第186話 稲妻の傷跡
◾隆臣
一瞬意識が飛び、気がつくと俺は土の地面に仰向けになっていた。
半身を起こして辺りを見渡してみると、そこは目白邸の中庭であることがわかった。周りには防衛隊のみんなと、白髪の少年もいた。そう、ジョーカーが大魔法で時間を戻してくれたのだ。
防衛隊のみんなが次々目覚める中、ただ1人凛だけが未だに地面に伏している。
全員が凛に注目し、目覚めるのを待つ。しばらくして凛が目を覚まし、ゆっくりと起き上がった。
「な……ッ!」
なんだこの傷跡はッ!
俺は思わず目を見張った。
「やはり傷跡は残るか」
「どういうことだよ」
俺はレオに問う。
「シュヴァルツの大魔法は四次元時空に干渉するものだ。しかしタケミカヅチの雷は九次元空間……つまりより高次元で生成されたもの。ミタカリンの肉体は死ぬ前の状態に戻るが、魂は傷ついた状態のままなんだ。だからこの跡が残ったんだろう」
凛の白い肌に刻まれた赤い跡。リヒテンベルク図形と呼ばれる稲妻の跡。それは肩から手首、太ももから踵まで伸びている。恐らく服に隠れている部分にも同様の跡があるのだろう。
涙をポロポロ流した四谷は凛に抱きつき、
「ごめんね……凛ちゃん、ごめんね」
と、嗚咽混じりに言った。凛も四谷をぎゅっとして、
「わたしは大丈夫だよ」
「でもその傷、一生消えない……」
「大丈夫。傷なんて気にしないよ。だってわたしは強い子だから!」
と、凛はすぐに稲妻の傷跡を受け入れてしまった。
千里の神眼のときもそうじゃないか。凛はあのときも作り笑いで受け入れていた。今も作り笑いをしている。
凛は強い子じゃないことを俺は知っている。本当は稲妻の傷跡が嫌に違いない。俺にはわかる。
今すぐ泣かせてあげたい。我慢しないで泣いて欲しい。子どもが泣くのを我慢するなんておかしい。
けど凛は自分が泣くことで四谷が悲しむのを恐れているんだ。凛は良くも悪くも大人すぎる。
とはいえ凛が目覚めたのは一安心だ。
◾隆臣
爺さん目白は凛に深く謝罪をしていた。凛はまたしても無理やり笑顔を作っていた。
七海や四谷、ナディアを含めた魔女隊からも心配されていたが、元気よく受け答えし、みんなに心配をかけないようにしていた。
レオは凛に用があって法院から来たらしいが、今日のところはホテルに戻って後日また会いに来るらしい。
凛に一応病院行くか聞いてみたけど、凛はどこも痛くないから大丈夫だと言っていた。
今日は久しぶりに三鷹家に泊まろう。
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