第203話 ヒュービリオン
■隆臣
マリーンエデンの景観や雰囲気を楽しみながら、爺さん目白の作戦を遂行すべく俺たちは研究所地域へ向かう。
でもその前に腹ごしらえだ。俺たちは昼食を食べにサイゼリヤに立ち寄った。
サイゼリヤはアトレマリーンエデン店の内部にあるのだが、なんとアトレは中央駅ビルに隣接したあの斜めのビルだった。
しかしサイゼリヤはサイゼリヤだった。いつものサイゼリヤだった。と思ってた時期が俺にもありました。
店員が1人もいないのだ。1人もいないが、何体かの店員はいる。そう、店員は人間ではなくヒューマノイド――ヒュービリオンなのである。
肌や髪の毛の質感、動き、喋り方どれを取ってもそれがアンドロイドであることを疑ってしまう。人間に紛れ込んでいても見つけ出す方が難しい。まるでかつての名作Detroit Become Humanのアンドロイドのように。
それほどまでに精巧に作られたヒュービリオンだが、それが確実にヒュービリオンだと見分ける方法が1つだけある。首である。彼らの首には特殊な制御装置が付けられているので、それを見れば人間かヒュービリオンかは一目瞭然だ。
そして何故ヒュービリオンという名前なのか。それは彼らが10億もの感情サンプルから作られたからである。この感情プログラムはYggdrasillFactorのベータテスト時に採取されたんだとか。だから博士――片瀬宏光さんが初期開発に携わっていたのか。ってことはジョーカーの感情とか魔剣の蔵の感情もサンプリングされている可能性があるってことか。
そんなヒュービリオンには人間のように感情がある――いや、感情がプログラムされている。なのでヒュービリオンには性格があり、個性がある。しかし自己意思はない。あくまでもアンドロイドなのだから。
■隆臣
サイゼリヤで食事を済ませ、爺さん目白防衛隊は研究所地域へ向かう。
「AIと住む街。15年後の世界へようこそ」というキャッチコピーを掲げているだけあって、全てが近未来的だ。
たとえば信号機。よく見るアレではなく、薄い透明のプレートになっている。このタイプの値段は従来のLEDタイプのおよそ10分の1で、電気代も2分の1だそうだ。かなり安価なので、近いうちに23区内でも導入される予定らしい。
電柱や電線は全て地面に埋まっていて、地上には信号機や街灯の支柱くらいしか露出していない。その支柱も金属やコンクリート製ではなくカーボンナノチューブ製で、細いわりに強度は高い。
電柱だけでなくマリーンエデンのほぼすべての建築にカーボンナノチューブが使われている。たしかにねじれたビルとか斜めに建ったビルとか球体型のビルとかを建築するには強度の高い素材が必要だよな。
しばらく歩いていると少しずつ建物の密度が低くなり、研究地区に突入した。
To be continued!⇒
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