第172話 玄武とアガリビトの少年
言い忘れてましたが、アリスと朱雀が同化すると2人の人格が合わさったような人間になります。けど◾アリスにしているのは、アリスの肉体に朱雀が同化しているからです。変な風に感じてたかもしれませんが、そういうことです。
◾玄武
悪魔からの逃亡に成功し、MMA第二小隊や赤の剣の捜索もなんとか振り切った。
止血して血の跡を辿られないようにしたので、あたしがどこにいるのかはわからないだろう。
けどこのあたしが満身創痍だなんて気に食わない! 全てはあのゴミクズ朱雀が悪いんだ! アイツがすぐ壊れてくれなかったから!
分厚い雲の下、蒸し暑い空気を呼吸しつつ、あたしは山奥で体の修復を行っていた。
山は特別な場所だ。山だけでなく、三次元世界の大自然は異常な場所なのだ。次元の狭間と形容すべきか、高次元に近い三次元というべきか。
とにかく人間風情がいていい場所ではない。たった3日で高次元人間になってしまうだろう。
アガリビトとは、三次元の肉体を持ち合わせながら、本来低次元(三次元)までしか耐えられない霊魂が高次元に昇華してしまった人間のことである。
ほとんどのアガリビトは、高次元を知ってしまったことで魂が発狂し、肉体とともに異常行動を起こす四次元人間に分類される。
しかし高次元を知っても発狂しなかった魂は九次元人間と呼ばれる存在にさらに昇華する。
九次元人間は人間どもが崇拝するいわゆる現神やそれに近いやつらのことだ。例えばイエスとか釈迦とかムハンマドとか。救世主や預言者などが九次元人間にあたる。
筑波山まで逃げてきたあたしは、一週間前に遭難して四次元人間になってしまった少年に出会い、怪我の修復を手伝ってもらっている。筑波山は特別な山だからな、アガリビトにもなりやすい。こいつは不運だな。
けどこのアガリビトは非常に優しい。まるで人間の頃の記憶を覚えているかのように。
たぶんあたしは高次元の存在だからそう感じているだけで、人間から見れば彼は異常な行動をしているはずだ。きっとキモチワルイと思うだろう。
彼は裸で生殖器は消え失せ、不自然なほど色が白く、一切の体毛が抜け落ちている。そして身長は2メートルほどあり、目は常に大きく見開かれている。
そんな彼は、私のために魔力粒子や霊力粒子を圧縮し、使力粒子に近似した高密度の魔力粒子や霊力粒子を作ってくれる。とってもやさしいわ。
「こででいいど?」
「ええ、ありがとう。その調子でもっとたくさんお願い」
「わがっだ!」
アガリビトの少年は不気味な笑顔で笑い、作業を進めてくれた。
あたしも同じ作業を行う。偶然であったアガリビトの少年。彼はすぐにMMAにより駆除されるだろうが、本当にいいやつだ。下僕くらいにはしてやってもいい。
◾玄武
それから数時間がたった。アガリビトの少年の作業効率は悪いが、あたし1人でやるよりはかなり修復が進んでいる。
このままいけば丸1日あれば修復が完了するだろう。そう思っていた。あの方の声が聞こえるまでは。
「何をやっておる、我が下僕」
「っ!」
小さな女の子の高い声。しかしあたしにとってそれは恐怖でしかなかった。
瞬間、隣のアガリビトの胴体に風穴が開いた。
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