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第41話 第六の事件! 仲直り

◾ノエル



「久しぶりの吸血はどうだった?」


 クローバーは眠たそうにむにゃむにゃ僕に尋ねてきた。



「さいっこぉ〜だったよ!」


「ふーん、よかったじゃん。それで例のアレは?」


「うん、もうズバリ!」



 僕は笑顔でそう言い砂糖を半分くらいまで入れたコーヒーを飲んだ。



「まったく理解できない。そんなに砂糖入れるんならコーヒーなんて飲まなきゃいいのに」



 大あくびをしながらクローバーが言ってきた。



「コーヒー牛乳なんて飲むお子ちゃまには言われたくないよ」


「どうせ私はお子ちゃまよ」



 クローバーはほっぺをぷくっと膨らませた。

 僕はロッキングチェアを前後に揺すりあたたかな月光を全身に浴びて砂糖コーヒーをちびちび飲む。甘くておいひぃ~!

 そしてはぁと大きくため息をつき、



「あのさぁ、隠れてないでそろそろ出て来てくれないかな?」



 と暗闇に話しかけた。



「僕たちを監視してたつもり? 昼間からずーっとだよね。たしか名前はアンナ。3人いるボスのうちの1人なんだっけ?」


「監視とは失礼だな。君たちがちゃんと仕事しているか見張っていただけさ」



 僕の後ろから少女――アンナはアルトなボイスでそう答えた。その横にはガイストと思しき小さな少女が立っている。



「同じでしょ、それ」



 とツッコミつつも、



「まあいいや。ところで僕たちに何の用?」



 僕は砂糖コーヒーを飲み干してアンナに尋ねた。



「大したことではない。やつらを殺すという任務の他にもう1つ頼みたいことがある」


「ん?」


「ノエル、君は目に第九感を宿しているね?」


「うん」


「第九感には共鳴発現というものがあるだろう? それを利用する」


「どういうこと?」



 僕は首を傾ける。



「シュヴァルツの大魔法の復活には実はもう1つ必要なモノがあったんだ。千里眼クレヤボヤンスだ。そして凛はシュヴァルツの直系――千里眼クレヤボヤンスが代々受け継がれてきた血筋。まだ発現していないようだがそれを君の第九感を利用して引き出して欲しいんだ。クレヤボヤンスは目の第九感だから君の目の第九感でなければ共鳴発現はされない」


「そういうことか。それなら僕はもうリンちゃんに第九感を発動させたけど? でもリンちゃんがクレヤボヤンスを発現したようには思えなかったなー」


「そんなすぐに発現するものではなかろう。だがそのファクターを与えてくれただけでいい」



 アンナはそう言い、



「では引き続き任務の方は任せたぞ」


 ガイストの女の子とともに僕の部屋を出ていった。



◾ジョーカー



「あのっ、ジョーカーっ! その……えっと…………」


「……」



 わたしと凛は部屋で2人きりの状況にあった。

 凛がなかなか切り出さないのでわたしは焦れったくなり、



「今日は久しぶりに一緒にお風呂に入りましょう」



 凛にそのような提案をした。



「うんっ!」



 凛はにっこり満面の笑みで元気よく頷いてくれた。

 わたしはほっと胸を撫で下ろした。何度も言うけどちっちゃくないんだから!

 わたしたちは時々ケンカをする。今回のように短期間で仲直りする場合もあれば1週間くらい口を聞かなかったこともあった。

 しかし仲直りの方法は毎回決まっていてそれは一緒にお風呂に入って同じベッドで寝ることよ。



◾ジョーカー


 豊園邸の旅館のように大きな浴槽に2人で浸かりながらわたしは凛の白銀の髪の毛を手に取った。つややかでやわらかく雪原のように真っ白だ。

 この髪の毛の色、わたしが忘れてる大切な誰かと同じなのに……やっぱりどうしても思い出せない。



「ジョーカー? 髪の毛に何か付いてた?」


「ううん。別に何も」


「それとも何か思い出したの?」



 わたしは首を横に振って、



「まったく」



 と。

 すべてのガイストは生前の記憶を継承している。

 しかしわたしは生前の記憶のほとんどを忘却している。自分の名前や生まれ、生前にしてきたことはほとんど記憶にない。

 しかし片手で数えるほどしか残っていない生前の記憶の中でもっとも強く印象に残っているのは、凛の銀白色の髪とまったく同じものを持った何者かがいてわたしはその人を心の底から狂おしいほど自分の全てを捧げるほど愛していたということ。



「そっかぁ」



 凛は残念そうに呟く。

 そんな凛にわたしは、



「でもね。今日ノエルに血を吸われてなつかしいって思ったの」


「なつかしい?」


「そう。よくわからないんだけどね。もしかしたら生前のわたしに何か関わりがあるのかもしれないわ。吸血鬼って存在が。フィクションの世界で記憶喪失の人とかその周りの人ってさ、みんな記憶を取り戻そうと努力するわよね。でもたとえばその人の失った記憶が悪魔でさえ吐気をもよおすほどの最悪なものだったとしたら、記憶を取り戻すことって本当に幸せなのかな?」


「…………」


「もしわたしが吸血鬼に血を吸いつくされて殺されたっていうなら、そんな記憶戻らなくていいと思うのよ」


「……そっか」



 わたしは立ち上がって湯船から出た。



「わたしはもう上がるわ」


「わたしも」



◾ジョーカー



 2人でシングルベッドに入った。凛のいい匂いがする。



「わたしね、凛と一緒にいるととっても落ち着くわ」


「わたしもだよ。だってわたしたちは一心同体だもん」


「ふふふ、そうね」



 凛は目の前で小さくほほえんだ。かわいいわ。



 To be continued!⇒

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