第254話 レオVS魔剣の蔵
■レオ
短剣を構える魔剣の蔵に対し、俺は右手にステッキと左手に傲慢魔法の魔導書を構える。
魅了の芳香でイオを無力化することができた上に、魔剣の蔵は短剣しか持っていない。
だがこいつは剣術だけでプトレマイオスまで昇り詰めた男。イオと魔剣を取り上げたところでプトレマイオス並の実力は残る。相打ちになればいい方だろう。
「動くな」
背表紙に指の血をつけて傲慢魔法を発動させ、普通の人間の数倍もの速度で魔剣の蔵に斬りかかる。
しかし、
「甘い。まだまだ使いこなせてねーなあ」
魔剣の蔵は傲慢魔法を打ち破って俺のステッキを短剣で受け止めた。火花が散り、鍔迫り合いになる。
しかしすぐに受け流され、俺の体勢が前に崩れかかったところに剣を振り下ろされる。
「触れるなッ!」
再び傲慢魔法を使用した。
傲慢魔法の効果で短剣は俺に触れることはない。だがすぐに対応されて首を掻っ切られるだろう。
俺は効果が続いているうちに吸血鬼の身体能力を活かして魔剣の蔵の攻撃を避け、ケーブルカーの下の方に降りて距離を取る。
「あらら、仕留めきれなかった」
「そう簡単にやられてたまるか」
「きゃーっ! レオさまぁ〜!」
意味がわからない。どうして傲慢魔法が打ち破られた。なぜ動けた。ナディアのマスケラ・クイントのような特殊な魔導具を身につけているのか? いや、傲慢魔法は禁忌級魔法。下級魔法に干渉されるはずがない。
「さすがはブラドの犬。番犬をつとめるだけある。じゃあちょっと攻めさせていただこう!」
魔剣の蔵はそう言って短剣を構えた。だがその構え方はさっきまでのものとはまったく違った。
脚使いは西洋剣術由来で上半身は東洋剣術由来の特殊な――東西2つの剣術を極めた魔剣の蔵にのみ許された東地西脚四連斬の構え! 腰を軽く落して足は直角に開き、短剣を下段に置いた連撃の構え方だ。
脚元から連撃が来る! 俺はステッキを下段に構え、腰を深く落とし、
「触れるな」
大魔法を発動しておく。
瞬間、
「ッ!」
右ふともも、右脇腹、右腕から同時に血が吹き出していた。
どうやら俺は斬られたようだ。血が同時に吹き出すほど速い剣さばきに認識が遅れてしまった。
それに加えて短剣じゃなければ右腕は肩口から切り落とされていたに違いない。右腕だけじゃない。体を4つに切り分けられていただろう。
接近にすら気づけなかったし、いつの間に真後ろに回られている。
「初撃が当たらねぇなあ、どうも」
頭をかく魔剣の蔵の言う通り、一発目は傲慢魔法で防ぐことができたが、二発目以降はなぜかすべてくらっちまった。
剣で魔剣の蔵に勝つつもりは毛頭ないが俺には禁忌級魔法――傲慢魔法がある。これを使えばあわよくばと思っていたが、こうも一方的とは。
俺は真後ろでぶつぶつ呟いている魔剣の蔵の側頭部にステッキを振るう。
しかし、
「No! 太刀筋がなってない」
そう言って魔剣の蔵は短剣でステッキを受け止めた。吸血鬼の速さに対応するなんて、今年で46歳なのに第六感はまだまだ鈍ってないようだな。おそらく数秒先の未来を見ている……いや、感じている。
ケーブルカー後方に移動して魔剣の蔵から再び距離を取り、傷を一瞬で回復して、
「領域隔絶!」
俺に有利な環境を形成したとしてもこの差は決して埋められない。だがいいことを思いついた。勝機を見出すいいを方法を!
To be continued!⇒
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