第243話 凱旋
■隆臣
しばらくしてゲリラ豪雨はやみ、ジョーカーが空を飛んでマリーンエデンに戻ってきた。さすがはジョーカー、見た感じ目立った外傷はなさそうだ。本当によかった。
手には青白い光が灯ったランタンが握られている。ジョーカーは無事に玄武の霊核を奪取することができたんだな。
ジョーカーの隣には白髪の男の子がいる。こいつは法院から来たレオとかいう吸血鬼だ。どういう風の吹き回しかは知らないが、ジョーカーの手助けをしてくれたのか? それならありがたい。
「おかえり」
凛はそう言って両手を広げた。それを見てジョーカーは凛の胸に飛び込み、
「あぅぅ」
静かに涙を流した。言葉が出るよりも前に涙が出たってことは、それほどつらくて大変だったってことなのか? もしそうなら、どうして1人で行かせてしまったんだ? 足を引っ張る可能性はあるが、つらいことは共有できたはずなのに……。ジョーカーはたしかに最強だけど、精神はまだまだ子どもだから、一緒にいてあげなきゃダメだっただろ! アホか俺は! もっとよく考えろよ! 無理やりにでも着いて行くべきだったんだ!
声を殺して泣くジョーカーの頭を凛は抱き寄せ、やさしく撫でている。でもきっとジョーカーはみんながいるから、心中を吐露することができないんだ。
すると突然、レオはみんなに向けて頭を下げ、
「本当にすまなかった! 凛とジョーカーの護衛役として何があっても2人を護衛すると誓った矢先に……ジョーカーにかなり無理をさせてしまった。もっと早く合流できていれば……」
と。
悪いのは俺もだ。凛とジョーカーを守る責任は俺にもあった。いや、責任なんかじゃない。俺は自分の意思で凛とジョーカーを守りたいんだ。たとえ2人より弱くても、男として凛とジョーカーを守るって誓ったんだ。なのに……俺は…………ッ!
ジョーカーは涙をぬぐい、
「レオ、もう終わった話なのよ。暗い顔しないで」
作った笑顔をみんなに見せつけて言った。
「これからはもう……勝手な行動はしない。だから、許して欲しい!」
続けてレオは両膝と額を地面に付け、許しを乞う。土下座だ。
「わかったわよレオ。許すからもうやめて」
ジョーカーに言われてレオはようやく頭を上げる。
「ありがとうジョーカー。君は本当にやさしいね」
「そうかしら? べつに普通だと思うけど」
いや、ジョーカーはやさしい。みんなのために自分が犠牲になれるほどやさしい。1人で行くと言い張ったのは、みんなを危険な目にあわせないためだったんだ。
To be continued!⇒
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