第44話 第六の事件! 生態系の覇者
◾ジョーカー
「1つ提案があるんだ。リンちゃんを僕にくれないかな? そうすれば君たち全員の命は見逃してあげるからさ」
ノエルは不気味な笑顔でそう言った。
「テメーが凛の許嫁だかなんだか知らねーが凛はぜってー渡さねー。クリス! 凛を連れてここから離れてくれ!」
「わかった」
クリスは凛を抱えて走り出した。
ノエルははぁとため息をつく。
「そっか……残念だよ。君たちがその気ならしょうがないね」
「吸血鬼事件の犯人はノエル、お前なのか?」
隆臣は尋ねた。
「せーか〜い! いくら吸血鬼の肉体でも魔力粒子が足りなければ傷の修復すらできないからね。飲酒とか喫煙とかしてる人のゲロマズの血を我慢して飲まなきゃいけなかったから本当に憂鬱だったよ。でもさっきリンちゃんの血を吸えたから僕は今、最っ高にテンションが昂っているんだ!」
ノエルはそう答えて修復したての右手を開いたり閉じたりして感覚を確かめながら、
「君はぼくのことを殺人鬼だと思っているね?」
隆臣にビシッと指をさした。
「じゃあ質問するよ。君たちは何も飲まず食わずで生きていけるの? 無理だろ? 動物というのは自分より下等の生物を糧にして生きている。人間も例外じゃない。人間は家畜、穀物、果実、魚介、虫などあらゆるものの頂点に立ちそれらを喰らって生きている。それは僕たち吸血鬼も同じなんだよ。生きるために人間の血を吸う。生物学的にごく自然なことではないか。覚えておけ愚かな人間よ。この世は残酷なのさ」
誰も何も言い返すことができなかった。
「だから僕が思い出させてあげるよ。この世が弱肉強食だってことをッ!」
ノエルは地面を蹴ってこちらに向かってきた。
目で追えない速さではない!
背後に設置していた6本のナイフのうち2本をノエルに放った。
ノエルは左腕で2本とも受け止めそのうちの1本を抜いてダイヤに投擲。
ダイヤは目の前につららを集合させてナイフを防いだ。
「チッ!」
ノエルは左腕を修復しながら舌打ちをする。
再び地面を蹴って肉薄してきた。どうやらノエルは中〜遠距離で使える武器は持っていないようね。わたしもハートもダイヤも中距離タイプだからノエルの間合いに入られなければ相手が吸血鬼だろうと勝てるわ!
ノエルはダイヤのつららをすべて紙一重で躱す。わたしが発射した4本のナイフのうち最初の1本だけを避け、真横を通過するそのナイフの柄を掴んで他のナイフや尚子がリボルバーで次々に放つ銃弾を弾き飛ばした。
動体視力、スピード、正確性……さすが吸血鬼ね。人間離れしているわ。
「まずは君からだ、ダイヤ!」
そしてダイヤの目の前に立つ。
ノエルの目の色が桃色から真紅に変わりその瞬間ダイヤの全身が凍りついたように動かなくなった。
ダイヤの頭部蹴り飛ばそうとしたノエルだったが、自身の右脚がまったく上がらないことに気づく。
ダイヤがノエルの両脚と地面を氷で結合したのだ。
その隙にわたしは地面に転がるナイフを放ち尚子はリボルバーの引き金を引いた。
ノエルは刃の部分を掴んでナイフを受け止めるが尚子の放ったステルシーバレットにより頭を射抜かれた。
ステルシーバレットはバレットスミスのアリスが作製した魔弾でバレル通過後に弾頭が周りの風景と同化する効果がある。
仰け反ったノエルの頭に別のナイフを突き刺す。ノエルは地面に倒れて動かなくなった。頭から流れる血は地面に薄く広がる。
「やったか?」
「待て近づくな尚子! 吸血鬼の能力は未知数! 頭にナイフをぶちこんだとはいえ油断は禁物だぞ!」
ナディアは叫ぶがもう遅かった。
「捕まえたッ!」
ノエルは尚子の左腕を掴んで引き寄せ、かぶりついて吸血を開始した。
尚子は右手に持ったリボルバーの引き金を引くが弾切れで銃弾は発射されない。
ダイヤはノエルの頭に向かってつららを放つ。
瞬間、ノエルは衝撃的な行動を取った。尚子の腕に噛み付いたまま腕を引っ張りダイヤのつららを尚子の背中を壁にして防いだのだ。
ハートはノエルをキッと睨みつける。
ノエルは吸血をやめて立ち上がり頭に突き刺さったナイフを抜き取ってふっと鼻で笑った。
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