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第228話 傲慢魔法の強さ

■ジョーカー


 上空から見た限りでは甲板上には誰もいない。おそらく透明野郎が見張っているだけで、他のメンバーはどこかに潜んでいるのだろう。

 今回は透明野郎に斥力場内に入られていないし、準禁忌魔術を使う吸血鬼のレオもいる。レオは太陽にある程度耐性があるから、昼でも行動ができるタイプの吸血鬼なのよ。

 負ける要因はないけど、


「人数不利になる前に透明野郎をっちゃう?」


「そうだね。めんどくさくなる前に始末しちゃおう」


 レオは傲慢の魔導書を開き、まぶたを閉じる。何をしているのかしら? わからないけど。少しして目を開き、


「触れるな」


 と言いって真後ろに向き直り、


「S-012-Mは本当に良個体だ。圧倒的パワー、スピード、再生能力、透明化能力、気配希薄化能力、そして第六感。第六感でレディーに触れるのは危険だと察知して、僕の方に攻撃してきた。僕が今まで戦ってきた中での肉弾戦の実力は10本の指には入るだろう。ただし肉弾戦に限った話で、総合的に見ればそこら辺のザコと大差ないよ」


「ウォオオオオオオオ!」


 するとすぐ近くから獣の雄叫びのようなものが聞こえてきた。わたしは耳をおさえてしまう。透明野郎にこんなに接近されても存在に気づけなかったなんて……爺さん目白に第六感の特訓をつけてもらおうかしら。


「動くな」


 左手に魔導書を持ったまま右の拳を握って低く構え、前方に拳を放った。


 ――ズドン!


 衝撃音が響く。レオの殴打は透明野郎にクリーンヒット。ヤツの腹部の透明化が解けていく。


虹色素胞にじしきそほうをぶっ壊した。さあレディー、ダークエネルギーをぶっぱなして!」


「わかった」


 わたしは可視化した透明野郎の腹部めがけて全力でダークエネルギーを放出した。

 透明野郎の体がバラバラになって飛び散った。 いくつにも分裂した白灰色の頭、腕、胴体、脚、内蔵、骨が至るところに転がっている。胴体の肉塊からはキモ女の左肩から生えていたものと似た触手が何本も露出していて、甲高い声を上げて蠢いている。その触手はまずは他の胴体の肉塊を互いに手繰り寄せ合って結合し、次に他の肉塊に触手を伸ばして集めようとしている。


「本体はデカブツじゃなくて中の寄生生物ってことなのね」


 わたしは数歩後ずさりしながら言う。


「そうみたいだね。とりあえず……動くな」


 レオの一声で触手の動きがピタリと止まった。傲慢魔法の効果だろう。


「傲慢魔法って……」


「傲慢魔法は対象に対して確実に優位を取ることができる大魔法。たとえば対象が僕に触れることや、対象が動くことを封じることができるんだよ」


 わたしが尋ねるとレオは魔導書を掲げて答えてくれた。ふーん、強欲魔法にほんの少し似ているわね。


「じゃあレディー。その胴体部分を海に放り投げておくれ」


「ええ、わかったわ」


 わたしは万有引力と斥力を操作して寄生生物が詰まっている胴体部分を持ち上げて海にぶん投げた。

 おそらくこの寄生生物はいくつに分断しても再生してしまう。わたしがダークエネルギーで寄生生物を攻撃しようとも分裂するだけで倒しきることはできない。

 しかしそんな透明野郎の本体を倒す方法が思いつく限りで2つだけある。1つは炎で燃やし尽くすこと。そしてもう1つが浸透圧で寄生生物を内部から崩壊させること。しかも寄生生物は粘膜で覆われているから、この方法はかなり有効。


 ――ジャボン!


 わたしとレオは船底せんていにへばりついて海面で暴れる寄生生物を見下ろす。浸透圧で内部の水分が抜け、いずれへばりついていることもできなくなるわね。


「キュゥゥウウウアアアア」


 こちらに向かって寄生生物は歯のない口を大きく開けて叫んでいる。キモイっ!


「黙らせて」


 わたしがレオにお願いすると、


「黙れ」


 レオは傲慢魔法で寄生生物を黙らせてくれた。しばらく経つと船底に吸着していた触手が1本2本と外れ、寄生生物は流されて行った。


「さっきは散々ぶっ殺してくれたわね。ふふふ、ざまぁ見なさい」



 To be continued!⇒

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