第45話 第六の事件! 決着! ノエル戦
◾隆臣
「惜しかったね〜。いい連携だったよ。でもナイフをぶっ刺しただけじゃダメだよ。ちゃんと脳みそをぐちゃぐちゃに掻き混ぜないと。ハハハハハ」
ノエルは不気味に笑った。
ハートは爆弾を放つ。
「つまんない」
ノエルの拳はハートの胴体を貫いていた。
一瞬だった。爆弾を爆発させることもできずにハートもやられた。
スピードとパワー……これが吸血鬼か。圧倒的すぎるだろ。
「尚子は致命傷。恐れていたハートも消えた。これで残るは4人だけだね」
そう言ってノエルはゆっくりと俺たちに近づいてくる。
「でもやっぱり人間はつまらないなー。お願いだから僕をもっと楽しませてッ!」
ノエルの瞳の色を桃色から真紅に変化した。その目でジョーカーの瞳を覗くとジョーカーは一切の身動きが取れなくなった。
ノエルは左腕に突き刺さっていたもう1本のナイフを抜き取って逆手に握る。地面を蹴ってジョーカーの方へ。
ダイヤもジョーカーの方に駆け出しジョーカーを守るべくノエルにつららを放つ。
しかしノエルは吸血鬼の身体能力で回避したり拳や蹴りでつららを叩き壊す。
先にジョーカーの前にたどり着いたのはダイヤだった。
ノエルはダイヤに攻撃するために1歩前へ踏み出す。
そのとき、ノエルの体が仰向けで宙に浮いた。先日のクイーン戦で使用した敵の足元に氷を張る荒業を今回も取り入れたようだ。
地面から体を突き上げるようにして形成されたつらら。ノエルは浮いている。回避できない!
俺はノエルを甘く見ていた。ノエルは空中で体勢を変えて突き上げるつららをすべて回避してしまった。おい嘘だろ……ありえねえ!
ダイヤは地面の面積をノエルの方に広げつつノエルの着地点につららを発射。
地面の氷に滑って上手く身を躱せずつららは左肩に命中。ノエルは一瞬顔を歪める。
畳み掛けるようにダイヤはノエルの背後からつららを突き刺す。
そのときノエルはニヤリと笑い、
「甘いよ君は」
と。
次の瞬間ダイヤは目を覆い隠した。
「っ!?」
ノエルは負傷した左肩から流れ落ちる血を手の平に溜めそれを利用して目潰しをしたのだ。
ノエルは右手に握ったナイフを視界が奪われたダイヤに投げつける。ナイフはダイヤの首に突き刺さり血が盛大に吹き出した。ダイヤはそのまま後ろに倒れる。
「うわぁあああ!」
直後、ジョーカーは叫んだ。ノエルの第九感の効果が切れたようだ。
「こっちだ! 一旦引くぞッ!」
俺はジョーカーとナディアの腕を引いて走り出した。
「みんなやられたわ……逃げても無駄よ…………」
「なに怖気づいてんだよ! らしくないぞ! まだお前がいる。それに俺とナディアも」
「あなたたちでどうにかなる相手じゃないわ」
「そんなのやってみないとわからないだろ」
「無駄よ! 馬鹿じゃないの。相手は吸血鬼よ! わたしが囮になっている隙に早く逃げてっ!」
「馬鹿! いいから着いて来いって!」
「ばかはそっちよ! ばかばか! ……ひゃっ!」
俺は途中で立ち止まってノエルの足止めをしようとしたジョーカーをお姫様抱っこで無理やり連れて行く。
「こっちだ!」
ナディアが先導して路地裏に入る。
「ちょっと! いつまでこうしてる気! そろそろ下ろしなさいよっ!」
そう言って俺の肩をぽこぽこ殴ってくるジョーカー。全然痛くない。くそざこパンチやめてください。
「じゃあ捕まってろよ!」
ジョーカーは宙に浮き、俺の肩に捕まってヘリウム風船のように着いてきてくれる。
「後ろは頼んだぞ! 何でもいいから足止めしてくれ!」
「任せて。あんたたちのこと信じてるわよ」
「ああ」
ジョーカーは片手で俺の肩を掴んだまま半分振り返ってノエルを見据える。
ジョーカーはゴミ箱や落ちている鉄パイプやらをノエルの行く手を塞ぐようにばら撒く。
それによりノエルの動きを多少止めることができたがすぐに追跡を再開されてしまう。
「逃げても無駄だよ」
ノエルは不敵にほほえむ。
ナディアは第九感で路地裏の適切な経路を割り出し進んでいく。
しかし突然、ノエルがいなくなった。いや、先回りされていた。
「愚かだなあまったく……。どうせ死ぬんだからさっさと降参しなよ」
息を切らす俺とナディアをよそにノエルは余裕の笑みを浮かべている。
「もう楽にしてあげる!」
ノエルはナイフを逆手に持ちなおして低く構えた。
そして地面を蹴って肉薄してくる。
――ズシャン!
次の瞬間、ノエルの下半身は数個の肉塊に分断された。
To be continued!⇒
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