第182話 魔剣の蔵打倒作戦!
◾隆臣
四次元空間世界に逃げた魔剣の蔵とイオを追いかけることはできない。
瞳をいつもの夜空色から青空色に変えて分割高速演算を行っているエースでさえ、次元が違うので魔剣の蔵とイオの居場所を特定することはできない。同様にナディアの全方感知も無効だ。
――ロザリオ・スミスちゃーん
「まずは君からだ」
魔剣の蔵の声が聞こえた瞬間、隣にいたナディアのお腹をレイピアが貫通した。
「っ!」
「ナディア!」
ナディアはお腹をおさえながら跪き、
「だ、大丈夫だ。これくらい……治癒魔法でなんとかなる。お前は自分の身を守れっ!」
苦しそうに言った。
どうしてナディアが! どうしてロザリオが反応しなかった! 魔剣による攻撃はすべて弾き返せるはずなのに!
――少年、たしかに俺は魔剣の蔵という名を冠している。けど魔剣だけじゃなくて普通の剣も集めてるんだよ
魔剣の蔵の声がどこからともなく聞こえてくる。
たしかに俺は、魔剣の蔵は魔剣を使ってくると決めつけていた。剣集めが趣味なんだから、普通の剣を持っていないはずがない。
この感覚……ロザリオ事件のノエル&クローバー戦のときと似ている。
全く視認できない相手……あのときはエースの第九感が有効だったが、今回は違う。あのときはクローバーを爆破で倒したが、今回はそもそも次元が違う。
俺はエースの第九感に接続し、最善手を探す。
――次は少
「年、君だ」
背後で魔剣の蔵の声がした。
――キンッ!
しかし爺さん目白が攻撃を防いでくれる。
「あらら」
――防がれちゃった
俺が振り向いたときにはすでに次元孔が閉じかかっていた。
魔剣の蔵は一瞬だけ次元孔で三次元世界に現れ、俺たちに攻撃しているんだ。まさにあのときのノエルとクローバーのような姑息な手段で。
しかし俺とエースは顔を見合せ、頷きあった。魔剣の蔵を倒す作戦を思いついたのだ。
だが成功するのか? そんなことが可能なのか?
俺がそう懸念していると、
「大丈夫だよ隆臣。待機組にも伝えたし、私の計算に狂いはないんだからっ!」
エースはそう言ってにっこりほほえんでくれた。かわいい。元気が出る。
この作戦はきっと成功する。大丈夫だ。
けど少しでも成功率を高めるためには、俺のよりナディアので実行すべきだな。
俺はエースが複製したナイフを握り、
「ナディア、借りるぞ」
ナイフで指を切って血を出し、ナディアのロザリオを手に持つ。
そして血をロザリオに滴らせた。
◾凛
わたしとジョーカーはちょうど爺さん目白さんの寝室の屋根上で待機している。ジョーカーは骨折れさんだから、屋根の上で浮遊している。七海ちゃんと四谷ちゃんは第八感を発動させて庭園で、オーラさん、ジャンヌさん、ルシアさんは居間の屋根上でそれぞれ待機している。
下からは鋼と鋼が打ち合わされる甲高い音が響いてくる。隆臣、大丈夫かな? きっと大丈夫だよね! だって隆臣だもん!
どうしてわたしたちは待機しているのか。それは先発組が魔剣の蔵さんと戦って打倒の糸口を発見し、それをわたしたち待機組が実行するためである。
どれだけ人員がいてもフォルコメンは倒せない。倒すには知恵と知識が必要だ。と、爺さん目白さんは言っていた。だからこのような形態をとっているのだ。
戦闘開始からしばらくして、エースから待機組へ作戦が伝えられた。
それを実行すべく、わたしは左目の眼帯を外し、千里の神眼を露出させる。
左の視界でカラスが飛び、数秒後に右の視界でカラスが飛ぶ。左目で捉えたことは数秒後に必ず右目で捉えられる。未来予知、それがわたしの第九感だ(ナディアさん曰く厳密には第九感じゃないらしいけど)。
来る! わたしとジョーカーの目の前に魔剣の蔵さんが!
「来るよジョーカー!」
「OK!」
ジョーカーは人差し指にはめた銀色の指輪の側面を親指でなぞり、小さな刃を出し、それに親指を突き刺した。
一瞬の顔を歪めたが、すぐにロザリオを準備する。
魔剣の蔵さんが現れた瞬間、ジョーカーはロザリオに血をなすりつけた。
To be continued!⇒
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