第189話 コードネーム007
◾ミレイ
――ザーザーズズージジジジジ
ノイズが酷い。けど今までよりはずっといい。これなら通信できるかも。
「応答せよ! こちら007! 応答せよ! こちら007!」
――受信を……認! こ……レヴォルテイル本部005! ……んか?
「はい、わたしです。よかった、繋がった」
ようやく繋がった! 005の優しいアルトボイスが聞こえてくる。ずっと不安だったけど、少し安心できた。
――久……りだな007。こちらからも何度も通信を試みたが無理だった。……信も長くは持たないだろう。それで、任……はどうだ?
「コンプリートです。ターゲットに接触し、例の物も回収することができました」
――そうか、よくやった。では引き続き任務を遂行せよ
「了解」
今日は久しぶりに本部と通信ができた。これからも引き続き任務をがんばろうっ!
「まーた通信ごっこしてんのか?」
「な、尚子! 覗くなとあれだけ言っただろ! むむむ……!」
尚子がまたわたしの部屋を覗いてきた!
毎日覗かれる! お風呂も覗かれる! 嫌なのに! けど居候させてもらってるわけだからあまり文句は言えない。
「ゼロゼロセブンって、ジェームズ・ボンドかよ」
「ジェームズ・ボンド? なんだそれ」
「聞いたことないか? まあ私も爺さまから薦められて見ただけで、私たち世代には縁遠いかもな。お前どうせ暇だろ? 古い映画だけど見てみるか?」
「わたしは暇じゃない。けど……見てみるっ!」
どうやらわたしのコードネームである007(ダブルオーセブン)と何か関係があるみたいだしな。
◾尚子
台場のカジノの地下駐車場で私とミレイは出会った。
23時頃、帰宅すべく部下が待機する車両まで地下駐車場を歩いていると、顔を真っ赤にしてフラフラ歩く小学生くらいの少女を発見した。
黒いライダースーツを身につけた少女はコンクリの壁にもたれかかって、辛そうに息を荒くしている。
私は駆け寄って少女のおでこに手を当て、ひどい熱があることを確認するする。
こんな時間にカジノの駐車場に小学生くらいの女の子が1人でいるなんて、家出に違いない。
とりあえず警察に電話しようとすると、少女は私の服の裾を引っ張って大きく首を横に振った。どうしてかと聞くと、少女はひたすらに首を横に振るばかりだった。その目は恐怖に怯えていた。
おそらくこの子はただの家出少女じゃない。きっと大きな闇を抱えているんだ。じゃないとこんな目をするはずはない。
それから私の家に連れていき、部下に看病させた。
翌日もまだ熱があったが、前日ほどではなかった。
少女はミレイという名前で、苗字は教えてくれなかった。実はこの見た目で14歳の中学3年生らしい。
「親御さんに連絡しなくていいのか?」と聞くと、少女は「大丈夫だ」と答えた。
もうめんどくさくなってきたので、好きなだけ家に居させてやることにした。そして好きなときに帰ればいい。
To be continued!⇒
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