第171話 朱雀の力
◾玄武
「あ、悪魔め……っ!」
思わずそう叫んだ。
あたしは完全体の神獣。四神の中でも最強! なのに人間風情にこんな酷いことされるなんて……きっとヤツは悪魔か何かだわ!
そしてまた一瞬のうちにあたしの体の一部が吹っ飛んだ。舌である。
「黙れ。貴様ごときに構っている暇はない」
一生懸命実体化したのに……あたしは何もしてないのに……一瞬のうちに元に戻される。その恐怖であたしは涙をとめどなく溢れさせてしまっていた。
次に視界が真っ暗になり、その次には何も聞こえなくなった。
いやだ! 元に戻りたくない! 麒麟にいじめられる世界になんて戻ってたまるか!
その一心で私はボロボロの肉体を次元移動させ続けた。あの悪魔からできるだけ遠ざかるために。
しかし、次に両足がなくなった。このままじゃダメだ。肉体がなくなる。
私は次元移動しつつ灰色のモヤモヤ――理の雲を半径3メートルに発生させる。
「ちっ!」
ヤツの舌打ちが聞こえた。どうやら理の雲のことを理解しているらしい。安易に近づいてくることはない。
そしてヤツは第八感覚覚醒者なので、理の力はあたしに比べてかなり弱い。これで逃げられる!
あたしは理の雲を纏いつつ次元移動をつづけ、悪魔をまくことに成功した。
◾アリス
玄武討伐作戦の結果は撃退に終わった。さすがの響さんも理の雲は攻略できなかったようだ。
そしてここはMMAの装甲車両の中。四肢を切り落とされた血だらけのあーちゃんの肉体はストレッチャーに乗せられてベルトで固定されている。
あーちゃんの肉体は死なない。私が不死鳥フェニックスであるからだ。
朱雀、鳳凰、不死鳥、これらは同一の私という存在だ。
なので私は不死鳥の肉体再生の理を行使することができる。私は死んだあーちゃんの肉体に不死鳥の理を行使し、あーちゃんの肉体を再生させる。
魔力粒子が集合することにより、失われた四肢が徐々に形成されていく。
しかしその速度は吸血鬼の超再生よりもかなり遅い。私が完全体の状態であーちゃんと同化していれば、吸血鬼くらい速く再生することが可能だっただろう。
しばらくして東京大学医学部附属病院に到着した。ここはMMA東京本部と契約を結んでいる病院の1つで、負傷した隊員たちは基本的にここかもう1つの契約病院である自衛隊中央病院に搬送される。
あーちゃんの四肢が完全復活するのは恐らく3日後くらいになるだろう。
To be continued!⇒
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