ジョーカーの声がさらなるプレッシャーとなり、わたしは頭が真っ白になった。
すると、アンナさんの右肩の上に、筒のようなものが出現し、ストレートも既に何かを握っていた。
アンナさんの持つ大きな筒をよく見ると、それは、
「ロケットランチャー!?」
隆臣が言う通り、それは軍用ロケットランチャーだった。
アンナさんは迫り来る分身の足元に向かってロケットランチャーを発射した。
――ドゴーンッ!
身体能力が強化されている4人の分身さんは、ロケット弾の爆発からなんとか逃げられたが、
――ズドーンッ!
地面から起こったもう1つの爆発にそのうち2体が巻き込まれ、さらにレーザービームでもう1体がやられた。残ったのはロザリオを持つ1体だけだ。
「ナイスタイミングだ、ストレート」
「はい、ありがとうございます」
ストレートの手には起爆装置と思しきものが握られている。
その光景を見たわたしはパニックの境地で、ただただ立ち尽くすことしかできなかった。
すると少し経って、
「ん? なんかこげ臭くないか?」
「言われてみれば、何かが燃えるような匂いがします」
アンナさんとフラッシュはそのような言葉を交わした。
「後ろを見てください!」
マリアちゃんの言葉で、アンナさん、ストレート、フラッシュは後ろを振り返った。
そして、瓦礫の一部が燃えていることにようやく気がついたようだ。
「分身に気を取られている隙に……やつらは何がしたい」
アンナさんは周りを見渡し、
「水蒸気だ! 見ろ、水蒸気がもうほとんど晴れている。やつらはこの瓦礫を燃やして煙を発生させ、やはりフラッシュのレーザービームを見ようとしているんだ! ストレート、燃えている瓦礫を消せ!」
「……はいっ!」
アンナさん言われたストレートは、振り返って燃えている所へ急ぐ。その前に立った瞬間、
――ドドドドーンッ!
ストレートは爆発に巻き込まれ、飛んできた瓦礫が左腕に突き刺さった。
「くっ……! これはっ!」
アンナさんたちが分身に気を取られている隙に、エースはハートとジョーカーにサインを出し、それを見てジョーカーは、ハートの火薬を瓦礫の上にばらまいた。
ハートの能力効果範囲を飛び出した火薬玉の温度は急上昇し、そして爆発。
火薬が誘爆され、誘爆が誘爆を呼び、瓦礫全体の5分の1に炎が広がった。
煙が発生し、次第に量が増えていく。
「チッ! 1本取られたな」
アンナさんはそう言い、3人と共に移動した。
「凛、大丈夫か? 深呼吸しろ。一旦落ち着け。やられたのは分身だ」
「……は、はい」
混乱して呼吸が乱れたわたしは、隆臣に言われてなんとか深呼吸をする。隆臣が背中をさすってくれたので、すぐに平常心を取り戻すことができた。ありがと孝臣。
「凛、お前ならできる。大丈夫だ」
隆臣はわたしの頭をなでてくれた。あいかわらず隆臣のなでなでは気持ちがいい。ずっとしてほしいくらいだ。
「よし、準備は整った」
エースはそう言ってニヤリと笑い、
「さあ、フラッシュを倒すよ!」
と。
To be continued!⇒
ご閲覧ありがとうございます!




