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第46話 覚醒

◾隆臣



「ほぇ?」



 突然低くなった視線にノエルは間抜けた声を上げた。



「なんじゃこりぁあああ!」



 自分の下半身に目をやって脚がこま切れになっているのを見たノエルはムンクの叫びのような表情で叫んだ。



「脚がっ! 脚がないッ! 血が止まらない! これじゃあ修復できないよぅ」



 ノエルの周りには大きな血溜まりが形成される。その表情は絶望に満ちていた。



「ピアノ線だぜ、ノエル」



 暗い上に細くて見えにくいが路地裏にはしっかりとピアノ線が張り巡らされていた。



「お前が吸血鬼で逆に助かったぜ。普通の人間の力じゃあピアノ線で自分の体を細かく切り刻むことなんてできないからな」


「僕の力を逆手に取ったってわけか……」



 正直俺もなぜこんなに都合よくピアノ線が用意されていたのかまったく理解できていない。誰かいるのか? 俺たちの影の協力者が。



「ガイスト、吸血鬼、石化せきか霊眼れいがん――イントゥストーン。ほんとに手強い相手だった……」



 と、ナディア。



「僕は負けた……煮るなり焼くなり好きにしてくれ」



 ノエルは死を覚悟したような口調で言った。

 なるほど好きにしていいのか。うーんそれならどうしよっかなぁ〜。



「ジョーカー、ナイフを貸してくれ」


「うん」



 ジョーカーからナイフを受け取り、俺は自分の手首を掻っ切った。



「何をやってるんだお前は!」



 そばで様子を見ていたナディアが駆け寄ってくる。



「こいつに俺の血をやるんだよ。ひとまず死なせないためにな。俺の傷はあとで黒猫に治してもらえばいい」



 俺は逆の手でノエルの口を開き、手首から溢れる血をノエルに飲ませてやる。



「こほっこほっ! 馬鹿か!? そんなに一気に……おぼれちゃうぅ」


「うるせー。さっさと飲め。死ぬぞ」



 男のクセにあーだこーだ言いやがって。目をうるうるさせて見上げてくるか! 女かてめぇ!

 でもさすがにかわいそうだからゆっくりノエルのペースに合わせてあげた。

 しばらくするとノエルの体の切断面からの流血が止まった。

 それを見てジョーカーは俺の手首と脚の傷口を万有引力操作を用いて塞いでくれた。万有引力操作つえー!



「ありがとなジョーカー」


「べつに感謝されるほどのことじゃないわ」



 素直に感謝したらジョーカーは俺に背中を向けてきた。



「んで? ノエルをどうするつもりだ?」



 ナディアが尋ねてくる。



「色々聞き出すのさ。ボスのことをな。血さえ与えりゃあ死なないんだぜ? いざとなったらやることは決まってる」



 その言葉を聞いてジョーカーとナディアは呆然とした。



「隆臣……アンタってそんなやつだったの?」


「失望したぞ」



 ジョーカーとナディアは引いて俺を見つめる。



「冗談冗談! 俺がそんなことできるわけないじゃん! それにノエルは大嘘つきだ」


『?』



 ノエル、ジョーカー、ナディアは頭に疑問符を浮かべる。



「お前、女だろ?」



『………………』



 しばらく沈黙が続いた。



「顔も女の子みたいだし、髪の毛もキレイだし、おっぱいやわらかいし……」



 そう言ってノエルの胸をつんつんする。

 ノエルはぽかーんとしていた。



 ――ゴチン! ゴツン!



「いってぇ!」



 俺はジョーカーとナディアから渾身のゲンコツをもらった。



「何すんだよ! 俺はただからかっただけで!」


「からかった!? あんたってほんっとバカだわ」


「え?」



 ジョーカーは浮遊しながら俺に耳打ちで



「(この子は正真正銘女の子だわ。でも自分ではそう思っていないみたい)」


「(え? それってどういうことだ?)」


「(つまりノエルは自分のことを男だと思い込んでいるのよ)」


「(でもわかるだろ、胸とか色々で)」


「(そんなの知らないわよ! だけどそういうことだから、あんまりデリカシーのないこと言わない方がいいわ)」


「(おう。わかった)」



 俺はそう答えてノエルに上着を被せ、腕を首に回させておぶってやった。

 軽いな。それになんか甘くていい匂いがする。



■???



千里せんり神眼しんがんはもう時期目覚める。あとは満月の日を待ち全ての魔力石を使用するだけとなった」


「はい、お父さま。2日です」


「シュヴァルツの大魔法の起動には満月の日は必須条件であるが、その日がまさか史上最大の満月の日とは、なんともついているとは思わんかね?」


「はい、とても素晴らしいと思います」


「時は近い。アンナ、マリア、なんとしてでも残りの3つの魔力石を手に入れろ。そうすれば大魔法は我がものになりあの真祖をぶち殺すことができる」


「はい、了解しました、お父様」


「了解しました」



■凛



 小鳥のさえずりが聞こえてきます。

 ジョーカーはベッドに突っ伏して眠っています。半身を起こすとおでこから濡れたタオルが落ちてきました。

 ジョーカーが世話をしてくれていたみたいです。

 わたしが起き上がるとジョーカーもすぐに目を覚ました。



「凛、その目……」


「目?」



 ジョーカーは無言で部屋を飛び出して行った。



「変なの」



 そう呟いてわたしは目覚まし時計を見ました。時刻は午前7時30分です。



「……あれ? そういえばわたしは今まで何を……? たしかノエル君に血を吸われて……」



 立ち上がろうとしたのですが突然目眩がしてベッドに倒れてしまいました。

 貧血でしょうか? 血を吸われたからかもしれません。ジョーカーも時計も二重に見えたのできっとそうでしょう。

 その刹那、バンと勢いよくドアが開かれジョーカーとナディアさんが部屋に入ってきます。

 そしてわたしの左目を見てナディアさんは息を呑みました。



「この魔法陣……間違いない。凛は覚醒してしまった。千里眼クレヤボヤンスを!」



 To be continued!⇒

ご閲覧ありがとうございます!

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