第192話 アリスと朱雀の思い
◾アリス
翌日、ようやく……とはいってもたった数日で玄武に切断された四肢は元通りになった。これも朱雀の不死鳥としての理のおかげだ。
前回の敗因は玄武の力を見誤っていたことにある。そう、すーちゃんは不完全体かつ第八感で私に同化した存在に対し、玄武は完全体かつ人を依代にせず顕現している。その差で理の強さの差が生まれ、前回は大敗したのだ。
その差は何度戦おうとも埋められない。ならば別の手段を使えばいいだけだ。
玄武の件についてはここまでにして、今私は懸念していることがある。それはきのうの亮二との出来事についてである。
篝と奏が帰った瞬間、私は肉体の支配権をすーちゃんに奪われた。
そして本音を全部吐露させられ、本当は嫌なのに亮二にあれこれされてしまった。
口を動かしたのは私の意思ではなくすーちゃんだが、それは私にとっては屈辱的なことで、こうやって亮二の前に立っているだけで死ぬほど恥ずかしい。
亮二が帰った後、私はすーちゃんを問い質したんだけど、そしたらすーちゃん、「私、亮二君のことが好き」と告白してきた。沈黙不可避な発言だった。
神獣が人間を好きになることは決して間違いではない。もし私も亮二のことが好きなら、一緒に考えて亮二にアピールするかもしれない。けど私が好きなのは亮二ではない。
だからダメなんだ。見た目が1人の2人が別々の人を好きになるのは。
「ってアリっち! 聞いてる?」
「あ、ごめん篝。もう1回いってくれる?」
ぼーっとしてて聞いてなかった。やばいやばい。
「だからー、最近国内での魔力石の密売がヤバイんだってさ。しかも密売には赤の剣が関わってるらしいんよう」
篝はもう一度説明してくれた。
「ありがと篝。密売……やっぱり魔力濃度が高くなって魔力石の生成量が増えたことが原因ね。それに赤の剣が関与してるとなると、早急に手を打たないとダメね」
「よーし、そうと決まればアリっち、署名よろしくぅ!」
篝はクルクル回転しながら近づいてきて、書類を手渡してきた。なんなんだこいつのテンション。よくわからん。
私は書類にサインをし、それを提出しに行った。
To be continued!⇒
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第2部第2章は200話までに終了し、第3章マリーン・エデン編がスタートします!




